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第4話 友達作りって難しいよ

「そうだ、きっとあれは夢だったんだ!本当は何事もなく家で寝ていただけなんだ!」


あぁ、最近俺は疲れてるんだな。だからあんな悪夢を見てしまう……


「お!友達一号ではないか!」


「夢じゃなかった!」


翌日。俺が昨日の出来事を自分なりにポジティブに変換しながら登校していると、すかさず鳴宮が満面の笑みで走りよってきた。


どうやら朝から俺を待ち伏せしていたらしい。そんなに友達できたことが嬉しいのだろうか。


「今日もおはようだ!友達一号!」


「どうでもいいが取りあえずその呼び方だけはやめてくれ」


「なぜだ〜?」


鳴宮は不満そうに、むうっと頬を膨らませる。


私のネーミングセンスのどこがいけないのよ!


と、顔に書いてある様なふてぶてしさがあまりにも可笑しくて俺は笑ってしまう。


「ふふっ……だから、ははっ……友達なんだからふふふっ……普通に名前で呼べばっははっ……いいんだよ!……くくく」


ダメだ!面白ろすぎて堪えられん!

すると鳴宮はそんな俺を嫌悪感丸だしのしかめっ面で見つめる。


「……ここは引いても良い所なのか?」


俺に聞くなよっ!


はっ?!なんか俺最近ツッコミが鋭くなってきた気が……こんなキャラじゃなかったのに!


「それで、だ。平野、まさか昨日の約束を忘れてはなかろうな?」


「あぁ。さすがに俺もそこまで馬鹿じゃない」


「じゃあ……その、手伝ってくれるの……だろ?」


鳴宮は恥ずかしそうに顔を赤らめると、俯いて小声で呟いた。

というか、こいつ本当にこういう仕草が可愛いなオイ。


……だからやっぱりからかってみたくなるんだよな。


「ああ、モチロン手伝うぞ」


「そ、そうか!じゃあさっそくなんだが……」


子供のように目をキラキラと輝かせる鳴宮を俺は手で制した。


今朝間違えて入れた物がこんなとこで役立つとはおもわなかった。


「実は既におまえにぴったりの友達を連れてきたんだ」


くくっ!本当、多分ぴったりだよ。


「本当か?!さ、流石は平野だ!ならばき、キチンとしないと……」


そう言うと、鳴宮は制服を手早く調え始めた。


友達ってそこまでして欲しいものかね?


鳴宮は可愛いし、からかい甲斐もあるし友達なんて沢山いそうに見えるんだが。

確かにそうだよ。なんでこいつみたいな奴が友達いないんだ?


まっいっか。取りあえず今はそれよりこいつをからかってやるぜぃ!


「ではではさっそく紹介

しよう!」


俺はいかにも詐欺師っぽい笑みを浮かべると、鞄からじゃかじゃ〜ん!と茶色い物体を取り出す。


「今日から君の友達!クマのブーさんだよ!レオナちゃん、よろしくね!」


そしてわざとらしく声高に腹話術をやってみせる。


くそぅ!正直自分の声がキモいのはわかってる。わかってるよ!


「おまえっ!裕也!!私を馬鹿にしているのかっ!」

「いや、おまえが言ったんだろ?友達欲しいって」


鳴宮はう〜!と獣のように唸りながら頬を赤く染める。


「わ、私はそんなぬいぐるみなんかと二人で遊ぶほど負け組ではないぞっ!」


友達になってくれ!


と頼んだ時点で負け組と思ってた俺は間違っていただろうか?


と鳴宮の恐いけど可愛い、約してコワカワをたっぷりと楽しんでいると、その目線が何度も俺の手元に向けられていることに気づく。


ははぁ。さてはなんだかんだ言ってこいつが欲しいのか。そうかそうか……くくく!


またもや俺の脳がサディスティックに目覚めた。


「そうか。ならこいつは俺が預かろう」


「あっ!待てっ!」


俺が鞄にぬいぐるみをしまおうとすると、案の定鳴宮は焦った面持ちでおどおどし始めた。


本当にいつも期待通りの反応してくれるよ。あぁ、やっぱり俺をサディスティックにしたのはこいつらしい。


「ん?どうした?こんなぬいぐるみいらないんだろ?負け組じゃないんだもんなぁ?」


「……くっ!卑怯な!」


「な〜んのことかな〜!うひょひょひょ!」


あれ?なんか俺いつの間にか序盤で切り殺される雑魚キャラみたいなセリフ吐いてるよ?!どうしたの俺!

