メイダスとの出会い
よろしくお願いします!
声をかけられたため俺は後ろを振り向いた。
そこには腰に剣をさし、鎧をつけている男がいた。
「君、こんなところで何をしているんだい?」
「毎日バットを振り続けていただけです。それ以外には何もしていないですね」
「そ、そうか。それと敬語で話さなくていいからね! それで、何のために木の棒を振っていたのかはわかわないけど、ここは危険だから長くいない方がいいよ?」
「危険? ここってそんなに危険だったのか?」
「ここは、ゴブリンやジャイアントベアーなど、危険なモンスターが沢山いるんだよ!」
「あー、ならさっき倒した熊が、ジャイアントベアーってやつだったのか」
「ま、まさか、ジャイアントベアーを倒したのか?! どうやって?!」
「このバットで倒したぞ?」
そういって俺はバットを見せる。
それをみた男は更に驚きを隠さないでいた。
「う、嘘だろ? そんな木の棒で倒せるなんて、ありえるはずがない!」
「俺が持っている武器はこれしかないからな。まぁこれが武器かって言われたら微妙なところではあるけど」
そもそも、バットはボールを打つもので、その為に作られた物のはずだし、俺だって倒せたことに不思議に思った。
けど今は俺のバットは最強だということで納得している。
「……取り乱してすまない。そういえば自己紹介をしていなかったね。俺はメイダスだ。よろしく頼む」
「俺は斎藤司だ。こちらこそよろしく頼むよ」
俺たちは握手を交わした。
「ツカサ君か。この後、何かする予定はあるのか?」
「いや、特にない。強いて言えばこの後も素振りをするくらいだな」
「そ、そうか。なら、この後街に行くんだけど、ついてこないかい?」
「いいのか? ならちょっと待ってくれ。今からそこの木を倒すからよ」
「木? 何で今その木を倒す必要があるのでかな?」
「何でって、丸太を加工してバットを作ってもらう為だよ」
「それって今必要な物なのか?」
「まぁな。今使ってるバットが軽くなってきてな。もっと重いやつが欲しいんだよ。丸太ならこれよりは重いの作れるんじゃないか?」
そもそもバットを木の棒って表現している地点で、バットを作れる人がいるとは思えないが、実物を見せればこれに限りなく近い物は造れるだろ。
「ま、まぁ可能だと思うけど、加工してもらうにもお金がかかるけど、お金はあるのかい?」
「それもそうか。お金がないとそもそも何もできないよな」
プロ野球選手だった時も給料がでてお金を貰っていたように、加工するにもお金がかかる事は当たり前だ。
その当たり前を、この3ヶ月程森で過ごしていたせいで、忘れていたなんて。
「なら、丸太を担いで行く事にしよう。それもトレーニングになるし。それに、丸太って売り物になるんじゃないか?」
「ま、まぁ買い取ってくれるところがあるけど、たいしたお金にならないよ?」
「トレーニングのついでに売るだけだから、別にお金なんて期待していないから大丈夫だ」
「……わかったよ。それで、どうやって木を倒すんだ?」
「どうやってって、それはこのバットで倒すに決まってるだろ。前から倒してたし、一発でいけるよ」
「ははっ、そうだよな。もう何があっても驚かないよ」
メイダスは何かを諦めたように、溜息を吐く。
メイダスが少し待ってくれている為、さっさと木を倒すか。
俺は木に近づき、バットでフルスイングする。
するとまたもや一発で倒すことが出来た。
後は長さを調節する為に、倒れた木をゴルフのスイングの要領で邪魔な部分を吹っ飛ばす。
その動作を隣で見ていたメイダスは驚いてはいたものの、熊を倒したといった時よりは驚いていなかった。
「終わった様だし、そろそろ街に行こうか」
「わかった」
俺は丸太を持って、メイダスの後をついていくのであった。
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