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「あー言ってなかったけ俺は特級導師だ」
「「「聞いてねえよ!」」」
男子諸君はキレイにハモったツッコミを出してくれた。
「キレイなツッコミありがとう男子陣」
「あのアルゴ先生それ明かしてよかったんですか?」
もはや戦意を喪失させたアストリアはそれでいいのだろうかと思いながら。
彼女としては特級導師の人間は基本的に目立つことを嫌う人物も多く国にやとわれる気のない人間が多いためそう質問した。
「やっぱまずかったか……じゃあ今の無しってことで他のクラスには他言無用でな。」
「アルゴ先生………それはどうにも不味い気がするんですが」
「大丈夫3級教師の資格しか持ってないから」
「いや、そういう問題ではなくて!」
アストリアが言いたいのはズバリ重要機密事項を生徒にバラすだけバラして生徒に荷を追わせるなということである。
もちろんアルゴはそのことについても理解していた。けれど説明するのが面倒になってしまったのである。
「はあ、しょうがねえな。話してやるけどまだ戦闘中だってこと忘れんなよ。っていうか俺に挑む奴は他に居ねえのか」
「だって」
「でもこんな機会」
「けど強すぎるし」
生徒たちはあーだこーだ言いながら戦闘するのをためらうのに対して一人かかんに挑もうとした人物が居た。
「【星座武装 ヘラクレス・××××××】」
星座武装に成りきっていない霞のような棍棒を持ってクレスはアルゴに向かってたたき出した。
無論アルゴはそれを避けていく。
「やあ!」
「てい!」
「はあ——っ!」
何とか声をあげながら応戦するもその一振り一振りは情けなく弱弱しかった。
「その程度で戦場で生きられると思うなよ」
「私だってそのくらいわかってる!でも私はアルゴ兄ちゃんの隣に立ちたいの、いや立つんだ!」
「それならもっと強くなれクレス!お前の望むヘラクレスを描いて見せてから戦いに来い!!」
「なら私の攻撃ならどうですか!」
2人の間に割って【スコーピオン・アロー】突き刺さった。
「クレスさん私もサポートしますよ【善行の測り(ピュアフローラ)】」
「これは」
クレスは実感した重心が今まで以上に安定していることに。
そしてそれだけではない戦意を喪失していた者たちが次々とアルゴに挑みだしたのだ。
クラスの人数は30名それらが心が一つになった時皆に勇気を与えた
「これなら」
いける——そう思った瞬間クレスの意識は刈り取られた。
(ああ、私負けちゃったんだな。やっぱアルゴ兄ちゃんは強いや)
薄れゆく意識の中でクレスはそう思ったのだった。
…
「ここは?」
「保健室よ」
そう答えたのは亜麻色の髪をした白衣の女性だ。
「あ、すいません授業は今?」
「大丈夫。気絶したと言っても戦闘訓練の時間だけだからそんなには経っていないわ。貴方が一番肉体が疲れていてから起きるのも一番遅かったけれどね。もう少し休んでいてもいいと思うけれどどうするかしら?」
「教室に行きます」
「なら名簿に書いて退出してね」
そのような短いやり取りを済ますとクレスは自分のクラスに向かった。
向かっている途中考え事をしていた。
(私はまだ【星座武装】が完璧じゃないしアルゴお兄ちゃんは強すぎるから差はいっぱい過ぎてこれからどうすれば良いかわからないよう)
それだけクレスは悩んでいた。自分がダメダメだという負のスパイラルに呑まれながら彼女なりに答えを出そうと頑張って考えていた。
しかし自分で考えたところで答えが出るはずも無かった。
「自分が望むヘラクレスかあ」
もちろんそんなのは強くて勇ましい英雄のヘラクレスだ。ヘラクレスの神話のようなそんな誰からも憧れ強く勇ましく敵に立ち向かうあのヘラクレスだ。自分はそんなヘラクレスの加護を持っているというのに情けなくも力を発揮できていない。
「え、でも神話のヘラクレスって……?」
12の試練を受けて初めて英雄のヘラクレスとなったはずだ。それにスコーピオンの毒で死ぬこともなかったはず
「それを受けていない私は………わかったよアルゴお兄ちゃん、けれどスピアさんはなんで間違えたのかな?オリオン座のはずなのに」
「そいつはな本人の勘違いというよりは子どもの頃聞いた民話がごちゃごちゃだったらしくてな、本人も訂正されなかったから気づいてなかったらしいぞ」
「わあ、アルゴお兄ちゃんに……スピアさんたち?」
クレスが上を見上げるとアルゴとスピアとその取り巻きたちが居た。
「アルゴ先生それは言わない約束だったはずでは」
「いや、もうバレてるからいいじゃん」
「あなたを信じた私がバカでした」
「えっとそれで………?」
気を改めてコホンと咳払いをするとスピアは話し出した。
「虐めてしまってごめんなさい!」
「「「虐めてしまってごめんなさい!」」」
と一斉に謝られた。
「え?」
「実はこの後も授業をするんだがな。それで話すことを先に言ってたんだ。謝罪を受け入れるかはその後でもいいだろう。」
そういってアルゴは教室に入るよう促した。
「それでは歴史の授業を始める……っても皆が知っての通りの歴史だ。まあ勉強していたのは偏った歴史だろうから今までのはとりあえず忘れろ」
アルゴは教科書をパラっと読むともう二つの教科書を取り出して配るよう言った。
「アルゴ先生なんで歴史が間違ってるって断言できるんですか?」
「流石は今期の星徒会長のアストリア君、真面目でいい質問だ。ではなぜ間違っているかは簡単だ。今まで歴史を作ってきたのは官軍だ。そしてここ数十年の歴史を作ったのは官軍ではない両方つまりは筋書きがあってないんだ」
「といいますと?」
「そもそも停戦中の戦争はファインドのせいで停戦になったと言われているがそれは違うんだ」
「ファインドがどちらかが創った生物兵器との見解でどちらも被害がこうむったから戦争を起こしたんだ。教科書を見てみろ今配ったのは【前世】持ちの奴とこの学園の初期に作られたものだ。それをパラ読みすれば自分たちの意見が間違っていたことに気が付くぜ」
生徒たちは教科書を一心不乱に読みだした。すると【星々の加護】の方が悪いだの【前世】持ちの方が悪いなど言いたい放題書かれていたことに気が付いた。その点学園初期に作られていたもの方が何が原因で戦争がはじまり戦争が終わるきっかけとして大規模侵攻があったことが書かれてあったりと読みやすくはないが歴史の真実が書かれていた。