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「【スコーピオン・アロー】3連射!」
今度は空中から魔法陣のようなモノが描かれ3本の矢がアルゴに襲い掛かった。
「コラ出席番号を言いなさい」
気にするそぶりもせず全て避けた。
「な、ならこれでどうですの【星座武装 スコーピオン・アーチェリー】」
眩い光と共にスピアは【スコーピオン・アロー】の形態を変化せていくダーツ上の矢が肥大化しそれまでなかったスコーピオンの身体を創っていく。
そして出来上がったものは弓の部分がスコーピオンの鋏を弦でつなぎ合わせられた巨大な剛弓が象られていた。
その圧巻とも呼べる巨大な弓に引く矢はダーツのようであった矢とは比べ物にもならないほど大きなサソリの針。
それが今アルゴを撃ち抜かんと弦を張り詰めていた。
「なるほどちっとはマシな【星座武装】ができるみたいだな」
「これを打てばあなたも死にますよ。早いところ【星座武装】に切り替えた方がよろしいのでは?」
そうアルゴは現在自前のチャクラムだけで全てを捌ききっていたのだ。
普通【星座武装】と普通の武器では天と地ほどの差が存在する。言ってしまえば鉄と錫の違いのようなものだ。
その錫と鉄がぶつかり合ったのだからアルゴの武器も相当摩耗しているはずとの見解のスピアであったがそれは間違っていた。
「俺のチャクラムは特別製だぜ」
「なら死になさい!【スコーピオン・アロー】」
英雄殺しとして名高い究極の矢が今まさにアルゴを射抜かんと迫ってくる。
(残念だな、スピアはまだそれを使いこなせていないようだし先輩としてお手本でも見せてやりたいところだがな。悪いなここは俺がお前らに戦闘技術で勝っているということを教えるって使命があるんでな悪く思うなよ)
アルゴは今まで以上にチャクラムを高速回転させ化勁の準備をする。
そして
(今だ!)
化勁の先が戦輪化勁とでも呼ぶべき技がそこに存在し剛弓を斬り裂き、毒を触れられることすら許さない威勢の真空波で吹き飛ばした。
「嘘、それでも武器は致命的なダメージを負ったはず」
「そいつは早計だぜ」
アルゴはチャクラムの回転を止めるとそこには刃こぼれの一つすらないチャクラムが存在していた。
そして驚きをあげたのはスピアではなくアストリアだった。
「まさかファインドの素材を使った武器!?」
「勉強してるな。正解だぞ出席番号1番アストリア」
そう何事にも例外はある極稀にファインドの素材で作られた武器が市場に出回ることがある。
ファインドの素材で作られた武器の作者はどれも不明で特級導師の作品と考えられているが強力な武装な反面呪われると言われている。
「呪いは石化の呪い。ではなぜ俺が石化していないかわかるモノは答えてみなさい」
「それはあなたの星が聖属性、もしくは石化に関係する星だからですね。アルゴ先生、ここからは私も参ります。スピア行きますよ!」
そう話したのはアストリアだった。
「お、2対1かお前ら変に攻撃してもいいがケガは自己責任だからな。それと先生もそろそろ武装を使うのでよく見ておくように【星座武装 アテーネ・イージス】【転生武装 海王との不倫】」
アルゴも武装を展開させ神々しさを醸し出させる小さめのバックラーと一匹の激流の蛇を顕現させる。
「あ、質問は後でな今は確実に忙しくなるから」
(それに戦闘技術だけで捌くならこのくらいの武装なら許可は得てるからいいだろう。本当は全部チャクラムでやりたかったんだけどな)
そんなことを思いながら目の前のことに集中した。
「【星座武装 ライブラ・ユースティアス】纏い審判を下す執行官と化せ」
アストリアはその言葉と共に天秤の鎧をまとい自身の手で天秤の測りを持った人間天秤のようになった。
「なるほどライブラの武装は初めて見えるがそんな風に執行官として戦うわけか。」
「お褒めにあずかり光栄です。ところでアルゴ先生、あなたはまだ本気を出していないようですが、私たちを舐めておいででしょうか?」
「舐めてるというよりかは実戦だと奥の手は死ぬ寸前まで取っておかないといけないし、その時その時で力は最低限にしておかないとすぐにバテちまうぞ」
これは本当の話だ。奥の手を初っ端から使って死んでいった軍人はたくさん居た。そして最後の最後に奥の手を使うように言ったのはあの軍人のおっさんだった。俺はそのことを踏まえて話そうとしたつもりだったがどうやらスピアたちは違う風に取ったらしい。
「その自信叩き潰して差し上げますわ」
「ええ私も少しばかりカチンと来ました」
2人は全力でアルゴに襲い掛かる。
スピアが矢を放ったかと思えば
「【罪の重さ(ギルティグラビティ)】」
超重力波を出してこちらが動こうとするのを止めようとするアストリア。
「へえ重力波ね。けど俺を止めるには軽すぎるぜ!」
超重力波の重力の中は地球のざっと3倍。普通の人間ならいざ知らずアルゴほどの身長と体格ならば優に100キロは超えるであろう体重の3倍即ち300キロの負荷がかかることになる。それをアルゴはものともしない威勢で歩き始めた。
「あなたは本当に人間ですか!?」
「じゃあもう一つに人間らしからぬことをしてみようか」
今度は迫り狂う矢を前に激流の大蛇を盾を持っていない右手に纏わせると
ズドン
という大きな音とともに矢が掴むアルゴの姿があった。
「ほ、本当に人間なの?」
スピアの口から洩れた言葉、鉄の合板すら紙切れのように貫く必殺の矢がいとも簡単に止められたのだ素手で取られたのだ動揺しない筈がない。
「ああ人間さ、ちょいとばかし魔界で修行した人間だがな」
魔界
それは冥界と同じようにファインドが住まう場所。
違うところがあるとすれば現世界では到底再現不可能な滅茶苦茶な環境と冥界の100倍は強いファインド達。
魔界とつながることは滅多にないが繋がったら最後、特級導師もしくは軍隊を投じて勝てるかどうかと言われている。
特級導師になるにはまずこの魔界のファインドを倒さなくてはいけないのである。だがそれでもなろうとする者がいないのは魔界のファインドが恐ろしすぎるからであった。
その魔界に入った大馬鹿者がアルゴだということに生徒たちは驚愕を隠せずにいた。