生徒会長の楽しみ
教室を出ようとした私の前に、**氷室玲奈**が立っていたはだかった。
「——少し、話しませんか?」
静かな微笑み。 でも、その瞳は鋭く、私を見透かすような光を立っていた。
氷室玲奈。学園の生徒会長にして、容姿端麗、成績優秀、礼儀正しく気品に満ちた完璧美少女。男子生徒の憧れでありながら、その美しさと威圧感で誰も近寄れない高嶺の花。
あんな彼女が、なぜ私に声をかけたのか。
「……私に何か用ですか?」
「あら、ちょっと気まずくてもいいわ。少し、話したいだけよ」
玲奈は私の一番を待って歩き出す。その姿は自信に満ちていて、まるで私がついてくることを確信しているようだった。
そして向かった先は——生徒会室。
高級感のあるインテリアに、整然と並んだ書類や書棚。
玲奈は窓際のソファに腰を収録、私に向かいの席を勧める。
「会話の授業中に、あなた……何かしたでしょうか?」
「……何の事ですか?」
私はとぼけるが、玲奈はゆっくりと脚を組み替え、考えるように微笑んだ。
「ペンが浮いていたわ。あなたの視野の動きと完全に一致していた……偶然、言われないわよ?」
心臓が跳ねる。見られていたのか。
「それで……今のあなた、とても魅力的です」
玲奈が姉の前に身を乗り出す。ほのかに香る甘い匂い。完璧な美貌を持つ彼女が、とても近くに——。
「ねえ、天城くん。あなた、何者なの?」
玲奈の声が耳元に囁くように聞こえた。涼しい瞳は私を頑張って見つめていた。
「もし……私にだけ教えてくれるなら、あなたに協力してあげてもいいわよ?」
玲奈の指がそっと思い出に触れられる。
「あなたの持つその力——私にも見せてくれないのか?」
玲奈の唇がわずかに開き、熱を伸ばした吐息がかかる。
これは——試されている。
俺の秘密を暴こうとしているのか、危惧しているのか。
「……どうか?」
玲奈の微笑みは妖艶で、どこまでも圧倒的な自信に満ち溢れていた。
私はこの受け付けを受けていても————当然、断むべきなのか。