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お兄ちゃんの役割と国家の危機

ヌーラント皇国とモンスターたちとの全面戦争開始から、一週間が経過した――。


「ああ、もうっ、次から次へと湧いてきてっ! どうなってるのよっ!」


 モンスターの群れは絶えることなく、押し寄せてきていた。


 国境沿いの守備隊は各自バラバラに撤退し、いまは精鋭である遠征軍がどうにか持ちこたえているような状況だ。ヌーラント皇国側には優秀な回復魔法部隊がいるおかげで、死者は出ていない。


 香苗は転移魔法を使って劣勢になっている戦場へ出没しては魔物を一掃していたが、無尽蔵かと思えるほどに湧いてくるモンスターに消耗気味だ。


 魔力はあっても、体力に自信はないらしい。確かに、元いた世界では体育はからっきしだめだった。持久走ではいつもビリだった記憶がある。


 そして、俺はというとルルと同じ部屋で「お兄ちゃん」扱いされながら、ただ暮らしているだけの状態だった。


 香苗は忙しいので直接文字を教えてもらうわけにもいかず、香苗も使ったという教材で自習している。もちろん、魔法の鍛錬はいまだに禁止だ。


「お兄ちゃん、椅子っ!」

「あ、ああ……」


 部屋の隅に用意された席で文字習得用の教科書を読んでいた俺は、やってきたルルに命じられる。


 これは、椅子を用意しろとか、そういう命令ではない。

 俺は教科書を机に置いて、椅子を後ろにずらす。


 すると、ルルは俺の膝の上に乗っかってきた。

 ……そう。椅子とは、俺が椅子になることを指すのだ。


 つまり、人間椅子状態だ。

 小柄で幼女みたいな体形だからできることである。

 続いて――。


「お兄ちゃん、次はマッサージ!」

「お、おう……」


 俺はルルに命じられるまま、今度は肩を揉みほぐす。

 今度は、人間マッサージ機状態だ。


 最初に椅子になってマッサージをしろという命令を受けたときは全力で拒絶したのだが、ワガママな妹と化したルルには逆らえなかった。


 逆らうと鞭で叩いて家畜扱いするという脅しに屈した面もある。

 社畜を家畜扱いとかひどすぎる。


 ともかく、俺は妹(?)のご機嫌を損ねるわけにはいかず、モミモミと肩をマッサージし続ける。


「ふふっ♪ お兄ちゃん、マッサージだいぶ上達したじゃない♪」


 ルルはご機嫌で体を揺さぶり、俺に体重をかけてゴロゴロと甘えてくる。一応年齢は俺と二つしか違わないのだが――まぁ、見た目は完全に幼女なので変な気分にはならない。だが、しかし……ルルの柔らかい体に密着して小刻みに揺さぶられると、ちょっとアレがアレなんだけど……。


 そこで――部屋の中央に魔法陣が浮かび、最前線に出撃してモンスターを無力化してきた香苗が現れた。そして、俺とルルを見て涙目になる。


「る、ルルさまっ! ま、また道人くんとイチャついてるんですかっ」

「あら、カナエ、おかえりなさい。早かったわね」

「ルルさまっ、ま、マッサージならわたしがいたしますっ」

「貴重な戦力である香苗にそんなことさせられないわ。それにこれはお兄ちゃんとの大事なコミュニケーションだもの。これはお兄ちゃんじゃないと意味がないのよ。……ね? お兄ちゃんっ♪」


 そう言って、リリは甘えるように体をこすりつけてきた。


「むぅう~……」


 香苗は頬を膨らませて俺のことを睨んでくる。

 しかし、囚われの身である俺はルルの要求を拒めない。


 鞭で叩かれて家畜扱いされることで変な性癖に目覚めたら困る。

 いや、今でもちょっと変な性癖に目覚めそうで困っているんだが……。


 このままじゃロリコンでシスコンという二重苦に陥りそうだし、だからと言って鞭でビシバシ叩かれ続け家畜扱いされてドМ属性開花とか嫌すぎる。


「もうっ、道人くんなんて知らないっ」


 香苗はすっかりご機嫌斜めだ。香苗は昔から子供っぽいところがあったので同年齢という気がしなかった。妹に近い感覚かもしれない。


「……というか、こんなまったりしていていいのか、ルル。こんなに魔物が湧いて出てくるんじゃヌーラント皇国だけじゃ対処できないんじゃないか」

「なによっ、じゃあ、お兄ちゃんはルートリアにでも協力を求めろっていうの?」

「ああ、だから、話せばリリもわかってくれるはずだって! このままじゃ城下に魔物が雪崩れこんでくるぞ」


 軍事国家ヌーラント皇国とはいえ、あまりにも魔物は多すぎた。

 香苗が局地戦で敵を一掃しても、すぐにまた別のところが危機に陥る。


 香苗だって、いつまでもフル稼働できるかわからない。

 魔物は昼夜問わず押し寄せてきているのだ。


 現在の状況が決して楽観できる状態でないことは、最高指揮官でもあるルルにもわかっているはずだ。


「でも、今さらそんなことできるわけないじゃない! あたしはリリからお兄ちゃんを奪ったんだから!」

「俺が説得する。だから、リリのところへ行かせてくれ! それが嫌なら俺を前線へ投入してくれ! 俺だって、魔法が使えるんだ。ここで戦力を持て余している余裕なんてないだろ!」


 内政を中心にしてきたルートリア皇国だが、ルリアやミーヤがいる。その協力を得られれば防戦一方でなく、攻勢に転じることも不可能じゃないだろう。

 俺としても、リリとルルの仲がこじれたままというのは心苦しい。


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