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第七章: 宿屋騒動と湯煙の波乱(前編)

佐藤悠斗は、日光街道沿いの宿屋で新たな朝を迎えた。


昨日の朝、混浴露天風呂で母娘の奇跡を演出し、その夜を宿で過ごした彼だった。


朝の光が窓から差し込み、畳にまだらな影を落としている。


外からは鳥のさえずりが響き、風が木の葉をカサカサと揺らす。


布団の中で目をこすりながら、彼は寝ぼけた声で呟いた。


「うーん……昨日もよく寝れたな。異世界の布団、意外と快適だぜ」


Tシャツは汗で湿り、ジーパンは畳に脱ぎ捨てられたまま。


腰に巻いた革袋から金貨がチリンと鳴り、三つ葉葵の家紋が入った小太刀がそばに転がっている。


囲炉裏の火は消え、灰の中に冷たさが残っていた。


「腹減ったな。朝飯食って、またあの露天風呂入ろうかな」


そんなことを考えながら、彼は布団から這い出した。


宿屋の主である中年男が、囲炉裏に薪をくべながら「おはようさん」と声をかけてきた。


無精髭の顔には穏やかな笑みが浮かんでいる。


「おはようございます! 飯ありますか?」


悠斗がニヤニヤしながら聞くと、男が「今用意するよ」と答えた。


「昨日のお客さん、朝早く出てったよ。お前さんの術のおかげで元気になってな」


「いやいや、俺じゃねえですよ。偶然っす、偶然」


悠斗が知らんぷりで笑ったが、内心では「俺、結構すごくね?」と自己満足に浸っていた。


その日、彼は宿に留まることにしていた。


「混浴露天風呂あるし、もう一泊してもいいよな。金もあるし、旅の疲れ取れるし」


そんな軽い気持ちで、朝飯を済ませた。


焼いた魚と味噌汁をガツガツ食べ、「うまい!」と満足した。


食後、彼は再び露天風呂へ向かった。


宿の裏庭にある露天風呂は、木の柵に囲まれ、湯気が立ち上っている。


岩で組まれた湯船からは熱気が漂い、近くの川のせせらぎが聞こえる。


木々の間から朝日が差し込み、湯面に光が反射していた。


「いやー、朝風呂も最高だな!」


悠斗はTシャツとジーパンを脱ぎ、腰に布を巻いて湯船に飛び込んだ。


「熱っ! でも気持ちいい!」


湯が身体を包み、疲れが溶けていく。


湯気の中で目を閉じ、彼は呑気に呟いた。


「異世界ライフ、温泉三昧って最高すぎるぜ」


その時、露天風呂の入口から足音が聞こえてきた。


「ん? 誰か来たのか?」


目を細めて見ると、着物を脱いだ女剣士が現れた。


柳生十兵衛だ。


彼女は幕府の命令で悠斗を尾行し続け、疲れを癒すために宿に泊まっていた。


腰に布を巻いただけの姿で、汗ばんだ肌が朝日に輝いている。


豊満な胸が布から溢れそうで、長い黒髪が背中に流れ落ちていた。


むっちりした太ももが湯気に映え、色気が漂う。


「ふぅ……やっと一息つける」


十兵衛が呟き、湯船に足を踏み入れた。


悠斗は目を丸くし、心臓がドキッと跳ねた。


「お、お前! あの時の女剣士じゃねえか!」


「何!?」


十兵衛が驚き、刀を手に持つが、すでに脱いでいる。


「貴様! 何故ここにいる!」


彼女が顔を赤くして叫び、湯船の中で身構えた。


湯が彼女の動きで波立ち、胸が揺れた。


「いや、俺が先にいたんだよ! 混浴だって聞いてたし!」


悠斗が慌てて弁解したが、十兵衛の目は鋭い。


「混浴だろうと貴様みたいな下品な輩と一緒に入る気はない! 出ていけ!」


「出ていくって、俺だって客だぞ! お前こそ出てけよ!」


二人の声が湯船に響き、湯気が揺れた。


十兵衛が「ふん!」と鼻を鳴らし、湯船の端に移動した。


「仕方ない。ここで貴様を監視するのも任務だ」


「監視!? まだ俺のこと追ってたのかよ!」


悠斗が驚きつつも、ニヤリと笑った。


「まあ、いいけどさ。混浴で一緒って、ちょっとラッキーじゃね?」


「何!? スケベな目で見るな!」


十兵衛が怒鳴り、湯をかけた。


「うわっ、熱い!」


悠斗が飛び上がり、その拍子に足が滑った。


「うおっ!」


彼が倒れ込み、十兵衛にぶつかった。


「きゃっ!」


二人が湯船で絡まり、十兵衛の布がずれて豊満な胸が露わになった。


汗と湯で濡れた肌が光り、柔らかな曲線が目の前に迫る。


「うおおお!?」


悠斗の目が釘付けになり、鼻血がポタリと落ちた。


「貴様! どこ見てるんだ!」


十兵衛が顔を赤くして叫び、彼を突き飛ばした。


「す、すまねえ! わざとじゃねえんだよ!」


悠斗が慌てて謝り、湯船の端に逃げた。


「わざとでなくても許さん! このスケベ妖術使い!」


