・第三十七話、奥へ
・草薙失踪事件11
沖田視点
「しっ、静かに…。」
僕は白子さんにそう言うと何やらトンネルの方から足音が聞こえるのがわかる。
米兵か食人鬼か…。
ここで庇いながら戦闘するのは得策では無いと
判断し白子さんの手を引っ張り体を起こす。
「歩けますか?」
僕の問いに白子さんは「大丈夫です。」と答えた。
最悪、銃を捨てて白子さんを担いで逃げるしかないという覚悟を腹に括った。
「奥にいきますよ。」
僕は白子さんにそう告げる。
このままではいずれこちらに来る。
米兵でも食人鬼でもどちらでも厄介だった。
「あと、あまり足元とか見ないでくださいね、僕の背中だけ見ててください。」
流石に現役女子高生に米兵の無残な死体を見せる訳にはいかない。
「…わかりました。」
白子さんはそう言うと僕の背中に身を寄せピッタリついてくる。
こ、これは緊急事態であって決してセクハラなどでは…。
自分で自分に言い訳をする僕だが本当にこの状況はそれどころではないのだ。
米兵の無惨な死体を抜け、ここからは僕もまだ見ていない未知の領域。
その時、確かに後方から扉の開く音が聞こえた。
先を急がねば…、僕が焦って前の部屋の扉を開けた瞬間。
ひと目でわかる。
そこは食人鬼の巣であった。




