・第二十二話、能力者
・錦糸町時空事変編4
「師匠、あれですか?」
小型のトラックの付近で話をする男が二人。
「うん、そうみたいだね…。」
師匠ミツキは頷く。
観察していると小型トラックに男二人が乗り込み、移動してしまう。
おいおい、このまま逃げられるんじゃないのか?
「師匠!」
咄嗟に俺はミツキに叫んだが
「大丈夫、まだ例の男が出てきていない。」
冷静にミツキは俺に告げる。
「例の男…?」
俺はミツキに問いかけるが
「行くよ、喜助君!」
そう言うとミツキは走って小型トラックを追う。
予めミツキは移動する場所を知っていたのか
裏路地にトラックが止まっていたのが見えた。
壁際に体を隠し、男二人の動向を探る。
そして、路地の古い建物から更に男が3人出てくる。
その中にはブラックリストで見た事がある男が一人いた。
「あの中央にいる男がやばい奴なんですか…?」
小声で俺がミツキに問う。
「いい勘してるね、その通り。」
「今回の依頼はあの男の始末でもあるんだよ。」
ミツキはそう言うと懐から愛用の拳銃
「M1911コルトガバメント」を取り出す。
「…動くんですね。」
俺がそう言った瞬間。
ミツキは飛び出し先制で早打ちをし
発射音のない拳銃で手前の二人を仕留める。
この拳銃を使うのがミツキの能力だった。
そう、ミツキの能力は「風」の力。
火薬を使わず拳銃を発泡する事なく、自身の風の能力で弾丸を押し出す。
その為、発射音はスライドの可動だけで音は少ない。
「サツか!?」
残った3人のうち一人が動揺して拳銃を取り出す。
それに対しミツキはその男も打ち抜く。
残りは二人…、これなら!
俺は油断していた。ここでミツキは左目を失う事を忘れていた。
そして中央にいた危ない男に対し、俺は水の弾丸で撃ち抜こうとした。
「放て、水の…」
そう言いかけた時、中央の男の側近が俺に銃を構え
「!?、喜助君!危ない!!!」
ミツキが俺を横っ飛びで跳ね飛ばし銃弾がミツキをかする。
いや、かすったのか…?
ミツキは動かない。後頭部の付近から血が流れ出ている。
最悪のケースを想定した。
「うわあああああああああ」
意識を集中出来ない俺に対し、銃弾を放った男が再び銃口を向ける。
咄嗟に俺はミツキの流れ出る血を使い銃口を向ける男に心の引き金を引く。
「放て!血の弾丸よ!!!」
血の弾丸は男の胸を貫き、膝が地に落ちた。
「ふん、同じ能力者か…。」
中央の男がそう口を開くと倒れた側近の男を掴み
盾にしながらこちらに近づいてくる。
もっと、もっと俺に力があれば…!
感情任せに俺は能力を使う「放て!!!水の弾丸よ!!!!!」
しかし、男は屍の盾によってダメージを与えられない。
どうすればいい?考えろ草薙喜助!
奴を倒すにはもっと貫通力のある弾丸を形成するか、
いや、大砲並の大きさの弾丸を形成した方が…。
そう考えてる俺に対し男が一言告げる。
「チェックメイトだ。」
そう男が言うと地面から滴った血と
さっきまで放った俺の水に対し拳を地面に振るう。
そして次の瞬間、電撃が走り俺の意識が一瞬飛び去った。




