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第四章: 股間魔法の誤爆と剣士の羞恥

佐藤悠斗は、日光街道の土の道をのんびりと歩いていた。


徳川家光を救った戦場でのドタバタ劇から数日が経ち、彼は特に目的もなく南へ向かっていた。


「江戸って南の方だよな? とりあえず行ってみっか。なんか面白そうなことあるかも」


そんな軽い気持ちが彼を動かしていた。


頭の中では、家光からもらった革袋の中の金貨がチラつき、使い道を妄想していた。


「うまい飯とかさ、なんかカッコいい服とか……いやいや、異世界だし、可愛い女の子と遊ぶのもありだろ!」


ニヤニヤしながら歩く彼の姿は、異世界の英雄というより、どこか抜けた観光客のようだった。


街道は両側を深い森に囲まれ、木々の枝が空を覆うように広がっている。


風がそっと葉を揺らし、かすかなざわめきが耳に届いた。


鳥のさえずりが遠くで響き、時折、小枝が地面に落ちてカサリと音を立てた。


土の道には馬車の轍が深く刻まれ、ところどころに小さな石が転がっている。


悠斗の足音がコツコツと響き、時折、彼が蹴った小石が跳ねて草むらに消えた。


彼の服装は相変わらず異世界で浮きまくりだ。


アニメキャラがプリントされたTシャツは汗で少し湿り、ジーパンは裾が土で汚れている。


腰には家光からもらった小太刀がぶら下がり、歩くたびに軽く揺れた。


「これ持ってるだけで、なんか強くなった気分になるよな」


呟きながら、彼は小太刀を手に持って抜いてみた。


刃がキラリと陽光を反射し、鋭い輝きが目に眩しい。


「うおっ、カッコいい! 俺、剣士っぽくね?」


調子に乗って振り回してみたが、バランスを崩して「うわっ!」とよろけた。


「危ねえ! 自分で斬るとこだったじゃん!」


慌てて鞘に戻し、周囲を見回して誰もいないことを確認した。


「恥ずかしいとこ見られなくてよかったぜ……」


苦笑いしながら、再び歩き出した。


そんな調子で進んでいると、ふと背後に気配を感じた。


「……ん?」


耳を澄ますと、木々のざわめきに混じって、微かな足音が聞こえてくる。


コツ、コツ、と軽く地面を踏む音。


悠斗は首を傾げ、足を止めた。


「誰かいるのか?」


ゆっくり振り返ってみたが、木々の影しか見えない。


陽光が葉の隙間を通り抜け、地面にまだらな光を落としている。


だが、次の瞬間、木の影がチラリと動いた気がした。


「え、マジで何かいる!?」


背筋に冷たいものが走り、心臓がドキドキと早鐘を打った。


「まさか……豊臣の残党か!?」


脳裏に、先日の戦場での黒装束の連中が浮かんだ。


あの時、股間を痒くする妖術で逃げ散った彼らが、復讐のために戻ってきたのではないか。


「あいつら、俺に恨み持ってそうだもんな。やべえ、やべえ!」


焦りが胸を締め付け、汗が額に滲んだ。


「ここで襲われたらヤバいだろ! 一人じゃどうすりゃいいんだよ!」


周囲を見回したが、街道は静かで、助けを呼べる気配もない。


木々の間からは風が吹き抜け、葉がカサカサと擦れ合う音が不気味に響いた。


だが、背後の気配は確実に近づいてきていた。


足音が少しずつ大きくなり、誰かが忍び寄るような気配が濃厚になった。


「こうなったら、先手必勝しかない!」


悠斗は決意し、両手を広げて得意の南蛮妖術を繰り出すことにした。


「敵だろうが何だろうが、まとめて無力化してやる! あの戦場みたいにさ!」


深呼吸して、心を落ち着かせた。


あの時、家光を救った自信が胸に蘇る。


「よし、いける! 俺ならやれるぜ!」


目を閉じ、呪文を叫び始めた。


「我、佐藤悠斗、深淵に潜む超ヤバい南蛮の精霊を呼び起こし、古の禁忌をぶち開ける! 蠢く影よ、痒みの使者よ、背後の怪しい奴に超絶迷惑な呪いをぶちかませ! 股間をガリガリ掻きたくなる衝動をぶっ放せ! スーパー・イッチング・カース・オブ・ド変態・アゴニー!」


