・第九話、情報収集2
・資産家変死事件3
資産家の屋敷に到着し中川がインターホンでアポの確認をする。
車は屋敷の駐車場まで使用人が誘導してくれた。
やはり大きく立派な屋敷だが奥に古びた工場のような物がチラリと見えた。
車を降りたとき車を誘導していた使用人が挨拶をしてくる。
「どうも初めまして、藤田様の使用人をしています岡と申します、出版社の方々でよろしいでしょうか?」
年齢は50代過ぎだろうか、白髪まじりの髪に背広がよく似合う使用人だった。
「ええ、月刊ビジターでジャーナリストをしている中川です。本日は宜しくお願いします。」
中川が丁寧に挨拶をし名刺を手渡す。完全に仕事モードに切り替わったようだ。
それに便乗し長谷部も挨拶をしていた。
チラチラ俺や沖田が周囲を見渡している時、使用人が一言告げる。
「…皆様何か気になっているようですがいかがなさいましたか?」
しょっぱなから警戒されたな、まぁ当然といえば当然だが。
「いや、後ろに大きな工場があるんだなぁと思いまして。」
当然の疑問に沖田が答える。
「ですねー、こんな豪邸の裏に町工場があるなんで思わなくてー、気になるのですよ。」率直に長谷部が目的を告げる。…大丈夫なのか?
「ええ、ご主人様の生前の申し付けであるものを作成していたのですが、お気になりますか?」何も隠す様子のない使用人。
「気になりますね、今は稼働していないのですか?」
長谷部がガンガン攻めていく。流石課長ジャーナリストだ。
「ええ、なんでも黒い玉で、ご主人様の亡き今はなんのために作成されたのかわからずじまいです。」
使用人もわからないような物を作成していたのか…。と考え耽る。
「立ち話も失礼に値します。どうぞ客間まで。」
「お嬢様からはお客様を丁重におもてなししろとお申し付けられましたので」
使用人が客間へと誘導する。
屋敷の中に案内され、客間へ到着する。
流石、資産家の屋敷ということで素人でもわかるような
一級品の家具や調度品が綺麗に並んでいる。
別の使用人が茶菓子と紅茶を用意して岡使用人が話を続ける。
「先ほど工場の方を気にしていらしたので後ほど見学してみますか?」
「ええ、是非拝見させて頂きましょう。」
長谷部が興味ありげに回答する。
「そういえば岡さん、貴方この屋敷に出入りしていた女性はご存知ですか?」
またもやストレートに聞きたい事を聞く長谷部。こういう性格なんだろうか
「…ええ、存知上げております。本日もこちらにいらっしゃってます。」
「ですが、何故そのようなことを?」
岡使用人はあからさまに警戒しているように感じた。
「いえ、美人だと有名でしたので」
俺が即答する。警戒を解くにはジョークも必要だ。
「ハッハッハ、そうですね。なんともお綺麗な方でございますからね」
多少警戒心もほぐれたようだ。まったく冷や冷やさせやがる。
「ここではどのくらいの使用人がいらっしゃるのですか?」
話題をそらすように俺が岡使用人に問いかける。
「私含めて5人程ですね」
先ほど茶菓子を用意した他に後3名というところか。
「なるほど…。ではお嬢様含めましてこの屋敷には6名でしたか」
長谷部が手帳にメモを取っている。
そしてここで岡使用人が「失礼、少し席を外します。」と
言い客間から出て行った。
そしてここでコソコソと作戦会議をする。
(おい中川、そろそろ行動に移そうぜ)
長谷部が何やら物騒に聞こえるのは気のせいか。
(ええ、わかってます。)
上司が上司なら部下も部下か…、と密かに納得する。
(でだ、女性も屋敷にいるみたいだが、どうする? 聞き込みしてくるか?)
(取りあえず、きちんと取材しないと体裁取れないですよ)
沖田が慎重に物事を言う。
(そうですね…、また分担します?)
