プロローグ 転生先が推しにkillされる役ってま?
どこにでもいる普通の女子大生琉堂藍夏は、とあるRPGゲームにどハマりしていた。その名も「英雄☆伝説」。藍夏がハマっていたのは英雄☆伝説の主人公キャラクターである、ライリー・ベルトリア、通称ライという男の子だ。英雄☆伝説は主人公の勇者であるライを操作し、異世界を探検していくだけのごく普通のRPGゲームである。
藍夏 『……ゲーム開設から1周年…!!お金貯めたことだし1周年のグッズでも買いに行こっ!!』
彼女がゲーム開設1周年を記念して運営が出したグッズを買いに行く途中だった。事故が起きてしまったのは。
彼女がグッズを買いに歩道を歩いていると、目の前の道路に小さな男の子が飛び出していた。彼女は慌てて助けようとして、転んで頭を打ち死んでしまった。ちなみに男の子は奇跡的に怪我がなく道路を渡れた様子。藍夏は意識があるうちに言った。
藍夏 『……1周年記念ライ様に会いた……かっ…た……。』
?? 『死に際にまで推しとやらのことを考えてるのかこの人間は。……こいつは寿命がもっとあったはずなのに我輩のミスで死んでしまったから転生でも神になるでもなんでもしてやろうかと思っていたのだが…。そのライ様?という推しの世界にでも飛ばしてやろうかの。』
突如として現れた気品のあるお姉さんは、藍夏の死体から白くもわもわとした気体を抜き、それを捕まえ何処かへ送った。微かに意識をもっていた藍夏は状況を飲み込めずにいたが、お姉さんが神様らしき人だということだけ認識した。
藍夏 『………ん…ぁあ……。……ココ…何処……??天国とか地獄とかに来たんじゃないの…??』
意識を戻した彼女がいたのは、薄暗い城の中だった。とりあえず周りを見渡す彼女だったが、人の声どころか生活音すら聞こえない。誰もいない廃墟の城。彼女はここに来たのは初めてのはずだが、何故だか知っているような気がする。
藍夏 『天国や地獄じゃないなら……転生…でもしたのかな??……それにしてもこの城、どっかで見たことあるような気がしなくもなくもない気が……。』
自分が感じている違和感を不思議に思いながら、彼女は城の外へと足を運んだ。城の外に出ると、その城の正体と自分が誰なのかを即座に理解した。彼女が転生した先はそう、彼女の愛用するRPGゲーム英雄☆伝説の世界の中だったのだ。その世界の中にて出てくる城は2つしかない。勇者ライの住む国ルルリアスの城、そして勇者ライの敵である魔王の住むデスリア城。彼女の眠っていた薄暗い廃墟の城はデスリア城そのものだった。彼女はすぐさま走り出し近くにあった池を覗き込んだ。
藍夏 『…っまって!!まって!!まって!!もしかして私、魔王に転生した!?!?』
覗き込んだ池に写っていたのは正真正銘魔王本人だった。オタクたるもの、転生ものの話はたまに見ていた彼女だったが、こんな展開は望んでいない。彼女は城の前で、大きく叫んだ。
藍夏 『…っっ勇者の仲間とか聖女に転生させてよ神のじーちゃんっ!!推しに殺されるって……!!それはそれでいいけども!!!うわぁぁ!!』