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「さて、今から戦闘訓練の授業なわけだがお前らの相手は俺が昔捕獲して調教したコイツだ!」


アルゴが指を刺したのはスライムだった。


スライム

冥界、魔界共に最弱のファインド、あくまでスライムは種の総称であり厳密にいえばスライム系ファインドと呼ばれている。

目と口があるモノと無い者、不定形と丸形と様々種類がある。


今回のようにファインド達の中には調教したりすると人間社会で生きられるものも居たりするのだ。それを使ってファインドの戦闘に慣れさせるのは学園がよくやる手段の一つであった。野生のファインドを連れてきたり冥界へのゲートを人為的に呼び出すことも可能だがコストパフォーマンスは圧倒的にこちらの方が良いため侵攻などで捕獲したものは調教するよう促していた。


「……主人、この子達のトレーニングのために呼び出したの?」


「「「喋った!?」」」


だが人語を話すスライム系ファインドは存在しない。


「キレのあるツッコミ毎回ありがとう男子生徒諸君」

「主人、話を逸らさないでこの子達のトレーニングのためだけに私を呼び出したの?」

「ああ、そうだが?」

「分裂体だけでいい?」

「ああ構わない」

「じゃあ後で納豆と味噌頂戴」

「お前それ好きだよな」

「それこそが至高の味」


「あの先生いくら何でもスライムとなんて馬鹿にしていますの!」


そういったのはスピアだ。

無理もない最弱のスライムで全体の底上げを行うのだ舐められてると感じて当然であった。

だがアルゴの目は真剣そのものだった。


「言っとくがお前ら全員を相手にしてもこいつ………スファニーは強いぞ」

「それでも」

「スピア、一旦先生の言うことを信じてみましょう」

「ううぅアストリア」


彼らの年齢は17歳、多感な時期だ。一度は自分たちのグループから抜けたアストリアに思うところがあるのだろう。

仕事と割り切れないのが彼女、スピアが大人になり切れていない部分でもあった。その点アストリアは生徒を導くという星徒会長の観点から大人になっていたのだろう。授業中は授業中と割り切って判断している。


「まあモノは試しだ。今からラインを引くからその中で戦ってみろよ。スファニー全員に10体ずつ分裂体で相手してやってくれ」

「うんわかった主人」


ブロロロロ

という大きな音共にスファニーはどんどん分裂していきクラス全員分系260体の分裂体を出した。


「これはまさか………!」

「お、流石勉強熱心なアストリア気が付いたか」


「アストリアは何か割るんですの?」

「ええ、スピア。あのスライム系ファインドはおそらく女王種です」

「女王種?」

「去年の中間に出ていたの忘れてたんですか!スピア!」


女王種

蟻の女王のように大規模侵攻の発生源とも呼ばれるファインドの生成を行う種のことである。


鬼の形相とも言うべき顔でアストリアはスピアを睨みつけた。


「ヒィ————ッごめんなさいアストリア忘れてしまいましたわ」


この顔で本能察知したのか秒で謝るスピア。


「今日という今日は許しませんよスピアあれほど戦闘に関する授業のことは覚えておきなさいと言っておいたでしょうが!」


まさかのガミガミタイムが突入した。

スファニーやアルゴ、クラスメイト達もアストリアの形相があまりにも恐ろしすぎて口が出せずにいた。


―10分経過―


「もう今日は授業も推していることですしこのくらいで許してあげます」


「じゃあ気を取り直してラインを引いたから訓練始めだぞ」


生徒たちをバラけさせて訓練を開始した。


スピア視点


(アストリアには怒られましたけれどもたかがスライム私が遅れを取るはずがありませんわ)


スピアはそう思うが現実はそう甘くはなかった。


「【星座武装 スコーピオン・アロー】」


ダーツを投げるよう仕掛けるが既にスライムたちは攻撃態勢に入っていたのだ。

スピアにスライムたちがさらに分裂させ数の暴力で自分を取り囲み倒さんとばかりに特攻を仕掛けてきた。


「な!」


ダーツを次々投げていくが数が足りない。


「なら【星座武装 スコーピオン・アーチェリー】」


弓を振り回していくことで対処することに切り替えたスピアであったが


(これでは体力が持ちませんわ。一体後いくつ捌けばいいのか溜まったものではありませんわ)


それでも尚増え続けるスライムたちに悪戦苦闘していた。


「たしかにあなたの言うことは合っていましたわアルゴ先生。でも数が多すぎませんこと!!」


その数の暴力にひれ伏せざる得ないスピアであった。


アストリア視点


「流石アルゴ先生、私たちに足りないモノを教えてくれる」


私たちに足りないモノそれは乱戦への経験だ。

普通の授業では窮地に立たされることなどまず無いと言っていいほど過保護に育てられる。

このように乱戦をするのは初めての経験であったがライブラの鎧を身にまとうことで全方向からの攻撃に対応し数を捌いていた。


「あなた乱戦に強い。でも強敵に慣れてないね」


スファニーの分裂体が突然喋りだすと一斉に集まりドラゴン型ファインドになったではないか。


「なるほど、これならスファニ―さん一人で成り立つわけです。しかしそれを屈服させたアルゴさんは一体………」


そんなことを考えているとドラゴンは腕を振り下ろし攻撃してきた。


「そうですね。一旦戦闘集中してその後に聞くのが一番でしょう。【善行の測り】」


自分の重心を安定させて残像を残した高速移動をすることでその場から離れ避ける。

だがそれを予見したドラゴンは火球を口から吐き出しアストリアに直撃させた。


「ぐ!これが強者というものですか。アルゴ先生でわかっていたつもりでしたがまだまだですね」


圧倒的強者ではなく強者という見える目標にアストリアは心躍らせていた。


クレス視点


「やっぱり強いや」


一人スライムに滅多打ちにされているクレス。

立ち向かおうと霞がかった棍棒を顕現させてはいるものの一撃一撃が弱くスライムを倒すに至っていなかった。


「それでも!」


なお抵抗し勝つことにひたすら渇望する。するとスファニーは合体を起こしアストリアの時と同じように身体を変形させた。


そして現れたのは


「日天の獅子」


ヘラクレス十二の試練の一章が始まった。

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