・第三十一話、巡査
・草薙失踪事件5
沖田視点
「考えたんですけど。」
扉を潜った時に僕が二人に言う。
「はい?」
中川さんと白子さんが反応する。
「やっぱり二人は外で待っててくれませんか?」
この二人を連れてあからさまに怪しい黒スーツの男を追うとなると
リスクが高すぎる。
「ここまで来てそれを言いますか?」
反撃に出てくる中川さん。まぁ引き下がらないだろうとは思ってはいたが。
「しかし…。」
僕が言葉を続けようとした時、不意にライトが僕達に当てられる。
「!?」
一瞬身構え、ライトの主に目を合わせようとするが眩しくて見えない。
「コラー!お前らここで何やってる!?」
身構えていた僕であったが怒鳴り声と同時に姿がぼんやりと見えてくる。
制服警官…?
何故、地下鉄の路線に制服の警官がいるんだ?
沖田は不意に疑問を感じた。
「私はこういう者です。」
僕は警察手帳を見せつける。
「む、公安の特殊班の方ですか…?」
僕の警察手帳を見た制服警官が尋ねるように聞く。
「ええ、とある雑居ビルからここに繋がっていて調査中に紛れ込んでしまいました。」
僕は制服警官に説明し言葉を続ける。
「ですが、何故貴方もここにいるんですか?」
今、僕達がいる場所は路線。
本来ならば制服警官ではなく鉄道警察隊、僕と同じく私服警官のはずだ。
「し、失礼しました!本官はひったくり犯がここに入ったとの情報を元に独自で動いてまして…。」
バツが悪そうに制服警官が言い、警察手帳を見せてくる。
「ふむ、錦糸町駅前交番の方ですか。」
僕が内容を確認する。名前は山本巡査か…。
「応援は呼んだんですか?」
僕が山本巡査に問いかける。
「いえ、あくまで本官の独断でありますので応援は…。」
痛いところをつかれたような顔をして山本巡査が答える。
その時、何かが奥から聞こえた。