声が街道に響き渡り、彼の手から紫のモヤモヤが噴き出した。


モヤは後方へ勢いよく流れ、木々の間を突き進んだ。


次の瞬間、鋭い悲鳴が森にこだました。


「うわっ! 何ですか、これは!?」


女の声だ。


悠斗が「えっ?」と振り返ると、そこには見知らぬ女剣士が立っていた。


柳生十兵衛だ。


彼女は刀を手に持ったまま、股間を押さえて蹲っていた。


着物は少し乱れ、汗で濡れた首筋が陽光に輝いている。


豊満な胸が荒い息づかいで揺れ、汗ばんだ肌が色っぽさを際立たせていた。


「何!? 何ですか、この術は!」


十兵衛が顔を真っ赤にして叫んだ。


彼女の声には怒りと羞恥が混じり、刀を握る手が震えている。


「ううっ、痒い! 何なんですか、この下品極まりない妖術は!」


悠斗は目を丸くし、呆然と彼女を見つめた。


「お、お前、誰だ!? 豊臣残党じゃねえのか!?」


頭が混乱し、心臓がさらにドキドキした。


「豊臣残党!? ふざけないでください! 私は柳生十兵衛、徳川家光公の家臣です!」


十兵衛が怒鳴りながら、股間を掻く手を止められずにいた。


彼女の着物の裾がさらに乱れ、太ももの内側がチラリと見えた。


「ええっ!? 家光の家臣!? マジかよ、すまねえ!」


悠斗が慌てて頭を下げ、冷や汗が背中を伝った。


「すまねえって済む問題じゃないですよ! この恥ずかしい目に遭わせて!」


十兵衛が刀を地面に突き立て、なんとか立ち上がった。


だが、股間の痒みに耐えきれず、膝がガクガクと震え、身体がよろけた。


「解除してください! 今すぐ! こんな辱め、我慢できません!」


彼女の声は切羽詰まり、目には涙さえ浮かんでいた。


「分かった、分かった! えっと、解除呪文は……」


悠斗が焦って呪文を考え始めた。


「あの戦場の時、どうやったっけ? えっと、えっと……」


頭の中が真っ白になり、手が震えた。


「我、佐藤悠斗、深淵に――」


「また長いのをやる気ですか! さっさと終わらせてください、この下劣な輩!」


十兵衛に怒鳴られ、悠斗は「うっす!」と短く叫んだ。


「痒み、消えろ!」


紫のモヤがスッと消え、十兵衛の痒みがようやく収まった。


彼女は「はぁ……」と長い息をつき、汗だくで地面に膝をついた。


汗が首から胸の谷間へと流れ、着物が肌に張り付いて曲線を強調した。


「やっと……やっと終わった……」


呟きながら、彼女は刀を握り直し、立ち上がった。


そして、鋭い目で悠斗を睨みつけた。


「お前……何者ですか? その下品な術、南蛮妖術使いとかいう奴ですか?」


声には怒りと疑念が滲み、刀の切っ先がわずかに彼を向いた。


「ええ、まあ、そうっすね。佐藤悠斗っす。以後よろしく!」


悠斗がニヤニヤしながら手を差し出した。


だが、心の中では「やべえ、怒らせちまった」と焦っていた。


十兵衛が「ふん!」と鼻を鳴らし、彼の手を払った。


「よろしくなんてなりませんよ! こんな恥ずかしい目に遭わされて、貴様を許す気はありません!」


彼女の頬はまだ赤く、羞恥と怒りで息が荒い。


「いや、マジで謝るって! 豊臣残党が襲ってきたと思ってさ、つい……」


悠斗が弁解しながら頭を掻いた。


「豊臣残党なら、私が片付けてます! 貴様が余計なことをするから、こうなるんです!」


十兵衛がムッとして胸を張った。


その拍子に巨乳が揺れ、汗で濡れた着物の隙間から肌が覗いた。


悠斗が「うおっ」と目を奪われ、思わずゴクリと唾を飲んだ。


「何ですか、その目は! スケベ!」


彼女が顔をさらに赤くして刀を構えた。


刀の切っ先が悠斗の鼻先をかすめ、彼は「待て待て!」と両手を上げた。


「落ち着けって! 俺、悪気はねえんだよ! お前がこっそり後つけてたからさ!」


「こっそり!? 失礼な! 私は堂々と任務を遂行していただけです!」


十兵衛が反論し、刀を地面に突き立てた。


「任務って何だよ?」


悠斗が首を傾げ、彼女をまじまじと見つめた。


汗ばんだ首筋、乱れた髪、怒りに震える瞳。


「めっちゃ美人だけど、怖えな……」と内心で呟いた。


十兵衛はため息をつき、渋々答えた。


「家光公のご命令です。貴様の後をつけ、南蛮妖術使いが何者か見極めろと」


「マジかよ! 俺、監視されてたのか!」


悠斗が驚きつつも、ニヤリと笑った。


「でもさ、お前が俺をつけてたってことは、俺の術にビックリしたんだろ?」


「ビックリどころか、恥ずかしさで死にそうですよ! 二度とやらないでください!」


十兵衛が顔を赤らめて怒鳴った。


彼女の声が森に響き、鳥が驚いて飛び立った。


「分かったって! 次はちゃんと敵にだけ使うからさ」


悠斗が笑いながら約束した。


だが、心の中では「次もミスったらどうしよう」と少し不安だった。


十兵衛は「ふん」とそっぽを向いた。


「次なんてありません。私が貴様を監視するのは今日までです」


「えー、そう言うなよ。せっかく会ったんだし、仲良くしようぜ」


悠斗が軽い調子で言った。


「仲良く!? ふざけないでください! 貴様みたいな下品な輩と仲良くする気はありません!」


十兵衛が刀を握り直し、歩き出した。


彼女の背中は怒りに震え、汗で濡れた着物が身体に張り付いていた。


「家光公に報告したら、もう貴様には関わりませんからね!」


そう言い残し、彼女は街道の先へ去っていった。


その足音が遠ざかり、森に再び静寂が戻った。


悠斗は「へぇ、面白い女だな」と呟きながら見送った。


「でも、江戸でまた会う気がするぜ。家光の家臣なら、絶対絡んでくるだろ」


彼はニヤニヤしながら、再び南へ歩き始めた。


街道の風が木々を揺らし、二人の出会いを静かに見守っていた。


だが、この出会いがただの偶然ではないことは、まだ二人とも知らない。


森の奥では、豊臣残党の影が再び動き始めていた。


黒装束の男たちがひそひそと囁き合っている。


「あの南蛮妖術使い、放っておけばまた邪魔になるぞ」


「次はもっと大勢で襲う。家光の首と一緒に、あいつの命もいただく」


彼らの目には復讐の炎が宿っていた。


一方、江戸城では家光が新たな策を練っている。


「佐藤悠斗か。あやつ、使える駒になるかもしれんな」


家光の笑みが、物語の新たな局面を予感させた。


悠斗と十兵衛の運命は、再び交錯する日が近い。


街道の先に広がる未来は、混沌と笑いに満ちていた。



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