・第十四話、鍵
・資産家変死事件6.5
「駄目だ!とにかく逃げてください!」
2Fの廊下で長谷部を背負い草薙に叫ぶ沖田。
それを無視し草薙は部屋の中へと入ってしまう。
(とにかくここから離れなければ…!)
沖田は長谷部を背負いながら階段を下り1Fへと移動する。
そこで放心状態の家政婦、山口を見つけ声をかける沖田。
「山口さん!早く逃げてください!」
沖田は山口にそう叫ぶが山口は憔悴して声も出せない。
そこで別の使用人達が「何があったんですか!?」と駆け寄ってくる。
「山口さんを連れて逃げてください!」
沖田は他の使用人に告げると同時に直感であの【バケモノ】は
巣を荒らした自分達を追いかけてくる。そう思った。
このまま車で街に逃げても、もしかしたら被害者が増えるかもしれない。
どうすればいいのか?どうすれば最善の策へと繋がるのか?
沖田は思考を巡らせる。
そして先ほど星野が言ってた言葉を思い出す。
「この水晶玉は簡易封印でね、一度出たら使うのに再度細工がいる。」
「完全に封じ込めるにはもっと質の良い球体が必要でな。」
球体…?
そこで沖田が閃く。
亡くなった【藤田啓治】が工場で何を作っていたのか。
星野が言っていた質の良い球体というのは工場で作っていたモノではないのか。
今ある知識を全て総合して答えを導き出す沖田。
そこで、ただ事ではないと思ったのか中川と由奈が書斎から
出てきて状況を沖田に聞く。
「!?、長谷部さん!?何があったんですか!?」
沖田に背負われる長谷部を見て中川は動揺する。
「説明は後でします!中川さん工場の位置って裏側ですよね!?」
沖田は中川に聞く。
「えーっと…、多分裏側だと思いますけど、長谷部さんが写真見てて私はあまり覚えてないです…。」
確信がない中川の答えは曖昧になる。
「工場なら私が案内します!」
由奈が買って出る。
「お願いします!」
沖田は由奈を見て一目でこの屋敷の使用人ではなく
資料にあった例の娘だと判断する。
由奈に先導され、由奈、中川、沖田&長谷部の順で工場に向かって走り出す。
そして玄関を出て庭に出たところ、背中に冷たいものを感じる沖田。
振り返ると黒煙がチリチリと車庫の方から姿を現し。完全に具現化する。
(まずい!?)
やはり予想は的中し、沖田と長谷部を追ってきた【バケモノ】
幸い、中川と由奈はまだ後ろには気づいていない。
気づけば足を止めてしまうかもしれない。
ここで声をかけるのは得策ではないと思った。
早く!もっと早く…!
そう心の中で願いながら沖田は長谷部を背負い走り続けた…。




