・第三十四話、嘘
・草薙失踪事件8
白子視点
「中川さん、白子さん。」
眼鏡の沖田さんからそう言われひょこっと私も顔を乗り出す。
薄暗くてよく見えないけど危険な事があったのは嫌でもわかる。
銃声、掛け声、私の日常では起こらない事が今起きてるんだっと実感する。
眼鏡の沖田さんと中川さんが何か喋ってるのはわかるけど何か近寄りがたい。
大人の話に口を出すほど私も子供じゃないから黙っておくけど…!
そう思った時、足元に何かが当たった。
うん?
…人?
中川さんが眼鏡の沖田さんと話終わってこっちに近づいてきて
「どうしたの白子ちゃん?」と聞いてくる。
咄嗟に気づいたのか、中川さんが私に「見ちゃ駄目!!!」と言ってくる。
しかし、認識してしまった。
それはさっきまで話してた巡査さんだった。
さっきまで話してたんだよ…?
出血が凄くて…、とても生きてるなんて思えない。
私はパニックになりそうになって縮こまる。
小さい頃からそうだ。
怖い事やわからない事があったらすぐ膝を抱えて縮こまる癖が私にはあった。
そして、それを優しく喜助さんが教えてくれて…。
いつもわからない事は喜助さんに聞く癖がついちゃって…。
だから今度は私が喜助さんの力になりたい。
喜助さんが困ってるなら私が何とかしてあげたい。
「大丈夫、白子ちゃん…?」
中川さんが心配そうに私を見る。
「うん、落ち着きました。大丈夫です…。」
私は中川さんにそう言うと状況を整理する。
「沖田さんはどこに行ったんですか?」
中川さんに聞いてみる。
「沖田さんは…、奥に用があると言って行っちゃったよ、私達はさっきのとこから地上に戻ろ?」
中川さんがそう諭してくる。
でも、私は…。
………。
「わかりました、じゃ先に上に戻ってますね!どっちが先に家に帰るか勝負です!」
そう言うと私は走り出す。
「ちょっと待って白子ちゃん!」
中川さんの制止を振り切り私は路線に入ったところのドアの物陰でやり過ごす。
中川さんの走る足音が次第に離れていく。
行ったかな…?
自分の心に嘘をつきたくない。
よし、と私は自分に喝を入れて眼鏡の沖田さんのあとを追うことを決心した。




