・第十三話、器
・資産家変死事件6
「条件は…、お前の命だ。」
そう言われ草薙は息の呑む。
「ぐ、むう…。」
「私の魔術研究の協力として身命を投げうって協力してもらおうか。」
(コイツ魔術師なのか…!?)
裏稼業専門の探偵でペテン師には幾度と出会った事はあったが
星野は本物の【魔術師】だという事はただならぬ雰囲気で察する草薙。
「ここで命を失ったと考えれば安いものだろう?」
続けざまに星野が言う。
「命か…、すぐ失われるものでなければ協力しよう…。」
静かに草薙は口を開く。
「それより今は奴らの命の方が大切だ。」
後悔などない。草薙は星野を睨みつける。
「そうか、だったら契約を口に出してもらおうか。」
冷たく星野が言い放つ。
「契約…だと!?」
【契約】その言葉を聞いただけで悪寒が走る。
「お前の名は?」
星野は草薙に問いかける。
「草薙 喜助だ。」
その問いに草薙が答える。
「そうか、では復唱しろ。」
星野が静かに告げる。
それは頭の中に直接言葉を叩き込まれるような感覚。
昔、師ミツキに能力を開花させて貰った時と同じような錯覚に見舞われた。
『私草薙喜助は』
『身命をかけて』
『協力致します』
「さぁ、言え。」
(ええい、どうにでもなれ!!!)
一息つき、草薙は言葉を告げる。
『私草薙喜助は』
『身命をかけて』
『協力致します』
言ってしまった。
取り返しのつかない事をした事に草薙は気づかないフリをする。
気づきたくはなかったのだ。
「よく言った、これでお前は今日から私の道具だ。」
星野が満足げにそう告げると
草薙の体から魂の塊のようなものが形になって出てくる。
心の中から大切な何かを失った。そう錯覚させられた。
こぶしほどの大きさの塊を星野が拾い上げ草薙に告げる。
「これでお前は私と同じ理の中にいる、アイツはお前に手出しできないだろう。」
「その水晶をもって解決してこい。」
もう話は終わったという雰囲気を醸し出し無言で後ろを向く星野。
「結局、その水晶玉が鍵なんだな!?」
草薙が星野に問いかけるが答えはない。つまりそういう事なのか。
(とにかく、沖田達と合流しなければ!アイツらが危ない!)
机の上の水晶玉を手に取り
何気なくカーテンの隙間から窓の外を見た草薙はその光景にぞっとした。
先ほどの【バケモノ】が沖田と長谷部、そして中川と由奈を追いかけていた。
(このままでは間に合わない!)
草薙は咄嗟にカーテンを引きちぎり水晶玉にぐるぐる巻くと
そのまま2Fの窓から庭へジャンプする。
「うおおおおおおおお」
雄叫びを上げながら庭に着地するが足を痛める。
だが、そんな事は気にしてられない。
草薙は沖田達と合流すべく走り出していた。