十兵衛が湯船から立ち上がり、布を直した。


汗と湯で濡れた身体が湯気に映え、怒りに震える姿が色気を増していた。


「ちょっと落ち着けって! 俺だって驚いたんだから!」


悠斗が弁解したが、十兵衛は刀を手に持つ。


「黙れ! 今すぐ貴様を斬ってやる!」


「待て待て! 斬るのはやりすぎだろ!」


二人が湯船で追いかけっこを始め、湯がバシャバシャと飛び散った。


その時、十兵衛が足を滑らせ、「うわっ!」と倒れた。


悠斗が反射的に支えようとし、再び絡まった。


「うおっ、また!?」


今度は十兵衛の胸が悠斗の顔に押し付けられ、彼が「むぐっ!」と声を上げた。


柔らかな感触と湯の熱さが混じり、彼の頭がクラクラした。


「貴様! またわざとか!」


十兵衛が顔を赤くして叫び、彼を蹴り飛ばした。


「わざとじゃねえって! お前が滑ったんだろ!」


悠斗が湯船の端に転がり、鼻血を拭った。


「もう我慢ならん! 貴様、覚悟しろ!」


十兵衛が刀を振り上げたが、湯気で手が滑り、刀が湯船に落ちた。


「何!?」


彼女が慌てて拾おうとした瞬間、悠斗が呪文を叫んだ。


「我、佐藤悠斗、深淵に潜む超ヤバい南蛮の精霊を呼び起こし、古の禁忌をぶち開ける! 蠢く影よ、痒みの使者よ、この怒り狂う女に超絶迷惑な呪いをぶちかませ! 股間をガリガリ掻きたくなる衝動をぶっ放せ! スーパー・イッチング・カース・オブ・ド変態・アゴニー!」


紫のモヤモヤが噴き出し、十兵衛を包んだ。


「うわっ! またこの術か!」


彼女が股間を押さえ、蹲った。


「ううっ、痒い! 貴様、下品すぎる!」


「これで少しは落ち着けよ!」


悠斗がニヤニヤしながら言ったが、十兵衛は怒りに震えた。


「解除しろ! 今すぐだ!」


「分かった、分かった! 痒み、消えろ!」


紫のモヤが消え、十兵衛の痒みが収まった。


「はぁ……貴様、本当に最低だな」


彼女が息を荒げて立ち上がり、湯船から出ようとした。


その時、宿屋の主が露天風呂に顔を出した。


「おい、騒がしいぞ! 何やってるんだ!」


男が驚き、二人を見た。


「何!? 風呂場でやっとるか!」


十兵衛が慌てて布を押さえ、顔を赤くした。


「いや、これはちょっとしたハプニングで……」


悠斗が弁解しようとしたが、男が「混浴だからって騒ぎすぎだ!」と怒鳴った。


「すみませんでした!」


悠斗が頭を下げると、十兵衛が「ふん」と睨んだ。


「貴様のせいだぞ」


「俺のせいだけじゃねえだろ! お前も滑ったんだから!」


二人が言い争う声が宿に響き、宿屋の主が「もういい、静かにしろ!」と一喝した。


十兵衛は着物を手に持つと、「次に会う時は貴様を斬る」と言い残し、露天風呂を去った。


湯気と汗に濡れた背中が、朝日に映えて色気を放っていた。


悠斗は湯船で一人、ニヤニヤした。


「いやー、ラッキースケベってやつだな。異世界、最高すぎるぜ」


だが、この騒動はまだ終わりではなかった。


宿に戻った十兵衛は、着物を着ながら怒りを抑えきれなかった。


「あの妖術使い、任務とはいえ我慢ならん。次は絶対に始末する」


彼女が刀を握り直したその時、宿の別の客が騒ぎを聞きつけて集まってきた。


「何だ、さっきの騒ぎは?」


「女と男が露天風呂で揉めてたらしいぞ」


噂が広がり、宿屋の主が「落ち着け、ただの誤解だ」と弁解した。


だが、事態はさらに混乱へと向かう。


宿の外では、豊臣残党が動き始めていた。


「あの妖術使い、この宿にいるらしいな」


「今夜襲うぞ。幕府の味方ならなおさらだ」


黒装束の男たちが刀を手に、宿を遠巻きに囲んだ。


悠斗はその夜、宿の部屋で呑気に飯を食っていた。


「今日の騒ぎ、面白かったな。またあの女と会うかな」


彼がニヤニヤしていると、窓の外で怪しい影が動いた。


「ん? 何だ?」


立ち上がった瞬間、宿の壁がドカンと破られ、黒装束の男たちが飛び込んできた。


「うおっ! 何!?」


「貴様が妖術使いか! 死ね!」


刀が振り下ろされ、悠斗が「待て待て!」と叫んだ。


宿屋が一瞬にして戦場と化し、十兵衛も異変に気づいた。


「何!? 豊臣残党か!」


彼女が刀を手に飛び出し、悠斗と敵の間に割って入った。


「貴様、敵か!」


「いや、俺じゃねえよ! 助けてくれ!」


二人が再び絡み合い、宿屋全体を巻き込む大騒動が始まった。


この夜の波乱は、8話へと続く。



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