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約束してね。恋をするって  作者: 和泉 利依
第一章 遭遇
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「何?」

「着てなよ。天体観測で防寒は必須。そんな薄着じゃ風邪をひく」

「平気」

「藍が平気でも、見ているこっちの方が寒々しいの」

 ぶっきらぼうな陽介の言葉に、藍が顔を向けた。長いつやつやとした黒髪が、藍の動きに合わせてさらりと肩を流れる。

 薄闇の中に浮かぶ無表情なその顔は、まるでなめらかに仕上げられた彫刻のようだ。

(藍って、きれいな顔してんだな)

 陽介は、ついまじまじと藍の顔をみつめてしまう。


「ありがとう。陽介君」

 そんな陽介に、藍はかすかに目を細めて口角をあげた。

 ほんのわずかな変化だったが、その仕草は驚くほど色っぽく陽介の目に写った。

 彫刻に、魂の宿る瞬間。陽介はその瞬間を見てしまった、とすら思った。


「……陽介君?」

「あ、いや、えと、藍は、ここまでどうやって来てんの?」

 つい見惚れてしまった陽介は、照れ隠しに全く関係のない話を振った。


 下からのぼってくる道は一本しかなく、しかもこの場所から見えるため、明かりがあれば気づくはずだ。陽介が来た時から、霊園の駐車場には他に自転車も車もなかった。


「この向こう。私の家があるの」

 藍はそう言って、先日藍が消えていった道の先を示した。

「へえ。行ったことないけど、この道って裏に出られたんだ」

 陽介が視線を戻せば、藍はまた熱心にレンズを覗き込んでいる。


「見えない」

「はずれちゃった? ちょっと待って」

 陽介は、一歩下がった藍の代わりにレンズをのぞきこむが、さっきまで見えた光点はもうなかった。

「んー、どっちにしろフォーマルハウトは消えちゃったな。他のも何か見てみる?」

 こくり、と藍がうなずいた。陽介は一度空を見上げると、望遠鏡を動かして上を向けた。

「ほら」


 のぞきこんだ藍の目が、わずかに大きくなるのを陽介は見た。そして一度空を見上げてから、もう一度覗き込んだ。

「アンドロメダ星雲?」

「そう! よくわかったな」

 陽介は、息を弾ませて言った。

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