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わかる人はすぐにわかる殺人鬼の正体

作者: 奈宮伊呂波

こんにちは、奈宮伊呂波です。謎解き小説として今回の小説を書きました。推理というよりは、今夜はナゾトレやレイトン教授と同じような思考が求められると思います。

よく読んだらわかるように作りました。よろしくお願いいたします。殺人鬼の正体が分かったなら、感想コーナーに記入をお願いいたします。


※23時05分に致命的ミスを見つけたため、更新しています。申し訳ございません。


追記 当初の「殺人鬼の正体とその理由を考える」方針は知人から「分かるわけない」と言われたので今後殺人鬼の正体を提示した上で「理由を考える」ことを命題にします。よしなに。

 次のニュースです。

 連日、市民に恐怖を与えている連続殺人について警察から公開された文書をお伝えします。

 今回、初めて公開される情報です。


  ◆ ◆ ◆


 世間を震撼させた連続殺人鬼がいる。

 子供や女性だけを狙う、悪徳極まりない殺人鬼だ。

 捜査が開始されてから二カ月。この間に十五人もの犠牲者が出ている。これだけの犠牲者を出して、ようやく殺人鬼に関する情報提供者と接触することができた。

 その情報提供者との会話を公開する。

 だが、気を付けてほしいことが一つだけある。

 情報提供者に様々な質問を投げかけるが、確定的な情報を言わなかった。なぜなら、情報提供者と殺人鬼が顔見知りであり、彼の家族を人質に取られているからだ。

 もし喋ったら、妻(夫)と子供を殺す。

 そう脅されている。

 殺人鬼の特徴でさえ、供述することができないそうだ。

 彼と言ったが、情報提供者が男性か女性かも公表してほしくないらしいので、便宜上、情報提供者のことを「彼」と呼ぶ。

 この会話を警察内部で考察してみたが、どうあっても殺人鬼にたどり着くことができない。

 もしその正体がわかったものがいるのなら、お近くの警察署に連絡をお願いいたします。

 以下がその会話である。


 最初に、あなたのお名前をどうぞ。


「私の? 言うわけがないでしょう。もしこれが彼か彼女に知られたら私の家族がどんな目にあうかお分かりでしょう?」


 失礼いたしました。質問を変えます。この中に殺人鬼がいますか?

 そう言って、五枚の写真を彼に差し出した。

 捜査の中で、殺人鬼であると容疑がかけられている者たちだ。


 一人目、加納譲二。

 大阪府在住の大学生だ。紅茶を嗜んでいる。幼いころから他人に暴力を振るうことが多く、大学でも危ない噂をいくつも確認した。学校の成績がいいらしい。ここ数カ月、大学からも実家からも行方を眩ませている。

 赤い髪の毛が特徴だ。


 二人目、本郷絵麻。

 青森県在住のフリーターだ。ユーチューブをよく見ていて、特に猫の動画が好きなようだ。年齢43歳。学生のころ痴情の縺れで男性を一人殺害している。彼女もこの数カ月の間、勤務先に現れていない。連絡もなく、ある日途端に来なくなったらしい。

 猫のように鋭い目が特徴だ。


 三人目、美野良太。

 東京都在住の会社員だ。年齢35歳。テレビゲームを好んでよくしている。オフ会の経験もあるようだ。酒癖が悪く、警察沙汰になることも多々あった。記録を見る限り、ここ数年で落ち着いたようだ。彼もここ数カ月、姿を消している。だが失踪する前日、「当分、会社にゃ行けねーや」と仲の良い直属の上司にメールがあった。

 酔って転んで、右側の犬歯が二本無い。


 四人目、滝本昭雄。

 大阪府在住の無職だ。年齢が79歳とかなり高齢のため、無職という表現が正しいか疑問である。年齢に対して、運動能力が高い。引っ越し業者の実作業を定年まで勤めていたためだろう。公園で近所の子供たちと野球をする姿が地域で有名だった。ここ数カ月、その姿が公園にないことを密かに悲しんでいる住民が多いという。

 春夏秋冬、いつでも虎の野球帽を被っている。


 五人目、夏目宏樹。

 愛知県在住の中学生だ。クマのぬいぐるみを大切にしている。大人しい性格で学校でも目立つこともないようだ。先生からの評価も「よく笑っている子です」という当たり障りのないものだ。だが家庭環境が悪く、父親から暴力を振るわれていた。その情報を前提に関係者への聞き込み記録を見てみると、彼の異常性が浮き彫りになる。学校の誰もそのことを知らなかったからだ。彼も他の四人と同じようにここ数カ月、誰にも会っていないようだ。

 純血の日本人だが、目が緑色であることが特徴だ。


 これら五人の写真を見て、彼が言う。


「いるかもしれませんし、いないかもしれません」


 それじゃ困ります。せめてイエスかノーかくらい。

 そう言ったが、同じ答えが返ってきた。殺人鬼に繋がる情報を口にすることがどうあってもできないようだ。

 次の質問です。どのようにして殺人鬼の正体を知りましたか?


「公表されている被害者の一人を手にかけているとこを見ました」


 決定的ですね。殺人の動機を知っていますか?


「言えません。少しでも言うと、自分が言ったと知られてしまいます」


 わかりました。次の質問です。あなただけが殺人鬼の正体を知っていますか?


「そうです。私の知る限り、私だけです」


 有力な情報です。次の質問です。殺人鬼の正体、その人物といつ最初に出会いましたか?


「十年ほど前です」


 なるほど。どういう状況でしたか?


「言えません」


 二人きりだったとか、大人数いたとかそう言うのもですか?


「大人数でした。ただ向こうがこちらを認知していないかもしれません」


 どこで?


「言えません」


 室内か室外かだけでも。


「室内です。これ以上言えません」


 わかりました。その時、彼、彼女にどういう印象を受けましたか?


「言えません」


 明るい性格か、暗い性格かだけでも。


「言えません」


 わかりました。次の質問に行きます。

 それから、彼に殺人鬼についてあらゆる質問をぶつけた。殺人鬼の住所、特徴、年齢、過去の経歴、性格、社会的地位、人間関係、趣味嗜好、癖、トラウマ。

 そのすべての質問に対して、曖昧な答えしか得られなかった。

 もうこれ以上聞くことがない。そう思った時、すでに質問開始から七時間と九十分が経過していた。

 取り調べをしていた私を含む全員に疑念が浮かび上がる。

 目の前の人物が情報提供者じゃないという疑念。警察をおちょくっているのか、殺人鬼の手の者で、捜査をかき回したいのか。

 最後に質問させてください。

 本当に殺人鬼の情報を提供するつもりがありますか?


「あります」


 ◆ ◆ ◆


 以上が会話の記録です。

 えー、警察によると、会話の記録を元に情報提供者である本人がこの文書を編集しており、「わかる者は一瞬でわかる」と情報提供者が述べているようです。

 五人の中に連続殺人の犯人がいるかどうか、それすらもわかりませんが、もし今回の文書から犯人の正体を見抜けた方がいましたら、すぐにお近くの警察に連絡をお願いいたします。


 ◆ ◆ ◆


 事件とは何の関係もないとある男は一人そのニュースを見て、コーヒーを一口啜った。

 廉価品の味を堪能した後、ボソリと呟いた。


「三人目の男が犯人だな」


 男は警察に連絡することはなく、情報提供者からのメッセージを理解したという感慨に一人耽った。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 七時間と九十分が経過していた と書いてありますが、つまり八時間と三十分ですよね?これって真相に関係ありますか?
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