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第二章: 褒美と面倒臭い誘い

戦場は静まり返っていた。


紫のモヤが晴れ、豊臣の残党は「もうやだー!」と泣きながら森の奥に逃げ散っていた。


護衛たちも股間を掻く手を止め、「はぁ……やっと終わった」と汗だくで息をついていた。


地面には刀や槍が転がり、木々の間には矢が刺さったまま。


だが、不思議なことに死人は一人も出ていなかった。


佐藤悠斗は両手を腰に当て、ニヤリと笑った。


「いやー、俺の南蛮妖術、完璧だったな! 敵も味方も無力化して、誰も死なせなかったぜ!」


彼の得意げな声が森に響いた。


その時、馬上の徳川家光が偉そうに鼻を鳴らした。


「ふん、南蛮人。お前のその胡散臭い妖術、呆れるほど下らんものだな」


悠斗は「えっ」と目を丸くした。


家光は馬を一歩進ませ、悠斗を見下ろした。


「だが、敵を一人も殺さず、余の護衛も無傷で済ませたのは見事だ。認めざるを得ん」


「へぇ、お褒めにあずかり光栄っすね」と悠斗が肩をすくめた。


護衛の一人が汗を拭いながら口を挟んだ。


「確かに……敵が逃げ出した時は助かったと思ったけど、あんな痒み地獄は二度とごめんだ!」


「そうだ! 南蛮人、お前、俺たちまで巻き込むとか何考えてんだ!」と別の護衛が恨めしそうに叫んだ。


悠斗は苦笑いした。


「いや、まあ、結果オーライでいいじゃん?」


家光が「黙れ」と一喝し、護衛たちがビシッと姿勢を正した。


「貴様ら、余に口答えする気か! この南蛮人のおかげで命拾いしたことを忘れるな!」


「は、はい、家光公!」と護衛たちは慌てて頭を下げた。


悠斗は「へぇ、偉い人って感じだな」と内心で感心した。


家光は馬から悠斗を見下ろし、偉ぶった口調で言った。


「お前、南蛮妖術使いとしてなかなか使えるようだ。どうだ、家臣にならんか? 余の元で働けば、栄誉と富が手に入るぞ」


悠斗は一瞬目を輝かせた。


「栄誉と富!? おお、マジかよ!」


だが、すぐに首を振った。


「いや、待て待て。お役所仕事って面倒臭そうだな。書類とか会議とか、絶対ダルいじゃん」


家光が眉をピクッと動かした。


「何? 余の誘いを断るだと? この徳川家光に仕える栄誉を、面倒臭いだと!?」


「いやいや、家光公、気持ちは嬉しいっすよ! でも俺、自由に生きてぇタイプなんで」と悠斗が手を振った。

護衛の一人が呆れたように呟いた。


「こいつ、家光公にそんな口を利くのか……肝が太いのかバカなのか」


「どっちもだろ」と別の護衛が肩をすくめた。


家光はしばらく悠斗を睨んでいたが、やがてため息をついた。


「ふん、貴様のような自由気ままな輩に無理強いはできんか。まあよい」


彼は馬上から腰に手をやり、小さな革袋と小太刀を取り出した。


「これでも持っていけ。褒美だ」


悠斗が「おお!」と目を輝かせて受け取った。


革袋を開けると、中にはキラリと光る金貨が詰まっていた。


「うわ、マジで金!? これでしばらく遊んで暮らせるじゃん!」


小太刀を手に持つと、軽くて扱いやすそうな刃が目に入った。


「かっこいい! これ持ってれば、なんか強くなった気分になれるな!」


家光が偉そうに鼻を鳴らした。


「ふん、喜ぶ顔は素直でよいな。だが、それだけではないぞ」


彼は悠斗を真っ直ぐ見据えた。


「何か困ったことがあれば、江戸城を訪ねてこい。余の名を出せば、通されるよう手配しておく」


悠斗は「へぇ」と目を丸くした。


「江戸城って、あのデカい城? マジでVIP待遇じゃん!」


「当然だ! 余は徳川家光、この国の頂点に立つ者だぞ!」と家光が胸を張った。


護衛の一人が小声で呟いた。


「でも、あんな妖術使いが江戸城に来たら、絶対混乱するよな……」


「黙れ、お前は黙ってろ」と別の護衛が肘でつついた。


悠斗は財布と小太刀を手にニヤニヤしていた。


「いやー、家光公、太っ腹っすね! これでしばらくは楽しく生きられそう!」


「ふん、貴様のその軽い態度、気に入らんが、まあよい。次に会う時は、もう少し礼儀を覚えておけ」と家光が偉そうに言い放った。


「了解っす! じゃあ、また何かあったらよろしく!」と悠斗が手を振った。


家光は馬を進めながら、「次はお前を家臣にせねばならんな」と独り言をつぶやいた。


護衛たちは「南蛮人め……」と疲れた顔で後ろを見送った。


こうして、悠斗の異世界ライフは、ドタバタの勝利と意外な褒美で第二幕を迎えた。


面倒臭がりな彼にとって、家臣の誘いは却下したが、財布と小太刀、そして江戸城へのパスは悪くない収穫だった。



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