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ジョー・キングの場合 09


第二十一節


 テーブルの下の足首から先…は野暮ったい白の靴下と、機能性第一の真っ白いノーブランドスニーカー…だったはずである。

 しかしそこにあったのはぬらぬらと真紅に光沢を放ち、きりりと引き締まって左右幅を圧迫し、つま先がとんがったハイヒールだったのである!

「これは…」

「見ての通りさ。ルージュだろ?」

 自陣の色に合わせたってことか…このハイヒールの中の感触…妙にするすると滑るこの感じ…ストッキング!?それだけじゃない。もしかして…。

「気が付いたかな?」

「ジョー、貴様…」

「もう気が付いただろ?私の能力はバニー・ガールだよ」

 なんてこった…こいつ…同類だったのか。

「意外そうな顔だな」

「いや…予想しなかった訳じゃない」

「着るのは初めてかね?」

「答える必要はねえな」

 初めてに決まってる。

 それにしても、下から順に部分変身…それもある程度は必ず受け入れろってんだから加減が難しいなんてもんじゃない。

「じゃ、次めくるぞ」

「どうぞどうぞ」

 だが…。

「ダイヤの…10」

 また、ルージュである。

「手を出したまえ」

「ぐああああっ!」

 足首の変形は続き、どこからともなく生えてきたストラップが足の甲を拘束していた。

 網タイツにくるぶしが浮き出て、足首の上まで網タイツ部分が到達している。

「…普通のハイヒールだと履きなれない者は簡単にすっぽ抜けるんでね。ちょっとやそっとでは抜けない様にストラップ付きにしたよ」

「…そいつぁどうも」

 このテーブルの様子を横から眺められたらコトだ。

 どっからどう見ても男にしか見えないごく普通のバックパッカーの男…おっさん…の足首から先だけが網タイツに真っ赤なハイヒールが突きあげているって図なんだから。

 どう贔屓目に評価してもハイヒールフェチのおっさんって解釈がせいぜいだろう。

「…」

 思わずまじまじと見てしまう。

 上から様子を伺う他ないのだが、全く持って見事な造形である。

 そのセクシーな造形はどこからどうみてもフェティシズムの塊だ。

「ご希望なら一旦中断してその辺をぐるりと一周して来てもらっても構わんよ。ハイヒールの履き心地を楽しむといい」

「お構いなく」



第二十二節


「…クラブだ」

 やっと、ノワールの出番だ。

「お返しだ。手えだしな。ジョー」

「お手柔らかに頼むよ」

 心なしか笑顔のジョー。

「食らっとけ」

 余り男同士で手なんぞ繋ぎたくないんだが、こちらもコテコテの基本形、直接接触せんことにはどうにもならん。

「…どうだ?」

「確かめるといい」

「!?」

 テーブルの下を覗きこむシン。

 しかし、そのこげ茶色の革靴には何の変化もみられない。

「おい!反則だろうが!」

 ニヤニヤが止まらないジョー。

「いいからかがみこんでもっとよく見るといい」

 ガタリ!と立ち上がろうとして猛烈な違和感によろめいた。

「…!?」

 足首から先が女になり、割り箸みたいなピンヒールのハイヒールを履かされてるためだ。

 細い足首が男の身体を支えるのがつらそうである。

 伸縮性のまるでないハイヒールに悪戦苦闘しながらかがみこむシン。

「…!?あああっ!?」

 よくよく見てみると、つま先のほんの一部が黒くなっているのが分かった。

「お前…」

「見た目さえ変化させれば攻撃を受けたことになる。確認した通りだ」

「…慣れてんのか?この形式に」

「偶然だ」

「偶然だと!?」

 完全にハメられた。こちとら我慢することは練習して来たし、実戦でも何度も行ってきた。しかし、丁度いい塩梅(あんばい)に受け入れる練習などしたことがある訳が無い。

 こちらはたった2回攻撃をくらっただけで足首から先を完全にバニーガールにされているのだ。

 にもかかわらずこっちの攻撃はこれだけしか通ってない。

 シンは背筋を冷たいものが走り抜けた。



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