中川が乗り気ではなかったようだが他のメンツは物色する気満々のようだ。
当然俺も含めてだが。
(うーん女性も気になりますけど…、家政婦への聞き込み・女性への聞き込みに別れて行動します?)中川が提案をひとつ上げた。
(でも、女性の方は何かきな臭いような気がします。先に家政婦とお嬢さんの話を聞くべきでしょう。」沖田が的確な判断を申し付ける。
(私からアポを取りましたしお嬢さんの方は私がいきますね。)
(あ、俺もそのお嬢さんに興味があるから同行しよう。)
(よし、じゃ俺と沖田君が家政婦の聞き込み、中川と草薙君はお嬢さんの方へ聞き込みに言ってくれ)
流石課長職だけあってリーダーシップがある。
こういう人材はその世の中でも貴重だ。
頃合を見て岡使用人が客間に帰ってくる。
そこでさっき提案を出した内容を岡使用人に伝え、
まず沖田&長谷部が家政婦の聞き込みへ向かう。
廊下を歩いていると一人の家政婦を見かける。
「あちらのご婦人のお名前は?」
沖田が岡使用人に聞く。
「山口ですね、山口がどうかされましたか?」
岡が神妙そうな顔で質問する。
「いえ、ちょっとひとつふたつお聞きしようかと」
「ええ、わかりました。山口ちょっとこちらに来なさい。」
岡が雑用中に山口に声をかける。
「はい、なんでございましょう?」
如何にも使用人という格好ではなく
どちらかというと古いタイプのメイド服のような服装に見える。
「すいません、山口さん。少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
職業柄、取り調べではないが聞き込みの技能は刑事である以上優秀なようだ。
山口は岡の方をチラリと見て岡がうなづくのを確認してから
「はい、構いません。私で答えられることでしたらなんなりと」
「…岡さんからお聞きとは思いますが、僕達は亡くなった藤田氏への調査でここに来ました」沖田が単刀直入に手短に話す。
「手短に2,3つ質問したいのですが、宜しいでしょうか?」
「えぇ、私の答えられることでしたら」
沖田はゆっくりと相手の目を見ながら話し出す。
「…まずはですね、藤田さんは何時から黒い玉の制作をなさったのですか?」
「…もし理由も知っていれば教えて戴きたいです。」
そしてゆっくりと山口が口を開く。
「そうですね…。あれはたしか数週間前からでしたね。」
「ちょうどお客様がよく訪れるようになってからです。」
「…なるほど、その客はなぜ藤田氏を訪ねてきたのですか?」
今まで黙っていた長谷部が口を開く。
「よくわかりません、他の家政婦の間では仕事関係の知り合いだと噂で聞きましたが」
ふむふむ、仕事関係ね…。
沖田と長谷部は同時にメモを取る。
「ああ、あと何か考えているかよくわからない…。ちょっと、なんだか怖い感じの人でした。」怖い感じの人ですか…。と沖田は更にメモに書き込む。
「…それとですね、事件当時の状況と第一発見者が誰だったのか確認したいです。密室だとお聞きしましたが」
刑事だけあってこの件に関しては存分に興味があった沖田。
「第一発見者は私です、部屋の状況はなにかと争ったような形跡がありました」
「それでですね、ご主人様の首筋に穴のような物があいてたんですが」
「血が流れ出てなかったんですよ。」
「…血が流れてない?」
沖田は咄嗟に嫌な予感がした。今まで特殊班でこういう事例はないからだ。
「なるほど、吸われたようって言ってましたが、その穴の大きさはどれくらいですか?。人差し指くらい?」
嫌な予感がジリジリと沖田を追い詰めて行く錯覚に見舞われる。
「あー、話は変わるが…。」
ここで長谷部が山口に話を振る。
「そういえば貴方密室で藤田さんを発見したと言ってたけど、この家には藤田氏の部屋の合鍵っていくつある?」
「一つだけですね、今は岡様が管理してます。」
後ろに立ってる岡使用人がコクりと頷く。
「…マスターキーは無いのか?」
続けて長谷部が問いかける。
「マスターキーも岡様が。ご主人様は鍵の管理は私たちに任せっきりでした。」
「…なるほど。確認ですが、事件当時屋敷内に居たのは家政婦達・娘さん・謎の客だけですか?」沖田が取り調べを行うような眼光で家政婦を見つめる。
「えぇ、他に不審な者はおりませんでした。」
一瞬鋭い眼光にビクッとした山口であったがすぐに落ち着きを取り戻す。
「その当時、誰が何処にいたか詳しく覚えてますか?」
続けて沖田が問いかける。
「うろ覚えですが岡様と家政婦達は厨房で朝食の準備をしていてお嬢様ととご主人様はいつも朝起きるのが苦手で私が二人をいつものように起こしにいきました。」
考えるように顎に手をあて思い出そうとする山口。
「ふむ、では残りはそのお客さんですね。」
っと沖田が言ったら
「あ、お客様はその日は客室でまだ就寝なさってました。」
(ということはアリバイは全てある訳か…)
沖田は考える、これは外部の犯行ではないと。
そして例の女が一番怪しいと確信した。
「では、有難うございました。貴重なお時間を頂いてしまい申し訳ない。」
深々と沖田が礼をする。
「いやあ、それほどでもない!」と何故か後ろにいる
長谷部が答えていたが沖田は完全にスルーしていた。




