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草薙裏探偵事務所  作者: 和都
「草薙失踪事件」
70/70

・第六十七話、思いがけぬ助っ人

草薙失踪事件39

草薙視点

くそっ、なんだってこう不運なんだ!?

俺は己の不運を呪った。


圧倒的に絶望な状況。


倒したハズの「グラーキの従者」がなんと目の前に二匹もいるではないか。


不幸中の幸いか、こちらに意識を向けておらず職員の遺体を貪っている。

【バキッゴリッボリボリボリ…】

肉、骨、臓器、ありとあらゆる物が「グラーキの従者」の体の中に入っていく。


それは見るに耐えない悲惨な光景であった。


「あの遺体の次は俺達だ…。」

俺はあまりの惨劇に思わず口に出してしまった。


女性職員が隣で嘔吐している。

無理もない…。


俺はというと頭がまだぼーっとしていて体に力が入らない。


きっと言葉の「言霊」を使わずイメージだけで能力を使ったせいで

自分自身、負荷がかかったのだ。


せめて、体がまともに動いてくれてそれなりに集中できれば…。

いや、まともに動いて集中できたところで流石にあの【バケモノ】二匹は荷が重すぎる。


ただでさえ一匹だけでも苦労したというのに。


まったく馬鹿な話だよな。

自分が脱出する機会を作るために試験用に保存されていた一匹の「グラーキの従者」を

解放して騒ぎに乗じてここを脱出する算段が…。


何故か、一匹だけ逃したつもりが数が増えてやがる。


きっとクローン技術で増やした副産物かもしれない。

と思ったがこんなにやばい生き物だとは正直思っていなかった。


無駄に職員の命を奪って俺は罪の意識に苛まされる。


だが、しかし。

こんなところで腐っていても仕方がない。


腐るのはこの窮地を脱出してからいくらでもすればいい。


そして、この窮地を脱出しなければ俺達に「生きる」という選択肢は無い。


「やるしかない…か。」

俺はぼそっと自分に活を入れ、腹を括る。


今、奴らは職員の遺体を貪るのに必死だ。


先手を打つなら今しかない。


出来るかどうかわからない。

でも、やらなければ確実に死ぬ。


俺はぼんやりする頭の中で意識を指先に集中する。


「…集まれ、水よ。」


不安定ながら水は俺の指に集まってくれた。

しかし、長年の経験から多分撃てて一発。

それ以上は精神力が持たない事を自覚していた。


【ガコンッ】

不意に天井の方から音がした。


そして「グラーキの従者」の注意が上を向く。


今がチャンスだ!


俺は己の残された集中力を全て費やし「水弾」を作る。

そして言葉の引き金を引く。


「放て、水の弾丸よ!」


撃った瞬間、膝から地面に落ちるのが自分でもわかった。

ああ、やっぱり持たなかった…。


当たったかどうかなんてわからない。

例え運よく一匹仕留めたとしても残りはまだもう一匹いる。

しかし、体は言う事を聞かない。


万事休す…か。


心の中でそう思ったその時。

天井から激しい銃声が聞こえる。

【ダダダダダッ】


その瞬間、「グェエエ!?」と「グラーキの従者」が悲鳴を上げて絶命した。


そして声が聞こえる。


「大丈夫ですか、草薙さん!?」


よく小言を言い合った中だが今は心地の良い頼もしい声。

そう、その声の主は腐れ縁で親友とも呼べない堅物の刑事、沖田英司であった。




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