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閑話 パメラ・ラーナ・ブリュイエル

 暗い部屋の中でパメラがフードをかぶった姿で、紙に殴りつけるかの様に何かを書き込んでいる。


「可怪しい!この辺りから話が間違っているんじゃないの!!あーもう、、きっちり 思い出さないと。この話は私が作ったものじゃないから全部は分からない。こんなことだったら、もっとちゃんと見ておけばよかった。本当に忌々しい。そもそもゲームのセオリーはヒロインが1人に、 複数のヒーローでしょ!!」


 そこまで叫んだパメラは、自分の前髪をグシャグシャと掻き上げ、血走った目を見開く。淑女らしからぬ仕草は、リュリアール皇国での彼女の姿を粉々に砕くに等しい姿をより闇に浮かび上げた。


「攻略対象者が登場して、 どれを攻略するかで ストーリーが分岐して進んでいくようになってるはずでしょう?!それを根本から覆すとかってありえない!こんなことだから部長から効率が悪いって却下されるのよ。そんな駄作ストーリー回しが、 何ここに来て本当に鬱陶しいなんて!!結局 どいつががヒロインなのか全くわかりゃしないじゃない!!挙句にどうしてゲームは続いてるのよ。卒業して結婚して、今度こそ上手くいくってなったら、またバレて!なんで転生しないのよ!!」


 そこまで独り言を叫び散らした パメラは、書いていた紙を乱暴に丸め、金色に輝く髪を湛えた頭を両手で抱えた。


「全然終わらない。一つも終わらない。いや、毎回終わってしまうのに何一つ私が幸せになれない。 自分で作った話だから、最後はハッピーエンドでしょう?どうして毎回うまくいかないの!もう。これは私のせいじゃない。今も私のせいじゃない。全部結局、あいつらのせいなのよ !いや あの女のせい!」


 さらに大きく 吠えると、パメラは机の上にあるものをガシャガシャーンと全部落とした。座っていた椅子が倒れて、破壊音が響く。

 あたりには 誰一人おらず、暗い室内の中は目を凝らせば 、どれも豪華な 調度品。

 それはもちろん リュリアール 皇国ならではの装飾ではなく、異国情緒にあふれた豪華な 調度品だった。

 今、パメラがいる場所が リュリアール皇国ではないことを物語る。


「悪役令嬢でもダメだったなら何が正解なのよ!このゲームは、メリーエンドなの?! トゥルー エンド!?。このストーリー じゃ誰がヒーローかもわからないし、いや 攻略対象が多すぎて話が破綻しているのよ!本当にろくでもない。どこまでも私の頭を悩ませるなんて、あのバカ後輩が!ちゃんと 思い出さないと世界が終わらない。このストーリーの最後は一体どうなってんのよ!?企画書だけは目を通してたはず。とにかく ヒロインは誰? 」


 パメラは倒れた椅子をそのままに、机にもう一度紙を広げると、記憶を探る様に片手を頭に当てて考えている。

 暗い部屋には侍女らしき姿はなく、パメラの顔を壁ランプの灯りが、パメラの妖艶なる素顔を照らす。


「操作するヒロインが固定キャラじゃなくて、好きに選ぶことが出来たのは間違いない。ただヒロインは全部ピンクとかオレンジとかグリーンとか 、カラフルなパステル ヘアの設定 だった。そして 悪役令嬢は間違いなく金色の髪、ゴールドヘア 。落ち着いて、落ち着いて 思い出すの。そう、例えばヒロインを選ぶと、そのヒロインごとにヒーローの設定があったはず。」


 イライラとした顔で、パメラは親指の爪を噛じる。反対の手では、何度も拳を机に打ち付けていた。


「辺境伯の養女、薬師伯の伯爵令嬢。 商家を隠れ蓑に都で暗躍する革命家の娘、あと修道院から都に教育を施されるためやってくる聖女候補。平民 まがいの田舎の令嬢もいた。 男爵に伯爵、平民に聖女!! 全員 パステルカラーの髪色だから、直ぐにわかるって思ったのに、何よ!!都の学園にはバカほど、同じ様な娘がいたじゃない。あの中で私を追い詰めるような事をしそうな女達は尽く排除して、悪役令嬢断罪フラグはブチ壊したのに!!」


 ふと壁に掛けられた等身大の鏡に自分の姿が映っている事に気が付いたパメラは、まるで他人の身体を触るような仕草で、稀に見る美貌と、豊満な身体の曲線に満足気な表情を見せた。


「悪役令嬢とはいえ、傾国の美女なのよ。誰がヒロインになってもおかしくないゲームなら、余裕で勝てるキャラ。でもセオリーは庇護欲そそる天然キャラ。よりにもよって一番権力のあるヒーローがあんな戯言を言うなんて!!私の身に覚えのない話をした時点であれは間違いなく ヒーローと ヒロインとが接触しているフラグでしょうが!!この!!」


 そのままパメラは自分が映る鏡を、倒れる椅子を持ち上げ打ち割った!!派手な音が暗闇に響いて、鏡がバラバラと崩壊する。


「私には今まで自分が作ったゲーム4回分のストーリーがそのままあるのよ!だから、ガラテアが、このゲームに現れるなら好都合!!ガラテアの記憶!! あれをなんとかして手に入れないと!わざわざ 田舎まで危険を冒してまで行ったのに、ありえない! 乙女ゲームでああ い う バトルチックなのを入れること自体が非常識だっつーの!! 流行りに乗っかり過ぎて反吐が出るわ!かろうじてエンルーダの作り込まれた環境 シナリオを覚えていただけでも御の字だと思わないとってわかっていても、バカみたいにいるヒロインとヒーロー候補が本当に邪魔くさい!!このゲームの攻略が見えてこないのは、そのせいなのよ!!」


 パメラは書いていた紙を小さく畳むと、其れを異国情緒溢れる装飾品の1つに入れた。



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