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いつか、きっと。

作者: ATSW
掲載日:2013/07/15

 未散みちるはいつも元気な女の子だ。

 俺の友人たちは皆、「あんな可愛い子と幼馴染で羨ましい」と口を揃えて言う。

 確かに顔は可愛いし、腰まで届く黒髪も綺麗だ。

 手足もしなやかに伸びて、指先まで綺麗だし。

 腰も抱き締めたら折れるんじゃないかってくらい細い。

 胸も制服など邪魔だ、と言わんばかりに激しい自己主張をしている。

 黙ってじっとしていれば、絶世の美少女と言っても過言ではない。

 ないんだが、やんちゃ坊主のような言動と表情と雰囲気と思考構造が、全てを台無しにしている。


……もったいない。


 いつもそう思っているからか、気付かぬうちに溜息を吐いてしまっている。


 ちなみに未散の性格は、陽気で前向き、そして天然のトラブルメーカーだ。

 今も突拍子もないことを言い出した。


「ねえねえ! 怪談を知らない?」

「上や下の階へ移動するための設備だ」

「そうじゃなくて!

 今度の文芸部の会報で、『学校の七不思議』を特集することになったの!

 私、知らないから教えて!」

「最初からそう言えよ……」



■□■



 むつみちゃんは儚さを感じる男の子だ。

 頭は良いし、顔もまあまあ良いし、背も高いし。

 あと、物静かだからか、いつも年上に見られてる。

 だからなのか、一緒にいても、あたしはいつも『妹分』だ。

 二人でデート(学校への登下校でも、買い物の荷物持ちでも、二人でいればデートなのよ!)していても、いいとこ兄妹にしか見られない。

 ……ちょっと、悔しい。


 睦ちゃんは格好良いから女の子が良く話し掛けてくるようだけど、そんな場面に出くわすと何でか胸がモヤモヤする。


 ……理由は自分でも分かってるんだけどね!


 いつも気怠げな様子で、そのくせ毒舌家で、……時々寂しそうな顔で溜息吐いたりする。

 さっきもそうだった。

 胸が締め付けられるような気分になり、思わずギュッと抱きしめたくなった。


 だけど変な子に思われたくないから我慢、我慢。

 だからさっき思いついたアイディアで元気付けてあげよう!


(……また変なこと考えてるな、残念な奴)

「? 何か言った?」

「いいや、何も。それで、七不思議だったか?」

「うん!」


 何か誤魔化された気がするけど、それが何か思い当たる前に、睦ちゃんが知ってる事を話し始めた。

 でも結局、睦ちゃんが知っているのは六つだけだって。

 ちょっと残念。


 でもチャンス!

 よしっ、調査の名目でデートだ!

 け、決してデートの口実に用意していたわけじゃないんだからね!

 ただこれを切欠に、もっと仲を進展させられたらって。

 今はまだ、……もうしばらくは只の幼馴染でしかないかもしれないけど!

 いつか、きっと!


「じゃ、じゃあさ、一緒に調べてみようよ!」

「七つ目を知った奴は死ぬ、との噂もあるけど?」

「ううっ!」


 そんなこと言わないでよぉ!

 本当は怖いから嫌なのにぃ!


 なのに『あたしが怖がるから』会報のテーマにしちゃうんだもん、ひどいよみんな!



■□■



「お、お願いだから一緒にしらべてよぉ……」

「……わかったから泣くな」


 目を潤ませて縋り付く未散の様子に、溜息を吐いて諦めた。

 怖がりの癖に猪突猛進のこいつを放っておいたら、非常に不味い気がするんだ。

 それはもうヒシヒシと。


「睦ちゃん、ありがとう!」

「……どういたしまして」


 小さい頃から俺は、泣き付いてくる未散に逆らえたためしがない。

 それが何故なのかは、多分自分でも分かっている。

 しかし今の関係を壊したくなくて、考えないようにしているんだ。


 いつか、きっと。

 望ましい結果を得られるかもしれない。

 でも慌てる事も、急ぐ必要も無い。

 やんちゃな妹を見守る兄。

 今はそんな関係でいい。

 まだ早い、そんな気がしているんだ。



「睦ちゃーん! 遅いよお! はーやーくー!」

「騒ぐな! お前は子供か!」



 ……主に未散の精神年齢的に。

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