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草薙裏探偵事務所  作者: 和都
「赤坂マフィア総乱戦」
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・第二話 終焉

「赤坂マフィア総乱戦2」

「ちょっと待った!」

護衛の内容を説明していた側近の口を止めさせる。

「護衛って事は、誰かに狙われてるって事だよな?」

確実に厄介な敵に狙われていないかぎり普通はボディーガードがいるのだから

わざわざ俺を指名しなくてもいいハズだ。

マットソンは下を向き溜め息を吐いてこう答えた。


「東京には凄腕の刑事がいるのだろう?奴に命を狙われているのだよ。」

刑事…?

「まさか知らないのかね?」

マットソンが驚いたような顔をした。

「…ああ、見当はつくがアンタのお目にかかるような奴は…」


ふむ、と考えたようにマットソンは口を開く。

「君は高見沢健吾という男を知っているかね?」

「!?高見沢だと!」


高見沢健吾という男。

この男は以前、師匠と共に組んで東京全体のヤマをいくつも片付けてきた男だ。

実際に会ったことは無いが師匠が俺よりも信用する男と聞いていた。

でも、確かこの高見沢は…

師匠が死んでから刑事を退職して行方不明になったハズだ。


そんな男が何故今頃になってマットソンの命を狙うんだ?

疑問になって聞いてみた。


「奴は…、私が君の師匠「ミツキ」を殺したと勘違いしているようなのだ。」

それは勘違いというものだ。

師匠は七年前、ヘマをした俺をかばって死んだのだ。

俺が殺したのも当然なのだが…。


暗い顔をして下を向く俺にマットソンが問いかける。

「君は…、私がミツキを殺したと思うかね?」


一呼吸置いて答えた。

「いや…、違う。殺したのは紛れも無く俺だ。」


場の空気が変わる。

「どういう事かね…?」

マットソンの殺気が俺に全て向けられる。


「俺が…、ヘマをして、俺をかばって死んだんだ…。」


大きな溜め息の音が聞こえた。


「…君をかばったんだな。立派な最後じゃないか」

やれやれ、という顔をして少し大人気なかったとマットソンは謝った。


「で、話を戻しますがいいですか?」

側近が申し訳なさそうに言う。


「どうぞ」

俺は軽く答えた。


「高見沢は恐らく、移動最中に襲撃してくると予想出来る。」


「どこ見ても人が多いから自分がやったってばれるのを避けたい。って考えたんだろ?」

腕を組んで余裕そうに答えてみる。


「そうだ」

してやったと顔に出てしまった。


「我々はいつでもボスを囲んでいる。死角がないように。」


「そして人が多い時間帯を狙ってわざわざ移動する。」


「ふむ、だから移動最中の必要最低限の警備、例えば…。車での移動とかって事か?」


「うむ、そうだ。察しがいいな。」

言われて悪い気分ではないが考えて当然だ。

じゃないと裏家業なんてやってられん。


「では、さっそくだが移動を開始する。」


こうして俺の長い一日が始まった。




「君にはボスと違う車に乗ってもらう。」


マットソンが乗った車に乗り込もうとした瞬間に言われた。


「は…?それじゃどうやって護衛するんだよ?」

少し喧嘩口調になってしまったが車が違うと護衛どころではない。


「そこは君の腕の見せ所ではないのか?」

見下すように言われた。仕方ない…。

と折れてしまったのが後に幸いするのである。


高速道路を使い赤坂を抜ける。行き場所は伝えられていない。

30分走った頃だろうか。三郷という標識が見えた。

マットソンの車を含め、計3台の車で移動している訳だが

ここで妙な事に気づいた。


そういえば、乗り込むとき一通り確認したが

運転手が一人日系の男が混ざっていたな…。

他の運転手は皆、白人や黒人なのに…。


一応確かめた方がいいか。と思い聞いてみる。

「なぁ、なんで…」

と聞こうと思った瞬間。


いきなり護衛している一台の車がマットソンの

乗ってる車の前へ出て急ブレーキをかけた!


まさか!?


悪い予感は的中した。


【ガシャーン!】という音をたてマットソンの乗った車はスリップする。


護衛以外の周りの車にも当たりながら200M後ろで蛇行運転をしている。


このままじゃまずい!


「おい、運転手!」

俺は思わず大声を出し


「Uターンしろ!Uターンだ!」

素早く指示を出すが


「What!?」

言葉が通じない…。


この危機的状況に気づいてるハズだが

運転手は何事もなかったかのように運転している。


「ちぃ」軽く舌打ちして「Stop a car!」と叫んだ。


運転席に身を乗り出して叫んだ俺にゴリッと眉間に銃が突きつけられた。


「Fall silent; a boy」


コイツら、グルか…!?


仕方ない、やるしかないか。

俺は運転手を睨みつけたまま右手に意識を集中する。

速い速度で移動している最中はなかなか「水」が集まらない。

しかし、冷房がきいているお陰で水を集める事は出来た。

左手で銃を払い、言葉の引き金を引く。


「放て!」


運転手の下腹部に右手を突き出して運転手の意識が飛ぶ。


そうこれが俺の能力。

空気中に漂っている水を右手に集中させ言葉の引き金で集めた水を放つ。

距離が開くほど威力は落ちるがこの至近距離ならダメージは拳銃にも負けない。


意識が飛んだ運転手の右足をブレーキに乗せ力をかけ踏ませる。


「キキィー」と反動が凄かったがうまく止まれた。


「相当前にきちまったか…」


止まった車から降りて後ろを窺う。

だが、こうしちゃいられない。

俺は走ってマットソンの車を探す。


走ってる最中、ぶつかった傷だらけの

黒いベンツが物凄いスピードで俺を追い抜いた。


おいおい、マジかよ…?


