7
「んで読んでわかった通りそれが今までの歴史なわけなんだがお前たちはそれを知って何がしたい?
まるで世界を定義するがごとく厳しい眼差しで語るアルゴ。
(こいつらに響くかは俺次第だ)
「テストではこの問題は出ない。大人たちがそういう方が都合がいいって理由で伏せたからだ。それでも覚えたいか覚えたくない奴が一人でもいたならば俺は通常通りのカリキュラムで授業を進めるがお前らはそれでも知りたいか、世界の真実を」
「私は知りたい。これから守っていくものを知るために」
一番最初に答えたのはクレスだった。
「クレス一人だけか、なら後はいいな。では普「私も知りたいです先生!」……アストリアか。それの意味は解って言ってるんだな?」
今まで自分がしてきたいじめの黙認を認めそしてクレスの方が正しかったと認めるということ。
自分が今までしてきたことをいじめと認知する。それがどんなに大変なことか知っている人はあまりいないだろう。だが認知できたということは人が個性を認め世界を広げた象徴でもある。
「もちろんその覚悟です。今までクレスさんが被ってきたいじめなどが私に向くかもしれませんそれでも私は世界の真実を知り伝えたい。それが私の正義だと呼べる気がするからです」
それはアストリアの本心だった。自分が間違うことはあるし今までクレスのことを無視し続けていたのも事実、どんな目に遭おうとも自分の間違いを正さなかった自分がどうしてか今になって正したくなったのだ。きっかけは言うまでもないが彼女の心に火をつけたのはアルゴだった。
星徒会長のアストリアも賛同したこともあってかクラスの中で迷いが生じた。
自分たちのトップが学ぼうというのだ。だがその反面代償も大きい。自分たちがいじめていたクレスのことを認めなくてはならない。それは自分のプライドが許せないのだ。その天秤が生徒たちを迷わせていた。
「ある【前世】持ちはこんなことを言ったそうだ。私たちは無知であることを知りそれ追求し続けなければ本当の異文化交流は成し得ない。無知であることを知りその一歩を踏み出すならアストリア、君がこちらに来ることを歓迎しよう」
「はい、お願いします先生」
その言葉、アルゴの放ったその言葉が一部の生徒のプライドを掻っ攫った。
「先生某も!」
「私も!」
「僕もお願いします!」
手を挙げたのはイッカク、フォクシー、プロミスの3人
「わかったお前らには個別でつけておくからきちんと聞いておけよ。じゃあまず普通の授業を始めようか。みんなは普通の方がいいみたいだしな。だが勘違いするなよ何も普通が悪いってわけではない、協調性って意味ではそれは正しいんだろうよ。弱い奴は切り捨てていくそれも社会の心理のひとつだ」
そこで一泊おく
アルゴは教室を見渡して
「だがな、それで切り捨てられた弱い奴は手に負えないくらいの敵になって帰ってくるかもしれないことを忘れるなよ」
その声が嫌に生徒たちの耳に残った。
…
放課後
アルゴはクレスたちに特別授業をつけていた。
「それでこの世界におけるファインドについてだがこいつらについては詳しいことはまだわかっていない。だが戦争が始まった理由は見ての通りどちらがファインドを呼び寄せたという疑いの眼差しから始まったのさ」
そう言いながら生徒を見つめ話を続けた。
「それでファインド、こいつらの素材で武器を作ろうとしたのは特級導師ウェポンっていう人物で【前世】の特級導師だ。」
「アルゴ先生、ウェポンさんはいつの時代の人ですか?」
「いい質問だぞプロミス、ウェポンはこの学園の創設に携わった人物の一人でもう老衰されてい居るが戦争初期から末期に至るまで戦争に反対した人の一人だ。時代で言うとここ最近だがウェポンの年は数百歳を超える。だから歴史的観点から見れば超重要人物の一人になってるから覚えておいて損はないからな」
「では先生のチャクラムもウェポンさんの作品なんですか?」
