第17話:鏡の中の自分。堕ちていく優等生の肖像
いつもご愛読ありがとうございます。
今回は、一人になった凛華が直面する「現実」を描きます。
阿久津君という毒に侵され、かつての自分を失っていく彼女の葛藤をご覧ください。
深夜、自宅の自室。凛華は全身鏡の前に立ち、そこに映る自分を茫然と見つめていた。
「これが……私……?」
鏡の中にいたのは、学園一の才女と謳われた、気高く冷徹な生徒会長ではなかった。
頬は不自然に上気し、瞳は熱に浮かされたように潤んでいる。そして何より、無意識のうちに自分の指が、阿久津に触れられた箇所をなぞり、その残滓を追い求めている。
阿久津に弄ばれ、屈辱的な言葉を投げかけられ、絶頂の只中で魔力を整えられる。
そんな「異常」な時間に、今の彼女は魂の底から救いを感じてしまっていた。
(……汚らわしい。なんて、卑しい体になってしまったの……っ)
唇を噛み締め、鏡の中の自分を軽蔑しようとする。
だが、阿久津の顔を思い浮かべた瞬間、共鳴パスが微かに疼き、背筋を熱い戦慄が駆け抜けた。
彼に触れられなければ、満足にピアノも弾けず、夜も眠れない。
もはや彼女のアイデンティティは、阿久津という存在なしには一秒たりとも維持できないところまで変質していた。
「っ、ふ、あ……ぁ……」
彼女は鏡に手をつき、自身の喉から漏れる震えた声に、さらなる絶望を覚える。
堕ちていく。
かつて自分が軽蔑していた、何かに依存し、自分を失っていく愚かな女たち。その誰よりも深く、無様に。
だが、その絶望が深まれば深まるほど、彼女の中に蓄積された魔力は、冷たく、鋭く、研ぎ澄まされていく。
自身の崩壊を糧にして、才能だけが肥大していく皮肉。
凛華は鏡の中の自分を抱きしめるように腕を回し、阿久津の残した温もりを必死に手繰り寄せながら、夜の闇に沈んでいった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
客観的に自分を見つめることで、より一層「依存」の深さが浮き彫りになる凛華。
彼女のプライドが崩れれば崩れるほど、その演奏は異次元の領域へと近づいていきます。
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