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新しい武器


 俺は鍛冶屋にやってきた。


「久しぶりだな……」


 鍛冶屋は剣士にとって欠かせない場所だ。

 剣は使い続ければ刃こぼれを起こすし、破損してしまうこともある。


 魔法やアイテムで治すこともできるが、それはただの一時しのぎに過ぎない。

 修理をするには鍛冶屋というプロの力が必要になってくる。


 アルクの町には特に腕の良い鍛冶屋がいた。

 そのため、剣聖である父上もわざわざこの町まで通っていたのだ。


 鍛冶屋の扉を開けると、中ではバンダナを巻いた少女が座っていた。


「いらっしゃい」


 少女は俺の顔を見ると、目を丸くした。


「よう。フラン。元気だったか?」


 俺は手を上げて、挨拶する。


 フランとはいわゆる幼馴染の関係である。


「なんだ、ラルフか」

「久しぶりに会ったのに酷いな。親父さんはどうした?」

「所用で出かけてる」

「そうか」

「剣の修理なら私がやる。それ以外なら伝言を聞いとくよ」


 どうやらフランは俺が実家から追放されたことを知らないようだ。

 残念ながら、俺には剣を修理している暇はない。

 というより、剣を持っていない。


「今日はフランに用があって来たんだ」


 俺は彼女にブレードベアの毛皮を見せた。


「これを鑑定してくれ」


 彼女は今年で十七。

 2年前に神様から貰ったのが、『鑑定』スキルだ。


「ギルドでやってもらいなよ」

「ダメだ。ギルドだと換金するとき、鑑定料が差し引かれる」


 彼女にやってもらえば、鑑定料はタダである。


「わかった。ちょっと待ってて」


 フランが毛皮を見つめると、両目がピカッと光った。


「ブレードベア。Aランク。これラルフが倒したの?」

「ああ。まあな」

「凄いな。もともと強かったけど、腕を上げたんだね」


 さすがの俺でも【剣悪感】がなければ、倒すことはできなかった。

 あのときだけは、外れスキルにも感謝している。


「他にも何かあったら、鑑定してあげるよ」


 他に何かあったかな。

 そう思いながら、ポケットを漁ると、中から小さい箱が出てきた。


「これも頼む」

「なにこれ? ペンダント?」

「貰いものなんだ。売るつもりだから、価値を見て欲しい」


 フランはまた『鑑定』を使用した。


 すると。


「……へ?」


 彼女の顔色が変わった。


「へっ、へっ、ふぇ、ふぇえええええっ!」


 どうしたんだ。


 いったい何があったというのか。


「フラン?」

「りゃ、りゃるふ。にゃに。にゃんなの……」

「落ち着け。まともに喋れてないぞ」


 フランはその場に、ぺたんと座り込んだ。


「これ、やばいよ」


 近年めざましい技術革新のあったシステナ王国。

 彼らが国家間の競争に打ち勝つために、秘密裏に開発していた新兵器。

 その名も『Pウエポン』。


「驚いた。まさか鍛冶屋の憧れ『Pウエポン』をこんな側で拝見できるなんて」

「へぇ。レアものか。凄い高値で売れそうだな」

「売るだって。バカ言うなっ! 売るぐらいなら、あたしに寄越せ」


 こんなものが新兵器とは。

 信じがたい話だ。

 だが、鑑定スキルを使ったのだから、間違いはないのだろう。


「兵器って言うぐらいだから、ボタンを押すと、極大魔法が発射されるとか」

「聞いた話だと、武器だって。剣や弓みたいな形をしているらしい」


 『Pウエポン』は武器のようだ。


 それは良いことを聞いた。


 俺は剣に代わる新しい武器を探していたところだからだ。


 ひょっとしたら、ミーナはそのことを察して俺に武器をくれたのだろうか。


 というか、普通の冒険者がこんなものを持ってるわけないよな。


 彼女は何者だったんだろう。


「ところで、これペンダントなんだけど、どの辺りが武器なんだ?」

「さあね。あたしだって、実物を見たのは初めてなんだ。詳しいことは分からないよ」


 俺はペンダントを振ったり押したりしてみたが、何も起こらない。


「それ貰いものなんでしょ? 何か言ってなかったの?」

「……そういや、言ってたな。キーワードがなんとかって」

「どう考えても、それでしょう」


 俺は思い出してみる。


「たしか、キーワードは『ハロー・アタック』」


 ぴこん、と高い音が響いたあと、ペンダントから声が聞こえた。


『認証を完了しました』


 ペンダントが光り出して変形し、武器の姿になった。


「これは……」

「ハルバードだね」


 身の丈ほどの柄に、斧の形をした刃が付いている。

 長斧槍と呼ばれたりもする有名な武器だ。


「おお。やった。剣じゃないぞ」

「……喜ぶところ、そこなんだ」


 これで剣以外の武器を入手できた。

 さっそく触ってみよう。


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