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砂嵐がみせる橋より後の光景

『死人の関所橋』で起きた事は、砂嵐の音を聴くニアにはもう、幻だったのではないかとさえ思える。


 考えてみれば4回の前世に於いて、全て断罪死を強いられた記憶を持つニアにとっては、今世で初めて作った友人がエナリーナだった。


(こんなところに、、どうして貴女がいたの。)


 本来ならば貴族学園を卒業して、幼馴染の婚約者と結婚をしていたはずの彼女なのだ。


(それに、、)


 産褥の疲労も、一時的な睡眠で僅かに回復したニアはエナリーナに促されるまま、自分が先程産み落とした赤子の口に乳房を含ませている。


 ニアは、胸の上で頻りに口を動かす赤子を見つめて、思わず呟く。


「子供は大丈夫、、ということなの、、」


「何か言った?ニア。」


「、、、不思議に思って。自分の子供だと大丈夫なんだなって。」


「ああ、聖紋の発動のこと?そうなのかも。でも、わたしがニアの身体を拭った時でも何も起きなかったわね。」


 まだ自分で抱けないだろうと、エナリーナがニアの胸元で赤子の身体を支えながら、ニアの呟きを拾った。


「男だと発動するとか、、」


「わたしが修道院にいれば、何か聖紋の事も聞いていたかもしれないのだけれど、、さあ赤ちゃんも満腹みたいね。」


(結婚どころか、何時の間にか修道院に入ることになっていたのねエナリーナは。)


 テントの外のから聞こえる砂嵐の様子は、一段と激しくなっていて、偶に入口から砂が中に入り込んでくる。


「ニア、今の内に寝ておきなさいな。赤ちゃんも眠ったわ。」


 エナリーナはそう言うが、テントにはベッドやテーブルが在るわけでもなく、移民ならではの全て布で作られた日用品があるだけ。

 ニアも砂の上に敷かれた床布の上にひいた敷布に、只横たわっているだけなのだ。


「砂の上だけ有難いのよ。でなきゃ、地面だと身体が後から痛くなるんだから。」


 おおよそリュリアール貴族の令嬢が体験するはずないアドバイスをして、織布に赤子を包み直し、自分の身体に括り付けたエナリーナがニアに告げる。


 エナリーナの行動は、もしもテントが嵐で吹き飛ばされた際の用心だろうとニアは頷いた。


「、、ありがとう。」


 ニアは静かに目を閉じる。


 特に眠る為ではない。あれからの自分の考えを纏めるために。






 ニアが辺境の領土エンルーダの『死人の関所橋』から男達に連れ去られ着いた先は、『 山の(もの)』が根城にするエンルーダ山脈の山合いの丸太小屋だった。


 リュリアールの皇都シャルドーネにある貴族学園へ通うまで、ニアはエンルーダ領で 義父アースロや義兄イグザムからのエンルーダに関する教育を受けている。


(自領を守る為に、 少数山岳民族の『山の(もの)』と約束を結んでいるって聞いたのに、あれは『自領戦での橋落し』だけだったのは、正直驚いた。)


 ニアは深く息を吐いて思い出す。


(彼等がひどく自由で、残忍な面も持つ山の民族だということは、身に沁みてわかったのだけれど。)



 思い出してみれば何の事は無い。

 条約めいた 約束を結んでいるとはいえ、 エンルーダ領土と山脈の境界になる麓では度々、山の者達との諍いが起きていると義兄イグザム からは、聞いていたのだから。

 そんな山の(もの)の男達の所業の中で、エンルーダ領主であり義父・アースロの頭を悩ませていた1つが、山脈に近い位置にある辺境修道院の襲撃だったはず。


(確か、修道女を連れ去るという話だった。もしかしたらエナリーナも、そうなのかもしれない。)


 とにかく、、


 エンルーダの『死人の関所橋』から、疾風の如く攫われたニアが、2人の『山の(もの)』に抱えられ運ばれた先は木造の小屋だった。

 

 橋の上から目隠しの上、頭に袋を掛けられていたにニアは、道中何処を通ってきたかなど分かるはずもなく、無造作に小屋へと転がされた。


「おい見ぃろよぉ、こいつぁ随分上玉な女だぞぉ。 売れば、ええ値にぁなるんじゃねぇか!!」


 目隠しと袋を剥ぎ取られ、ニアの目に映る男の身なりは、エンルーダの衣装とは全く違うもので、獣か魔獣から狩り取った毛皮を服に加工している。


「それにしても、こぉいつエンルーダの民じゃあないんだろぉなあ?巫女みてぇだったけどぉよ。」


 もう1人の頭には、動物の骨を使った派手な飾りが揺れていた。。


「そりゃお前ぇ、自領戦?とかいうのをしている時にぃ、あぁんな橋の上にいたんだぞぉ?エンルーダの人間じゃないだろぉよ?。他所もんだぁな。」


「なぁら約束違いになんねえよなぁ。 また頭にどやされるのはぁ、たまったもんじゃないからよぉ。」


 一見ひどく原始的に見える服装だが、彼等の筋肉隆々なる体付きと相まって圧力が凄い。ニアは男達の様子に身を縮ませる。


「しっかし可愛いなぁ、お前ぇ。 」


 ニアがガタガタと震えているのを見ると、男達たは、間を詰めてニアの顎に手を掛ける。


「おぉ!ずっと震えとるぞぉ。 そりゃ仕方ねえよな、こんな可愛らしい嬢ちゃんが俺たちみたいな『蛮族』っていうのかぁ?前にしてなあ。次の人買いは、何時に来るんだっけなぁ? 」


