頂 itadaki
エドは異国から運ばれて来たという深い緑色の緑茶の香りを嗅いでいた。
「何という深い香りだ!少し飲んでみよう」
熱い緑茶をそっと一口飲んでみる。
この新緑のような香りは素晴らしい!
エドは遥か異国に想いをはせて窓の外を眺める。この緑茶は昨年の年末に我が国へ運ばれて来たものであり、その国大和国は我が国との交易を望んでいるのであった。
「王が帰国したら是非味わって頂こう」
エドはわずか30歳でジーニスティアン王国の王の国王補佐に選ばれた男である、最強の騎士と呼ばれながらも頭脳明晰で人望も厚い男である。ジーニスティアン王国は島国の小国であるが、強力な海軍力によって、世界の軍事バランスの一端を担う王国であった。
国王であるリーヴァイは女王と共に昨年末から世界王国連盟の会議に招かれて1ヶ月の旅程で国を離れている。
もう会議は終わり国王と女王は帰国の途についている頃だろう。
「来週にはジーニスティアン号も港に到着するだろう、やっと少し肩の荷がおりるな」
それにしてもアジロン帝国が武力行使によって4つの隣国に戦争を仕掛けるなど誰が予想しただろうか。
侵攻を受けた各国も実に良く踏みとどまり、戦線は膠着しているものの、終戦の見込みは全く立っていない。
そこで世界王国連盟の会議の中で和平案を取りまとめる為の会議が急遽年末から年始にかけて開かれているのである。世界王国連盟には25カ国が加盟しており、より穏便な和平案の内容と王国連盟軍の軍事介入の両方が話し合われてるはずだ。
国王が帰国したら会議の詳しい内容を聞かなくてはならない。
「さて、そろそろ新年の会議の時間だ」
エドは執務室を出て大会議へ向かった。大会議室へ入るとヴァイ軍務大臣とキイナ財務大臣マゾン外務大臣スーショ内務大臣が席についていた。
ベギナス相談役はまだのようである。
予定の時刻にはまだゆとりがあるので、皆と新年の挨拶などをして待つことにしよう。
「皆様新年もよろしくお願いします。国王は外遊の為に不在ですが、ベギナス相談役の到着を待って会議を始めたいと思います」
そう言ってエドは席についた。
ジーニスティアン王国は12の領主がおり、その大半が海に面している。なので海外から不法麻薬などが持ち込まれる事件も相次いでいる。その大半の生産地もアジロン帝国内にあるという。
メイドが紅茶を運んで来た。部屋の中に華やかな香りが満ちあふれる。
今年こそ世界に平和が訪れる年にしよう。
エドがそう想うといなや、ドアをノックする音が部屋に響いた。
おや?ベギナス様かな?
「入りたまえ」と誰かが声をかける。すると入って来たのは部屋を警護している兵士であった。
「大至急お伝えしたいと申す者がおります」
エドは「かまわない呼びたまえ」と兵士に指示した。
大会議室の中に小さなざわめきが起こる、そして一人の血で汚れた兵士が大会議室へ入って来た。
「申し上げます!ルーランド沖にてジーニスティアン号が何者かに襲撃を受けました!国王女王共に連れ去られ、ジーニスティアン号は敵の攻撃により撃沈されました!」
大会議室に衝撃が走る!
「何ということだ!」
「おのれ!どこの国が!?」
エドは冷静だった。
「皆様落ち着いてください。君名はなんという?」
「コバスと申します」
「そうか、良く知らせてくれた。先ずは医務室に行きなさい。治療をしたら詳しい話しを聞く」
コバスは警護の兵士に連れられて医務室へ向かった。
入れ違いでベギナス相談役が大会議室へと入ってきた。
「何の騒ぎなのじゃ?ん?」
「恐れ多きことに国王と女王が拐われ、ジーニスティアン号撃沈とのことです!」
「フォーッ、フォ、フォ、フォ!あのリーヴァイが大人しく拐われるもんかのぉ?」
確かにそうなのである。ジーニスティアン王国は血統で王位を決めるのではなく決闘で王位が決まるような国なのである。馬鹿はなれない。
果てさて国王は誰が何の為に拐い、今どこにいるのか?救出の術はあるのか?
エドの頭は対応策で埋め尽くされていた。