急いで俺も乗っていた車に戻る。


運転手を後部座席に移し後を追う。

しかし、外車というものは運転しずらい…。

宅配用の車がマニュアル車でよかったとふと思った。


3キロくらい走ったところで路肩に傷だらけのベンツが二台駐車してあった。


俺も路肩に駐車し車内を窺う。

前に停車してあるベンツの中には撃たれて死んでいるボディーガードが2名。

その他はものけの空だ。


辺りを見回すと非常出口が見つかる

非常出口のドアノブには血の跡が残っていて

恐らくマットソンはここから逃げたのだろう。


(早く追いつかねば!)


俺は焦った。

焦りは俺にとって最大の敵であり弱点でもある。

焦ることにより集中力が乱れ、水の弾丸を作ることが出来ない。


「本当にピンチの局面になったとき勝負に勝つのは己を殺すことの出来る奴だ。」


師匠の口癖だったっけ。


非常出口を抜け「そこまでだ!」という声が聞こえた。

それと同時に銃声がひとつ。


「後はお前だけだマッドソン、あの世でミツキに謝り地獄へ堕ちろ。」


おいおい、いきなりクライマックスかよ。


俺は右手に意識を集中させようとする。

しかし、意識を集中させようにもやはり「焦り」が邪魔をした。

く、このままじゃまずい!


俺は咄嗟に「待て!」と叫んでしまった。


最悪の結果になりそうだった。

しかし止めるにはこうするしかなかった。


「なんだ貴様は!?」


驚いた元刑事が俺に尋ねる。


「俺か?俺は…、ただの酒屋だ。」

「そして…、アンタの元相棒ミツキの弟子だ!」


横に跳び、意識を再び集中させる。

「焦り」にも弱点があり自分自身が最大のピンチに

なればなるほど再び集中力が回復する。


そういう性格で助かった。


「くっ!」

【パーン…!】


高見沢が銃を俺に向け発砲する。


撃ったと同時に俺も言葉を放つ


高見沢が撃った弾丸を水が囲い弾がそれる。


「貴様能力者か!?」


相手が焦ればこっちのもの。

高見沢との距離は7メートル弱

この距離なら確実に気絶させるだけの威力を誇れる。


このジメジメした日本が俺は好きだ。

能力が存分に活かせる。


「放て!水の弾丸よ!」


次の瞬間高見沢の膝が地面に落ちた。


「さて、怪我はないか?マットソン」

俺は動揺もしていないマフィアのボスに尋ねる。


「ああ、来てくれると信じておったよ」

信じられるのは嫌いではないが不思議な気分だった。

まるで何か道具と話をするような感覚に陥った。


「どうするんだ?アンタの部下は皆殺しにされちまったみたいだが携帯かなんかで呼ぶか?」

俺は携帯電話など持っていない。使い方がわからないのだ。

決して機械音痴な訳ではない。

レジ打ちも出来るし車の運転も出来る。パソコンだって家にないだけだ。


「私は「ケイタイ」などと言うものは持ち合わせてなくてね。部下が探しに来るのを待つしかないようだな」


おいおい、マジかよ…。

こんな田舎にオッサンと二人きりなんて勘弁だぞ…。

まぁ世間一般で言えば俺もオッサンの部類に入るのだが。


取りあえずここでひとつ策を申し出る。

「あー…、とりあえずベンツに戻らないか?ここだと流石にだな…。」

それは名案だ、とマットソンが同意したその時。


【パーン!】銃声が鳴った。


迂闊だった。

気絶させたと思っていた。

しかし、それは思っていただけであって


高見沢がマッドソンを打ち抜いた。

俺は高見沢に落ちている石を全力で投げた。


こんな急な展開は予想していない。

咄嗟に集中出来るほど人間出来ていないのだ。


投げた石は高見沢の後頭部に当たり再び高見沢は意識を失った。


「マッドソーン!」

俺はマッドソンに駆け寄る。


…心臓を打ち抜かれ即死だった。


くそ!こういうシーンは少しでも生きているハズじゃないのかよ。

映画では必ず何か一言言うだろうが!

師匠のことを何も聞けないまま俺の仕事が終わった。


取りあえず、このまま放っておくわけにもいかないので

公衆電話で警察に電話をかけボロボロのベンツに戻る。


…ベンツのドアが開かねぇ。


あの緊急事態で何故ご丁寧にドアに鍵がかかってるのか俺には理解出来ない。

しかも二台ともだ。

そして俺が乗ってきたベンツにも鍵がかかっていた。


…キーはさしっぱなしだ。


つまりオートロックなのだ、この車は。


すぐ戻って死体を漁ってもよかったがいつ人に見られるかわかったものじゃない。

股引のまま連れてこられた俺は財布に小銭しか入っておらず帰る手段もない。


「どーすっかな…」


取りあえずわからないので煙草を吹かす。

「まぁ…、歩くか…」

よれたスーツで次のサービスエリアまで歩くことにした。

「錦糸町まで流石に遠いよな…。」



これが俺の今日でありヘマをした最悪な依頼であった。


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