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働きたくない!

※ ※ ※


 働かかなくてすむという安堵に包まれて――俺は永遠の眠りに落ちたはずだった。


 だが、いま俺は――謎の状況に直面していた。


 目の前には銀髪に青い目をした小さなお姫様――としか言いようのない煌びやかな衣装と宝飾品で着飾った幼女がいた。


 その横には魔法使いとしかいいようのない黒いローブをまとったゆるふわブロンドヘアーの巨乳お姉さん。


 そのまた隣には白銀の鎧をまとった女騎士としか言いようのないショートカットの精悍な顔つきの女性。


 そして、俺の足元には魔法陣としか思えない模様が光輝いており、下から俺のことを無駄に明るく照らしている。


「姫様、成功ですぅ~♪ ついに殿方を召喚することができました~♪」

「おおおお! でかしたぞ、ミーヤ! これで世界が救われるのじゃ!」

「ついに成功か。しかし、頼りなさげな奴だな……」


 女三つで姦しい。人が動くと書いて働く。

 だけど、もう俺は働きたくない。


 というか、なんだ、この状況は……?

 まさか俺は異世界召喚でもされたというのか?


 生前、そういうものがネットやアニメで流行っているらしいということは知っていた。もっとも労働に忙しくて満足に読んだり視聴したりする暇はなかったのだが――。

 まぁ、たまに深夜にちょっと見るぐらいの程度だった。


 だが俺は英雄とかなりたくないしギルドとか入りたくないし成り上がりとかしたくないし冒険もしたくない。チートとかいらないしハーレムとかどうでもいい。


 とにかくこれ以上働きたくない。眠っていたい。


 そんな働かざるごと山の如しで微動だにしない俺を見て、目の前の巨乳魔女(仮)が親しみやすい笑みを浮かべて話しかけてきた。


「説明いたしますね~♪ あなたはわたしの召喚魔法で召喚されました~♪ 急なことで驚かれてるかもですけど~、人生諦めが肝心なので諦めてください~♪」


 ニコニコしながらわりと酷いことを言ってくる。


 でも正論だ。

 俺も存命中は早々に彼女を作ることも友達を作ることも諦めた。

 労働だけが彼女であり友人だ。


 そこで今度は隣の幼女姫(仮)が口を開いた。


「前世でやり残したこともあろうが諦めてくれ。その代わり、そなたをわらわの国で最高待遇で迎えるぞ! なんといっても、ついに我が国に男がきてくれたのじゃからな!」


 男がきてくれた? なにを言ってるのかわからない。

 まさか、男だから肉体労働させられるのか? いやだ、絶対に働きたくない。


 肉体労働は特にいやだ。引っ越しのアルバイトなんて、思い出すだけで過労死しそうになる。あれはもう二度とやりたくない。


 つらかったバイトを思い出して急性労働アレルギーを発症している俺に対し、隣の女騎士(仮)が補足する。


「つまり、我が国には男がいないのだ。というよりも、十年前に男だけが死ぬ病が流行り、我が国のみらなずこの世界から男が絶滅してしまったのだ」


 なんだそりゃ……。そんなことありうるのか?


 だがしかし、そんな状況でも俺に彼女なんてできるわけないし世界の男が俺ひとりだけだろうと関係ない。


 清い体のまま死んだ俺を舐めないでほしい。俺は童貞の中の童貞だ。ハーレムなんていらない。働きたくない。


「そういうわけなのじゃ。じゃから、ゆくゆくは、わらわとその……結婚するのじゃ! そして子を授けてくれいっ!」


 幼女姫(仮)はいきなりとんでもないことを言ってきた。三十三年間童貞を貫き通して死んだ俺にはハードルが高すぎる。


 なんだか知らないが、変に期待されていることはわかる。

 だが、俺はもう――、


「……働きたくないんだ」


 異世界に来て初めて口にした言葉がこれだった。

 我ながらぶれない。働きたくない。


「む? もちろん働かなくてよいぞ? わらわといっしょに城に住むのじゃ!」


「そうですよ~♪ 衣食住すべてこちらで面倒見させていただきますから~♪ 言語もこのとおり~、わたくしの魔法で自動翻訳されますし~、不便なことは~、なんにもないですよ~?」


「ふ、街に出るときは皇国随一の剣の腕を持つわたしが護衛してやる。ドラゴンに乗ったつもりでいろ」


 大船に乗ったつもりじゃなくてドラゴンに乗るというのが異世界チックだ


 しかし……本当に働かなくていいのか?

 月曜日に怯えなくてすむのか?


 なら――それは、俺にとって理想の世界じゃないか!


 異世界に召喚されたからといってアニメやライトノベルの主人公みたいに戦ったり働いたりすることはないとは……。


 まさに桃源郷、無職の(ヴァルハラ)

 働かないでいいのならば、異世界転生とやらも悪くない。働きたくない。



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