・第二十九話、物色
・草薙失踪事件3
白子視点
私は眼鏡の沖田さんと中川さんを二階にある喜助さんの事務所に案内する。
「ここです!」
二階のドアを開け玄関から見える奥の書斎には
喜助さんの探偵仕事の書類の山が高く積まれていた。
書類の山まで足を伸ばそうとしている私達だけど
その途中、眼鏡の沖田さんが立ち止まる。
「ん?ここはなんですか…?」
喜助さんの書斎に向かう途中、トイレの脇に小部屋があるのだけれど
その小部屋のドアが開けっ放しになっていた。
「あ、そこは沙希さんのお部屋ですね。」
私が答える。
部屋はカーテンを閉めたままなのか薄暗い。
そっか、沙希さんはさっき「勝手にしろ、私は寝る。」って言って
寝ちゃったんだっけ。
「む、あれは…?」
眼鏡の沖田さんが薄暗い沙希さんの部屋の中身を覗き見る。
あまり、女の人の部屋を覗くような事は関心しないなぁ。
「!?」
眼鏡の沖田さんが何かを思い出したように
振り返り、喜助さんの書斎にダッシュしていった。
なんだろう?と思って目に付いたのは机の上にある水晶玉だった。
「は、早く調査しましょう!!!」
何を必死になってるんだろ…?
喜助さんの書斎で書類の山のてっぺんに「○□×△雑居ビル」というファイルを
中川さんが見つけた。
「あ、このビルです!」
中川さんが言う。
「やっぱり、うちのヤマですね…。そこは」
眼鏡の沖田さんも続けて言う。
中川さんを囲んだ状態で三人でファイルの中身を見ていく。
失踪者の名前、性別、生年月日、出身、就職先、その他もろもろ…が
書かれたファイルだった。
「流石、草薙さん。ここまで調べあげてるなんて…。」
眼鏡の沖田さんが言う。なんだか私の鼻も高い。
「確かに一人目の行方不明者の名前は私が提供してそこからは草薙さんの独学だったと思います。」
中川さんが眼鏡の沖田さんに伝えるように話す。
「ふむ、続きを見る限り…。」
どのように失踪したのか?原因は何なのか?そのような記事は書かれておらず
「調査中」という黄色いシートが間に挟まっていた。
ただ、その日付が喜助さんがいなくなったくらいの日にち
7/6と書いてあった。
「これを見ると草薙さん、その雑居ビルに直接乗り込んだんじゃないですか?」
眼鏡の沖田さんが私と中川さんに言う。
「ええ、そうっぽいですよね…。」
続けて中川さんも困惑したように言う。
「あの人の事ですから雑居ビルに乗り込んでそのまま監禁されてるとかありそうですよね。」
眼鏡の沖田さんがさらっと不穏な話をし始める。
「えっ、で、でも…。私は調査してくださいって依頼したけど中まで見てくださいなんて言ってませんよ!」
私に罪はないという中川さんのアピールを感じる。
「いや、あの人は好奇心旺盛ですから頼まれてもない事を勝手にやりますよ。」
眼鏡の沖田さんが的確に喜助さんの性格を指摘する。うん、その通りだと思う。
「でも、喜助さん。その雑居ビルに行ったって事はやっぱりそこにいるんですかね?」
私が二人に聞いてみる。
「いや、そこで何か見ちゃいけないものを見て別のところに監禁って事もありますけど。」
「何か事情を知られて家に帰れず逃亡中…。とかでしたら真っ先に特殊班に来ますでしょうに。」
冷静に眼鏡の沖田さんが答える。
「うーん、やっぱり私自身ちょっとそこのビルに行ってみます…。」
責任を感じてたのか中川さんが言い出す。
「いや、これは私達の仕事ですから中川さんはやめてください。」
鋭く眼鏡の沖田さんが中川さんに言う。
「じゃ、私は喜助さんが心配なので個人的にそのビルに行ってみます!」
やっぱりワクワクしてきたから言ってみる。
「駄目です。」
キリッと眼鏡の沖田さんが即答する。そんなんじゃモテないよー…。
「じゃ、沖田さんと一緒ならいいですよね?ダメでも私は勝手に行きますし。」
私が沖田さんに提案してみる。
正直、夏休みのバイトは喜助さんのとこだけでするつもりだったから今まで
働いた分の給料だけはしっかり貰いたいし何より最近退屈してたし。
「いや、駄目です。」
またもキリッと答える眼鏡の沖田さん。頑固だなぁ…。
ファイルにかかれた雑居ビルの住所は覚えたしこれは強行突破しかないと思った。
「じゃ、勝手に行くからいいです!」
そう言って私は事務所を飛び出し、店の前に止めていた配達用の原付に跨る。
「ちょ、お嬢さん!待ってください!」
眼鏡の沖田さんが私を止めるけど「べーっ」と舌を出し原付を発進させる。
喜助さんの探偵職って今まで想像つかなかったし
何よりどういうのか興味があった私はこうして例の雑居ビルに向かうのであった。