 そう言う男は急に、頭の上から爪先までを舐める様な視線で見てくるから、ニアは自分の腹を抱えた。


「なぁ、この巫女んことを 追いかけてきてたぁ、あんの男。なんだかぁ見たことないかぁ? 」


 もう一人の男も、ニアの顔を覗き込むと、


「さぁなぁ、俺は知らねえよぉ。 いや、あれはもしかしてエンルーダぁんとこの王子か? そぅなると、ちょっとやべえかなぁ。お前一体何もんだよ。 」


(ああ、答えようにも、すでに捨てたエンルーダ領主の養女なのに、、)


 今となっては自分を保護してくれていたグリーグでさえ、屠られてしまったニアは言葉が出ない。


「わ、わたし、隣国に。 、、逃げようと思って。 」


 只、そう言うだけがニアには精一杯だった。 それを嘲笑うかに、男がニアが閉じている両腕を広げさせた。


「あぁ、お前何も知らねえんだなぁ。 こん山ぁを超えた向こうはぁ、ただの砂漠だぁぞぅ? 」


「そうだなぁ、キャラバンが来て 俺たちに 物を売ってくれる。そぉんな奴等が居るだけの場所だぞぉ?」


 同時にもう一人の男が、ニアの両足に手を這わせてくるのを、ニアは足をバタつかせて払いのける。


「お前さん巫女だろ?身体はキレイなのかぁ?売る前に味みさしてもらってもいいよなぁ。 橋ん男のモンだってよぉ、知るかなあ。」


「ちょっと待てよぉ!お前が先なのか?俺の方が先だろうがよぉ、じゃあ2人でやっちまうか? 」



 ニアの顔色が真っ青になる。 彼等はやはり自分を襲うつもりだ。


 例え今自分が妊娠している。身だとこの男たちに伝えてもそんなことは鼻にもかけず、自分を犯すような輩だろう。


「おいおい逃げようとしたって無理だぜぇ。ここは見張り小屋だけでぇ、他のやつらが来たとしても同じ。 せいぜい、俺たちの獲物を他のやつらが奪うだけでな。」


 ニアは震えながらも何かないかと探す。


 1人の男が腕を取り、もう1人の男がニアの両足を床に押さえつける。


 丸太小屋の中で日は傾き、誰かに助けを呼ぼうにも来ることなど夢のような事はは起きそうにない。


 ニアは、ただ大声をあげた。


「五月蝿なぁ!いうことを聞けやぁ。」


 ニアが着ていた墓守りの装束は無惨にも破られ、筋肉質な合体のいい男2人に羽交い締めされれば、ニヤニは成す術もない。


 悲壮な思いでこれから行われるであろう凌辱に耐える為にも、歯を食い縛る。


と。


 男がニアの首筋をべろりと舐め上げ、そのまま胸を鷲掴づかんだ時。


「うわなぁ!!あっち手がぁ? !」


「どうぉしたぁ? !」


 1人の男が揉みしだこうと掴んだニアの胸から慌てて手を外す! 其の手が離れると周りに酷く、肉の焼かれたような匂いが充満した。


「うわぁ、なんだー!!。こりぁ? !!


 男が自分の手の平を、相手の男に見せると、


「お前焼けただれてるじゃねえか皮膚が。まるで毒にでも当てられたみたい。じゃねえか?!」


 もう一人が驚いて冷やせと、叫んでいる。

 目をぎゅっと瞑っていたニアが 瞼を開けると、手を抑えながら男の1人が小屋を出ていくのが見えた。


「お前一体何か体に塗ってるのかぁ?」


 もう1人の男は? ニアを胡散臭そうな目で一瞬見ながら。


「だったら体は触らずぅに、やることだけやらせりゃいいや。 どうせあいつも? 帰ってくるまで時間があるから、先に俺が味見しといてやるよ。」


 というが早いかニアの両足を男は大きく体で開いて、そそり勃つ己れの断根をニアの中へと沈めようとした。 その瞬間。


「ギア?!!痛い熱い!!」


 男の声が丸太小屋に響く。

沈めようとした腰を慌てて抜き去り、自分の股間を両手で抑え付けている。


 ニアは何が起きたのか分からず呆然と男のなりふりを見つめていた。


 絶句して言葉を失う。 型の男の見る視線の先はさっきまでニアをの中に自分の段階を埋め込もうとしていた男の。

 股間に! 釘付けになる。 いや、もうその先を見て思わず吐き気を催した。


 その男の股間にある筈のモノが、まるで焼け落ちたみたいに無くなり! 皮だけがぶら下がっていたのだ。



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