表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗黒神話(旧)  作者: トウリン
変容
30/44

 新宿に戻った二人は、「門屋へ一連の騒動は、風車のうちの一基が故障しており、それにより異常な共鳴が起きて生じたものだった」と伝えた。

「へえぇ、そんなことあるんだねぇ」

 門屋の声と表情からは、どこまでその話を信じているのか、さっぱり予想がつかなかった。だが、康平は敢えて藪を突くような真似はしない――蛇は大人しく藪の中にいてもらったほうがいいのだ。

「ま、その風車の動きがおかしいってのは伝えてきたから、多分もう収まるんじゃないかな」

「そっかぁ」

 門屋はウンウンと頷いている。

 長居をして変に突っ込まれても困るので、康平と未明はさっさと退却体勢に入る。

「じゃ、俺たちは帰るな」

「はいはい。また、何か面白いネタがあったら教えるよぉ」

 そそくさと門屋の事務所を後にして、康平はフウ、と息を吐いた。

「結構、あっさりだったな。もっと食いついてくるかと思ってたぜ」

「……」

 返事がない。康平が見下ろすと、未明は何やら難しい顔をしていた。

「どうした?」

 顔を覗き込まれて、彼女はハッと息を呑んだ。

「あ、うん。なんでもない。ちょっとボウッとしてた。早く帰ろ」

 ニコリと笑う彼女は、もういつもどおりの様子である。

 ――話す気になったら話すだろ。

 康平は内心でそう呟く。

 もう、彼女の心中を知ろうとしてがむしゃらになる必要はなかった。突き放しているわけでも、関心が薄くなったわけでもない。ただ、彼は『待てる』ようになったのだ。

 それは、『信頼』に裏打ちされたつながりだった。


   *


 夜も更けて。

 未明は眠りの中にいた。

 『夢』というのは、一種の別次元になる。身体は地球という世界にいながら、精神はそことは少し違う場所に居るのだ。

 その『夢』の中で、未明はゆっくり振り返る。

 そして、そこにいるモノを真っ直ぐに見つめる。

「こんばんは。やっぱり、あなただったのね……」

 彼女は、『ソレ』に囁きかけた。

読んでくださってありがとうございました。

第二部完結です。

ダメな人間、康平に、過去を吹っ切ってもらう回でした。

次は、最終話、未明の話です。彼女の『選択』を見届けていただければ、幸いです。

12月8日頃の投稿を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