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第十三章: 水戸城下の宿屋と腋臭の呪い

 佐藤悠斗は、柳生十兵衛、綾音と共に山道を抜け、ついに水戸城下にたどり着いた。


 前日、洞窟で豊臣残党を撃退した三人は、長い山道を歩き続けて疲れ果てていた。


 空は夕暮れに染まり、水戸城のシルエットが遠くに浮かんでいる。


 城下町の通りは賑やかで、木造の家々が軒を連ねる。


 魚の焼ける匂いや酒の香りが漂い、提灯の明かりが道を照らす。


 悠斗の藍色の着物は汗と埃で汚れ、腰には三つ葉葵の家紋が入った小太刀が揺れる。


「やっと町だ! 山道抜けるのキツかったぜ」


 呟きながら、彼は宿屋の看板を見つけた。


 木造二階建ての建物で、暖かい光が漏れている。


「ここに泊まろうぜ。疲れたし、飯食いたい」


 柳生十兵衛が隣で「ふん」と鼻を鳴らした。


 彼女は深緑の着物を着て、旅の疲れを隠しつつ警戒を解かない。


「貴様のせいで迷ったのだ。宿に着いただけで喜ぶな」


 冷たく言い放ち、刀を手に持つ姿が凛々しい。


 綾音が「ねえ、宿屋ってワクワクするね!」と笑いながら近づいてきた。


 彼女は軽い着物を着て、汗で濡れた胸元が色気を放つ。


「魔法で何か楽しいこと起きないかな?」


「変態が何を言っても信用ならん」


 十兵衛が呆れ、綾音を睨んだ。


「まあまあ、みんなで泊まろうぜ。金ならあるし」


 悠斗が革袋を手に持つと、軽さに違和感を覚えた。


「ん? おかしいな……」


 袋を開けると、中が空っぽだった。


「うおっ! 財布がない! 金が全部なくなってる!」


 彼が目を丸くし、心臓がドキドキした。


「何!? 貴様、スられたのか!」


 十兵衛が驚き、刀を抜いた。


「やべえ、いつスられたんだ!? 山道か? 宿場町か?」


 悠斗が焦り、綾音が「ふふ、金なくなっちゃった?」と笑った。


「笑ってる場合か! お前も探せよ!」


 三人は宿屋に入り、部屋を借りた。


 店主の老婆が「一泊でいいかい?」と聞き、悠斗が「えっと、金がなくて……」と頭を掻いた。


「何!? 金がないなら泊められんよ!」


 老婆が目を吊り上げ、十兵衛が「貴様、無一文だと!?」と怒鳴った。


「落ち着けって! なんとかするからさ!」


 悠斗が弁解し、「宿代稼ぐために働かせてください!」と頼んだ。


 老婆が「ふん、なら裏で薪割りでもするか。働けば泊めてやる」


「了解っす! 薪割りなら任せろ!」


 悠斗が拳を握り、裏庭へ向かった。


 十兵衛と綾音は部屋で待機し、綾音が「魔法で稼げばいいのに」と呟いた。


「下品な術で稼ぐ気か! 貴様ら、ふざけるな!」


 十兵衛が刀を手に持つと、綾音が「ふふ、冗談だよ」と笑った。


 その夜、悠斗は薪割りを終え、汗だくで部屋に戻った。


「ふぅ、なんとか宿代稼いだぜ。疲れた……」


 彼が布団に倒れ込むと、十兵衛が「貴様、無一文でも生き延びる気か」と呆れた。


「まあ、なんとかなるって」


 悠斗がニヤリと笑い、眠りに落ちた。


 だが、深夜、窓から微かな気配がした。


「ん?」


 悠斗が目を覚ますと、窓際に人影が立っていた。


 小柄な盗人だ。


 顔は布で隠され、黒い装束が身体にぴったり張り付いている。


「うおっ、泥棒か!」


 悠斗が飛び起きると、盗人が彼の小太刀に手を伸ばした。


「貴様、それ俺のだぞ!」


 彼が叫ぶと、盗人が素早く窓へ逃げようとした。


 その時、綾音が「ふふ、逃がさないよ!」と飛び出し、盗人を捕まえた。


「うぐっ!」


 盗人がもがき、布が外れて顔が露わになった。


 胸の小さな、日焼けした肌の美少女だった。


 長い黒髪が乱れ、鋭い目が悠斗を睨む。


「うおおお!? 美少女!?」


 悠斗が目を丸くし、鼻血がポタリと落ちた。


 十兵衛が「何!? 女か!?」と驚き、刀を構えた。


「ふふ、私の勝ちだね」


 綾音が美少女の腕を押さえ、笑った。


「離せ! 貴様ら、金持ちに見えたからスっただけだ!」


 美少女が叫び、もがいた。


「金持ちって、俺、無一文だぞ! 財布返せ!」


 悠斗が怒鳴ると、美少女が「ここにある」と革袋を投げた。


 悠斗が袋を拾い、中を確認した。


「よし、金戻ってきた!」


 彼がニヤリと笑い、美少女を睨んだ。


「でもよ、小太刀まで盗む気だったよな? しつこい泥棒にはお仕置きだ!」


 彼が呪文を叫んだ。


「我、佐藤悠斗、深淵に潜む超ヤバい南蛮の精霊を呼び起こし、古の禁忌をぶち開ける! 臭いの使者よ、この泥棒に超絶迷惑な呪いをぶちかませ! 腋臭で耐えられなくなる衝動をぶっ放せ! スーパー・スティンク・カース・オブ・ド変態・アゴニー!」


 紫のモヤモヤが噴き出し、美少女を包んだ。


「うっ!? 何!?」


 彼女が鼻を押さえ、蹲った。


「うわっ、臭い! 腋が!?」


 美少女が悶え、部屋に異臭が漂い始めた。


「うぐっ、たまらん! 逃げる!」


 彼女が窓から飛び出し、逃げ出した。


「よっしゃ、撃退成功! これで忍び込めねえだろ!」


 悠斗がニヤリと笑い、十兵衛が「貴様、また下品な術を!」と怒鳴った。


「下品でも効きゃいいだろ!」


 綾音が「ふふ、臭いのも面白そう!」と笑い、悠斗に近づいた。


「ねえ、私にもかけてよ!」


「うわっ、お前、変態すぎる! やめとけ!」


 悠斗が後ずさり、十兵衛が「貴様ら、ふざけるな!」と刀を向けた。


「落ち着けって! とりあえず金戻ったし、寝ようぜ」


 三人は布団に戻り、宿屋に静寂が戻った。


 だが、町の裏では豊臣残党が動き始めていた。


「妖術使いが水戸にいるだと? 綾音の裏切りも許さん」


 黒装束の男たちが刀を手に、復讐を企てる。


 悠斗の魔法が新たな波乱を呼ぶ。



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