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貴方は幼馴染に吐露する

 リュリアール皇国・皇太子ウイルザード・アウェ・リュリアールが、


 宰相の嫡男ルイード・ラーナ・ビマルクと、筆頭公爵令嬢パメラ・ラーナ・ブリュイエルに出会ったのは5歳の時。


 彼等は後の次代にリュリアール皇国を担う世代として、大人達に引き合わされた。

 

 始めは政略的な意味合いを含んだ出会いであったが、当の本人達は同い年の幼馴染として仲を育んだ。

 

 只、其頃のウイルザードは今とは違い、引き合わされた最初から、パメラの事を冷ややかな眼差しで見ていた様にルイードは記憶する。


 ところが、そんなウイルザードの視線が変わり、ウイルザードはルイードに、幼子とは思えぬ宣言をしてきたのだ。


 「ルイード、俺は将来パメラと結婚する。もう間違えたくないんだ。」


 5歳とは思えない思慮の深さを当時から見せたいたウイルザード。


 パメラが席を外した庭園で、今思えば、5歳が浮かべる表情なのかという苦笑を浮かべ、ウイルザードはルイードに言い放った。


「当時の殿下は、ある日を境に、急にパメラを見る様子が変わったと感じたよ。あれは、何か理由があるんだろ?」


 謁見の間での皇帝とブリュイエル公爵との話し合いの後に、ふたたび執務室に戻る回廊でウイルザードに、ルイードが聞いてきた。


「良くわかるな、、実は3人で会うようになってから1年程過ぎた頃か、パメラから悪夢を見る様になったと、相談された。」


 思い出すように目を細めたウイルザードの横顔をルイードが見つめる。


 謁見の間でのウイルザードは全く普段の姿で、当時、パメラにウイルザードがある誤解をしていた事を問うと、パメラの様子に異変が起きたと説明をしていた。


「1年ということは、6才の頃だな。もしかしてウイルはもう前世の記憶がその頃にはあったのか?」


「その通りだ。今思えばパメラもそうだったろう。相談されたのは、夢の中で『髪の色が明るい女』に会うと、断罪されるんだと。その話を聞いて、覚えがあった。前世で俺の婚約者は必ず冤罪で断罪される。それは何時も俺の手でだ。だから、相談をされて確信した。パメラは転生した婚約者だと。それが、間違いだった。」


「それは、最初からパメラの、計画的な『匂わせ』だったってことだな?」


 ルイードがウイルザードに確かめると、ウイルザードが頷く。

 そしてウイルザードの顔付が鋭くなった。


 長い回廊を戻り、再び皇太子宮にある執務室に戻ったウイルザードが、深夜だからと、侍従に休むよう指示した。


「夢の相談をされてから、明らかに前世のエリザベーラなら知っている事や、仕草をされた。何より、その頃からパメラが笑わなくなった。そんな風にパメラがなったのは、前世の俺のせいだと思い付いた。」


「それは、、ウイルが何度も彼女を殺したからという事でか?」


 侍従を返せば、茶の用意はルイードの役目。

 さすがに酒を用意する気にはなれない。


 見るとウイルザードの手が握り込まれ、どこか震えているのだから。


 思い出すのがよほど辛いのだとルイードは感じ、ルイードはウイルザードに熱い茶を勧めた。

 

 謁見の間では、

 ウイルザードは平然とした様子で、パメラの異変を見させる為にガラテアを呼んだところ、パメラが公爵家から連れて来た側使えの女が乱心と報告。


 ガラテアを古代魔道具の小刀で殺傷したと同時に、発動した古代魔道具に意識を取られている間に、パメラが消えたと、説明している。


「何度も断罪される内容を、パメラが話したんだ。そんな夢をみるのは、それが自分の前世なんだと分かったと。俺は自分の前世を思い出しているが、彼女は夢で見る方法でいるのは、辛い記憶だからだと推測をした。」


 ウイルザードは、ルイードが淹れた濃い目の茶に口を付ける。

 2人の間柄に毒見などは必要ない。


「それが、彼女の虚偽だと思わないのか?」

 

 ルイード自身も、己が淹れた茶を口に運んだ。


 さすがに皇宮の有る良質の茶葉とあって、口内に拡がる香りに癒される。


「聞いた時が6才だ。普通は考え付かない。何よりこれが一番間違いになったことだが、彼女はいつも俺の婚約者だった。婚約をしているのに、他の女に惑わされ、冤罪の婚約者を殺してしまう。」


「確かに、6才の時にウイルはパメラと婚約した。それで、パメラがウイルが探していた前世の婚約者だと考えたんだな。」


 再びウイルザードがルイードの言葉に頷いた。


 5才で引き合わされた、3人。


 結局6才の時に、ブリュイエル公爵の要望に皇帝が同意し、皇太子ウイルザードと、公爵令嬢パメラの婚約が発表される。

 

 以来、学園を卒業し1年の準備期間を置いて、この度の婚礼となった。


 その初夜に、寵愛していると自他ともに認められた婚約者が失踪。

 ブリュイエル公爵はウイルザードの説明に、蒼白になりながらも、疑いはしなかった。


「俺はこれまでの前世で、彼女を間違えて殺してしまったと分かった後に、彼女を追って自害しているんだ。だから、前世の事をパメラには分からない様に確認をしながら、彼女の恐怖心を拭いさりたかった。」


「ウイルは、何度も前世で、自死してきたのか、、」


 今世こそ間違わずに、自分の婚約者を幸せにしたいと行動してきたウイルザードの長き姿が、皮肉にもブリュイエル公爵に何の疑念も持たせなかったのだと、謁見の間でルイードは思った。


 そして何度も自死した過去を超えた話に、今世に賭けるウイルザードの覚悟をも感じる。


「何時だって愛していた。なのに、何故か婚約者を断罪することに俺はなる。それまでの前世を思い出すのは、婚約者を殺した後にだ。でも今回は違った。生まれて程なく、記憶が戻った。」

 

 とわ言っても、ウイルザードの言葉が無条件に受け入れられるわけではない。


 前世の話は勿論だがと、ルイードは頭を捻りながら唸る。

 

 これから真偽を公開するためにも、まずガラテアの骸から核石の記憶を読み、照合することを貴族議会は希望してくるだろう。



 ブリュイエル公爵令嬢の父親としても、公爵当主としても、真偽は当然の権利と、パメラの父親である公爵は受け入れた。


「だが敵の方が上手だったんだな。あと少しでこれまでの罪を償えると考えたのが、愚かだった。まさか、フローラが更に逆に転生しているなんて!」


 飲み終えた茶器を、やや乱雑に机に置くウイルザードの姿に、彼の苛立ちがいかなるものかルイードにもわかった。


 が、ふとルイードも飲み干した茶器を執務机に置く。

 近く、ガラテアの骸が精霊師の元に運ばれるだろう。



「なあ、ウイル。そこまで言っては何だが、騙されていたんだよな?急に分かったのは何故なんだ?」


 盲目までにパメラを信じていたウイルザードの夢が霧散した理由に行きつき、ウイルザードにルイードが疑問を投げ掛けた。


 





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