「いんやコレは俺の自作だ。話が逸れたから元に戻すがじゃあファインドとは何だっつう話になる。ファインドは【前世】持ちの中で稀に発現する記憶持ちの中の記録でも存在している」
「ということは元からこの世界にいたということですか?」
「そうだ。そしてその中に【死素】と呼ばれる元素とは異なる粒子体を見つけたのと同時期にファインドが増えたとされている」
そう言って黒板に【死素】と書き上げると次に【星々の加護】、【前世】と書いた。
「ちなみにだがこの死素は【星々の加護】、【前世】の両方にも使われていることが最近の研究でわかっている」
「「「!」」」
「驚いたか、ちなみに【星々の加護】と【前世】は同じ者が与えたとされる見解も多いぞ」
「え………ていうことはもしかして私たちのいざこざは意味のないことなんですか?」
「まあアストリアの言う通りだがプロセスがちょっと違うんだ。【星々の加護】は【死素】の力を星々の絶対的信仰から使うのに対して【前世】は血統から力を引き出す。だがここで問題が起こる」
「【星々の加護】と【前世】は同じ者に発現しないことですね。そして片方の血統にしか発現していませんしそのことも矛盾しています」
そう本来【星々の加護】と【前世】は同じ者に発現しない、そのはずだった。
だがアルゴはその両方を発現していた。
「クレス戦闘授業の時に言ったことを覚えているか?」
「えっと………」
クレスは考え出したアルゴがわざわざ自分を刺したということは何か意味があると思ったのだろう。
「あ……自分が望むヘラクレス」
「そ、スピアのことを思い出してみろ。あいつの【スコーピオンの加護】は本来矢のような使い方はしない。むしろレイピア特化の形態が多いほどだ。ではなぜ弓矢の形態になったかわかるか?」
「自分がそれを望んだから?」
「正解。ここまで来ればなんとなくはわかるだろう。俺は先に【星々の加護】を認識して後から【前世】を発現したってことだな」
「けど昔からアルゴお兄ちゃんは使えてなかったっけ?」
「まあ、俺の両親は父親が【ペルセウスの加護】と母親が【アンラマンユの前世】持ちだからな」
「もしかしてこの学園の創設者のお二人ですか!」
「言ってなかったけ、そうだぞ」
「どうして教えてくれなかったんですか」
フォクシーは声を荒げていった。だがアルゴはバツ悪そうに頬を掻いていた。
「いや、だって俺の両親俺が生まれたと同時に死んでるんだよ。だから実感わかないし良いかなと」
「それは失言でした」
「まあ、別に色眼鏡を掛けてもいいがそれで自分ができないとかは言うなよ一兵卒なら誰でも知ってることを教えるんだから」
「はい」
「コホン、話がそれたな。俺はある意味で当然と言えば当然のケースなんだが、もう一つ俺とは別のケースで前世持ちと星々の加護を両立している人物たちがいる。みんな誰だと思う?」
「わかりません。私たちの知る歴史ではそんなことを知りませんでしたし」
「まあそうだよな。答えは魔界で修行した特級導師たちだ」
「え?」
生徒たちは魔界は入ったら最後死ぬ場所と聞かされていた。
「そのままの意味だよ。魔界で修行した特級導師の中には【星々の加護】と【前世】を二つ持つようになる。これは魔界、冥界共に死素が蔓延しているからだ。現世界を1とすると冥界は10、魔界は1000だ。それほどまでの過剰な死素を吸えば人間は変わる。つっても真似はするなよ。死ぬか生きるかの瀬戸際を彷徨ってしまうからな」
「もしかしてファインドというのは………」
「死素に侵された動物とでも呼べばいいのかね。まあそんな感じだ。人間も適応できなければ魔界の住人になるから気をつけろよ。冥界ならまだタイムリミットはあるが魔界は一瞬だ。それに魔界は滅茶苦茶な気候だから普通に死素とか関係なく死ぬからな………とそろそろ辞めた方がいいな。それじゃあいったん解散するぞ」
そういってアルゴは教室を出ていった。