・第十二話、猟犬2
・資産家変死事件5,5
悲鳴が聞こえ草薙が振り返る。
この悲鳴はただ事ではないと。
「二人はそこから出るな!俺が見てくる!」
そう中川と由香に告げると草薙は悲鳴の方向へ走り出した。
(上の階から悲鳴が聞こえたのは確かだ。)
屋敷の奥にあった書斎から玄関の近くにあった階段へと走る。
走ってる最中、他の使用人が「何事ですか!?」と集まってきたが
「下がってろ!」と草薙は一蹴する。
階段に到着し上ろうと思った瞬間、自分の懐に家政婦が突っ込んでくる。
「おい、上で何があった!?」
怒鳴り口調で草薙は家政婦に問いただす。
「あ、えあ、ば、バ ケ モ ノが…」
声にならない声で家政婦は草薙に言うが一目見てただ事ではない事と確証する。
「そこにいろ!俺が上に行く!」
草薙は放心状態になりかけている家政婦に叫び階段を上る。
上りきった時、丁度長谷部とそれを背負う沖田に出くわした。
「どうした!何があった!?」
草薙は長谷部を背負う沖田に怒鳴る。
「草薙さん!とりあえず逃げてください!」
武闘派警部補の沖田の顔色は真っ青になっており
長谷部の意識がない事は一目瞭然でわかった。
しかし、ここで逃げてきたという事は
その【何者】かが追ってくる可能性が非常に高い。
「くっ、沖田は先に逃げろ!俺はそこに用がある!」
そう、叫びドアが開いている部屋に草薙が入る。
「駄目だ!とにかく逃げてください!」
沖田は草薙に叫ぶが草薙の耳には届かなかった。
部屋の中は薄暗くそこに【ナニか】がいるのを感じ背筋が凍る。
「シュルルルル…。」
その【ナニか】と目があったような気がした草薙は咄嗟に精神を集中させる。
「放て!水の弾丸よ!」
3発、水の弾丸を【ナニか】に打ち込むが素早くかわされ
【ナニか】が部屋の隅から姿を消す。
(なんだよ、あれは…!?)
今まで見たこともない禍々しい生物とは言えない生物。
そしてもうひとつの気配に気づきハッと後ろを振り返る草薙。
そこには例の美人の客人、星野が佇んでいた。
そして星野が口を開く。
「気をつけろよ。」
「何がだ!?」
コイツが元凶かっと一瞬思った草薙だが敵意がない事に気づく。
「そこの机にある水晶玉は奴の巣だ。気をつけて扱えよ。」
続けて星野が言う。
「水晶玉…?」
草薙は机の上にある水晶玉を覗き込もうとした瞬間、星野に話しかけられる。
「急いだほうがいい、奴は先ほどの奴らを追っているぞ?」
冷たく星野が語る。
(くっ、どうすりゃいいんだ!?)
あまりの出来事に草薙は混乱する。
しかし、この女性が何か鍵を握っている事は確かだと思う草薙は次の行動に出た。
「貴女はこの事件の真相を知っている、俺と共に来て頂きたい。」
動揺を隠すように草薙は星野を睨みつけながら言う。
「別にお前達がどうなろうと知った事ではない。私が協力する義理も情けもない。」
星野は冷たく言い放つ。
「ぐ、そうか…。ではどうすれば協力してもらえる?」
草薙は苦し紛れに星野に言う。
「そうだな…。」
星野は顎に手をかけ考える。
そしてとんでもない事を言い放つ。
「条件は…、お前の命だ。」




