・第十五話、封止
・資産家変死事件7
由奈、中川、沖田&長谷部は庭を通り工場へと到着する。
中央に人が一人入れそうな黒い球体があった。
「う…」
ここで長谷部が意識を取り戻す。
「長谷部さん気がつきましたか!?」
沖田が長谷部を背中から下ろすと同時に【バケモノ】が工場の入口を塞ぐ。
「シュルルルル…。」
「キャー!なんですかアレは!?」
同時に叫ぶ、中川と由奈。
「ここは僕が足止めします!長谷部さんと一緒に下がっててください!」
覚悟を決めた沖田、ここが正念場だと。
【バケモノ】が沖田目掛け突っ込んでくる。
沖田は間一髪【バケモノ】の鉤爪をかわす。
かわした瞬間、【バケモノ】の舌が伸びる。
(くっ、まずい!)
沖田は瞬時に体をひねり【バケモノ】回し蹴りを食らわす。
一瞬怯んだように見えた【バケモノ】だが
チロチロと舌を出し沖田へ追撃する。
体勢を立て直してない沖田は攻撃が当たると直感し目を背く。
その瞬間。
「放て、水の弾丸よ!!!」
【バケモノ】に向かって水の弾丸が当たり、草薙が到着した。
それでも怯まない【バケモノ】は草薙を見つめチロチロと舌を出し威嚇する。
「今度はこっちの番だ、覚悟しやがれ【バケモノ】!」
草薙はそう言い放ち言葉を綴る。
「封じ込めよ!水の玉よ!」
庭先にあった水巻ホースを持ってきた草薙は【バケモノ】へと向け
【バケモノ】は水の玉の中へと封じられる。
「シュルルルル…」
身動きの出来ない【バケモノ】
だが、徐々に水の玉の形が歪んでいく。
「くそ、これじゃただの時間稼ぎだ!」
草薙が叫ぶ。
「草薙さん、その水晶玉を僕に渡してください!!!」
沖田はそう言うと草薙が左手で持っていた水晶玉を受け取り
黒い球体の扉を開け、その中に入れる。
「ぐうう、むううううう」
踏ん張る草薙、流石に慣れない技と、この【バケモノ】の力があってか苦戦する。
「も、もう駄目だ!沖田!あとは頼む!!!」
草薙はそう叫ぶと水の玉は弾け、
【バケモノ】が水晶玉の近くにいる沖田へと一直線に突進してくる。
「頼む!じゃないですよ!?」
沖田もそう叫び、突っ込んでくる【バケモノ】を横っ飛びでかわし
うまく黒い球体の中に【バケモノ】を入れる。
「今だ!!!」
草薙が叫び、沖田と共に黒い球体の扉を閉め、
二人で必死に開かすまいと踏ん張る。
「ここは俺に任せろ!」
先ほど気を失っていた長谷部が溶接機材一式を奥の部屋から持ってきて
動力を繋ぎ、黒い球体を溶接する。
【ガンガンガンガンガンガン】
【バケモノ】が必死に抵抗する。
「長谷部さん!早くしてください!」
「長谷部、早くしろ!」
二人は必死に長谷部に叫ぶ。
「待ってろ、まだ意識が朦朧とするんだ。」
長谷部は意識が飛ぶのを我慢して溶接へと集中する。
「これで…、大丈夫なハズだ…。」
溶接しきって気が抜けたのか再び長谷部は気を失う。
「これで封じ込めたか…?」
草薙は訝しげに沖田に聞く。
「多分大丈夫だと思いますけど…。」
「一応僕の方で特殊班に連絡を入れておきます。」
そう言って沖田は携帯電話で特殊班へと連絡を取る。
「しかし、長谷部さんが溶接出来るとは思わなかったな。」
気絶した長谷部を介抱している中川に草薙が言う。
「ええ、この人機械マニアですから…。たまには役に立つんですね。」
さらっと上司に毒を吐いた中川。
それに苦笑する草薙であった。




