コルト平原
俺たちはダンジョン『コルト平原』までやってきた。
見渡す限り、草原が広がっている。
入口のところにシスティーがいるので、話しかけてみる。
「はい。元気になりましたよ。ケガしたら無理せずに私のところまで来てくださいね」
お約束のセリフと共に、体力を全快してもらった。
「あっ、ルアーナさん」
シーニャはシスティーの顔を見ながら言った。
システィーは職業の名前だから、ルアーナは本名ということだろう。
顔を見ただけで、本名が分かるのか。
姉さまは、マニアなんだろうか。
ダンジョンの地図は持っているから、牧場までの道は分かっている。
聞きたいのは、モンスターの生息場所だ。
俺はできるだけモンスターの出やすい場所へ行って、効率的に狩りたい。
地図を手渡すと、システィーがチェックしてくれた。
生息地は道なりに点々としている。
まっすぐ進んでいけば、それなりに遭遇できそうだ。
まずは、モード〈ノーマル〉に設定してある。
『コルト平原』のモンスターのマナ取得量を確認していこう。
「ガルルルッ」
グリーンウルフが現れた。
アルクの町の近くにも出てくるモンスターだ。
だが、こちらの方が強いだろう。
基本的には街道に出没するものより、ダンジョン内のモンスターの方が強い。
「手は貸した方がいいか」
「大丈夫。俺一人でやるよ」
数は三匹。このモンスターは群れることが多いから、複数で出てくる。
「ガルルルッ!」
俺を取り囲んで、襲い掛かってきた。
「ウインドスピン!」
緑色の斬撃で狼たちを切り刻んだ。
たいした強さではない。
レベル 12
マナ 1500/6000
一匹あたりのマナは100。
あと45匹を倒さないとレベルアップできない。
そう考えると少なすぎる。
では、今度はモード〈マナフル〉に変更してみよう。
これを使えば、マナ取得量が上がる。
「シーニャ。【甘い香り】を使ってくれないか」
「なんで?」
「もう一度、グリーンウルフを倒したいんだ。試したいことがあって」
シーニャの【甘い香り】はモンスターを引き寄せることができる。
ふらふらしてモンスターを探すより、この位置から動かない方がグリーンウルフは出やすいだろう。
甘い香りが漂ってきた。
少しすると、モンスターがやってくる。
「ガルルルッ!」
グリーンウルフだ。数は5匹。
また取り囲んできた。
「ウインドスピン!」
スキルを使用。緑色の斬撃が発生する。
だが、今度はほぼ効いていない。
狼たちが一斉に攻撃してきた。
奴らの中距離技、緑色の粘液が俺に降りかかった。
「……ゲホッ……ゴホッ」
みんなして顔に集中攻撃するから、粘液が口に入ってくる。
頭がくらくらして、吐きそうになる。状態異常の毒にかかっているようだ。
『マスター。覚えていますか? モード〈マナフル〉はマナ取得量以外の能力は全て下がるんですよ』
覚えてはいたが、ここまで差があるのか。
「リカバー! ヒール!」
シーニャが、何も言わなくても回復してくれた。
「やはり手伝った方が……」
シルカが出てこようとするが、俺は拒んだ。
これを倒さなくては、マナを取得できない。
「大丈夫だ。任せ……ウオッ……エホッ」
ふたたび粘液を降りかけてきた。また調子が悪くなる。
これではキリがないぞ。
「シーニャ……ゲホッ……お願いが……」
「リカバー! ヒール!」
俺を回復させたあと、さらに魔法を使った。
「パワーアップ! ガードアップ! スピードアップ!」
俺の攻撃力、防御力、素早さが、それぞれアップした。
「これなら、なんとか……ウインドスピン!」
スキルを使用するが、狼たちに耐えられてしまう。
下がり幅が半端ないということだろう。
『一匹ずつ、着実に行きましょう』
俺は斧槍で前の一匹を何度も刺した。
「ガル……」
よし。一匹を倒した。
そうやって、2匹、3匹と倒して行く。
「……これで5匹目だ」
全員を倒すことができた。
けっこう疲れた。
レベル 12
マナ 4000/6000
マナは2500取得できた。
一匹につき、500のマナ。
モード〈マナフル〉。マナ取得量の上り幅は5倍だ。
微妙だ。上がってはいるが、戦闘の方が厳しくなっている。
でも、これからのレベル上げには必要だろう。
少しずつ慣れていくことにする。
この後は、シルカにも手伝って貰いながら、モンスターを倒していった。
レベル 14
マナ 6000/8000
「あと、2000でレベル15だ」
『やりましたね。マスター』
ここまで来て分かったことは、シーニャとシルカはかなり頼りになるということだ。
シーニャは【甘い香り】でモンスターを引き寄せ、強化と回復の魔法で支援する。
シルカは戦闘では安定した能力を持っていて、不得意なことが少ない。
対して、俺は能力にムラがありすぎる。
モードチェンジなど関係なく、日によって好調不調がけっこうある。
二人から学ぶことは、わりと多いと思う。
花畑が見えてきた。
「見ろよ、シーニャ。花がいっぱいだぞ」
「……ミルク」
「白い花だけど、他に言うことがないのか」
「……ヨーグルト」
シルカが俺の肩を叩いた。
「やめておけ。今の姉さまは食べることで頭がいっぱいなんだ」
花を愛でる気持ちはないのか。
『マスター。あそこにモンスターが』
「……ん?」
本当だ。大きな芋虫みたいなのがいる。
「あれはケムジンだな。グリーンウルフよりはタフで面倒な奴だ」
「倒そう。シルカ。手伝ってくれ」
モード〈マナフル〉。シーニャに強化魔法をかけてもらう。
「ウインドストライク」
シルカがメイスで頭をぶつける。
あまりダメージはなさそうだ。
芋虫って体が柔らかそうなイメージがあるが、こいつは違うようだ。
「はあっ!」
さらに、メイスで攻撃を加える。。
俺も攻撃したいが、今の俺ではそこまでのダメージを与えられない。
シルカができるだけ削ってから、最後の一撃だけは俺がやる。
さっきから、そうしてもらっている。
ケムジンが糸を吐いてきた。
「ウインドスピン」
スキルで切り刻んだ。
シルカの相手にはなっていないな。
だいぶ削れてきたので、俺も参入する。
そして、ついに倒した。
レベル 14
マナ 8000/8000
うん。満タンになった。
「レベルアップ」
ぴこん、と高い音が響いて、ハルバードから声が聞こえた。
『ニナのレベルが2に上がりました』
レベル 15
マナ 0/10000
『スキル【フライト】を習得しました』
飛行できるようになるのか。
便利だが、練習しないと使いこなせないだろう。
それに、大会ではほとんど意味がなさそうだ。
*
牧場に行って無事にミルクを分けてもらえた。
俺たちは、食堂まで戻ってくる。
「たくさん動いたから、お腹、空いたね」
「そうですね。姉さま」
シーニャはスキップしながら、カウンターまで向かう。
すると。
「ヨーグルトください」
「シーニャちゃん、ごめんね」
食堂のおばちゃんが謝る。
「ヨーグルトはすぐにはできないの。ミルクを発酵させないといけなくてね」
「どのくらいかかるんですか?」
「約10時間」
「…………え?」
――バタンッ!
彼女は仰向けに倒れた。
「姉さまっ! 姉さまあっ!!」
ああ。また同じパターンか。




