序
第二部です。
康平メインの話になります。
夕食時、その日の康平は渋い顔で、食事を運ぶ手も滞りがちだった。
元々、『毎日楽しいことがいっぱいだ!』という顔をしているわけではないけどね、と思いつつ、未明はサラダをつつきながら、その表情を眺める。
「門屋から電話があった」
食事も半ばまで平らげた頃、どこか嫌そうに、康平がぼそりと言った。門屋というのは、康平が情報をもらっているという『古物商』だった筈だ。何故にそんな表情なのかと、未明は首を傾げる。
「何? ヒヒイロカネのことが、何かわかったのかな」
期待半分で未明は訊いたが、康平は肩を竦めて返した。
「なんか、貸しを返せってさ」
「この間のこと、かな……。どんな用だろうね」
未明は首をかしげて考える。
以前、康平と未明は門屋から情報をもらい、その交換条件として、もらった情報の調査結果を報告することとしたのだが、諸々の事情によりたいしたことを伝えられなかったのだ。その時、門屋から「貸しにしておく」と言われたのだが……。
何となく碌なことではない予感がする康平は、あまり気が進まない。だが、『たいした』ことだった結果を『何もなかった』と伝えたのは、やはりフェアではないだろう。
貸しは貸しだ。
翌日二人は、門屋のもとまで赴くこととしたのであった。