周りの視線がグサグサと俺の毛穴という毛穴に刺さりまくるのが、痛いほど伝わってくる。


「で、どうしたんだよ?言ってみな」


それでも俺はさらに追求してみた。


「だから……その……」


「その?」


すると鳴宮はまたトマトの様に顔を赤くする。


「か、可愛いではないかっ!その……クマのブーさん……」


「ブーさんだって!ネーミングセンスなさすぎる!」

ピキッ


あれ?今何かが割れた音がしたような。


「お、お前が言ったのではないかっ!なんで私のネーミングセンスが馬鹿にされなければならんのだっ!」

何かが壊れたのか、鳴宮は鬼のような形相で涙を浮かべている。


まぁちょっとやり過ぎたかな。そろそろ授業始まるし教室にでも行くかな。


そう俺が鳴宮をなだめようとした時、後ろから突然どんっ!と突き飛ばされた。

「な、なんだ?!」


「よう!お二方!朝からラブラブなんていいねぇ〜」

やっぱりバカ(通称北川真夏)か。


挨拶代わりに突き飛ばしなんて横綱だってびっくりだよ。


「これのどこがラブラブなのだっ!それどころかどう見てもブラブラではないか!」


「鳴宮、言葉を逆にしたからって常に意味も逆になるとは限らないぞ」


というか、ブラブラってどんな形容詞だよ。


「それはいいけど、二人共早くしないと俺と一緒に仲良く遅刻だぜぇ〜♪」


北川は呑気に笑いながらピースをかます。

そういやこいつは遅刻の常習犯だったっけか。


「あのなぁ、北川もいい加減毎日遅刻してくるのはダメだろ」


そう言って俺は一応北川を諭してやる。遅刻と言えど、何回もやれば将来に響くかもしれない。塵も積もれば山となるって言うし。


「安心しな。俺は平野と違って頭が良いからな」


「ぐっ!……情けないが何も言い返せん……」


確かにこいつバカなんだよ?孫悟空もびっくりなくらいのバカなんだよ?


でもなぜか勉強はできる。な?こういう奴っているよな。


「俺の方が頭いいから、土下座してくれ!」


理不尽だ!捜査が面倒くさいからって自白を迫る国家権力並に理不尽だ!


俺達がそんないつもの会話をしていると、後ろから物凄い殺気を感じて俺は瞬時に振り返った。


「ひぃぃぃぃぃ!」


するとそこにはなかなか会話に入れないで、後ろから殺戮の視線を送る鳴宮がいた。


「あ、あはは……。何かな、鳴宮さん……?」


しかし鳴宮は押し黙ったまま、ただただ目線で何かを訴えている。


しょうがない。この前通販で習ったみんなで楽しく眼会話!を試してみよう。


(どうしたんだよ?)


俺が必死に眼だけを動かすと、鳴宮も答えるように器用に眼動かし始めた。


(私が気まずいではないか!)


(へ?だっておまえら友達だろ?)


確かに俺には普通に会話をしているように見えたんだが、違ったのだろうか。


(ま、まだそうと正式に決まったわけではない……)

アホか!

友達を正式に決める奴がどこにいるんだよ!


(ここにいて悪かったな!)


読心術だと?!

くそっ!この俺でさえまだ習得できてないと言うのに。


(どうやら通販口座では私が上の様だな)


わ、わかったからそれ以上俺のデリケートゾーンを見るなっ!


(平野。後で必ずコロス!)


(で、俺にどうしろと?)

(死ぬのだっ!)


(要するに北川と友達になりたいんだな?任せとけ)

なんかもう言葉の暴力に慣れちゃったよ俺。


まぁ約束だし、俺が人肌脱いでやるか!


(平野の裸なんて見たくないのだっ!)


……もう僕気にシナイもん。


「なぁ北川、頼みがあるんだが」


「なんだ?売春ならまたの機会に……」


「そんな機会ねぇよ!というか、断れよ普通に!」


「断ってもいいのか〜?」

「いや、ダメ!俺が頼みたいのはそういうことじゃなくて……」


ああ、こいつと話してるといつもペースを乱される!それにこのままではらちが開かない。


ここは単刀直入にいくっ!

「北川!」


「き、急になんだぜ?」


「付き合ってくれ!(鳴宮と)」


ピキィィィッ!!


しまった!単刀直入にし過ぎて大事な部分を抜かしてしまった!

しかも心なしか物凄い不協和音が聞こえた気がする!

早く誤解を解かないと俺の命が危ない!


「へ?……お、俺とか……?」


ヤバイ!北川が真っ赤になってるぞ!


あれ?いつもと違ってめちゃくちゃ可愛いな。特にポニーテールが……


じゃなくて!


「違うんだ北川!今のは決して痛たたたたた?!腕が!俺の腕が有らぬ方向にっ?!」


突然の激痛で気がつくと知らない内に鳴宮が立ったまま物凄い勢いで腕を曲げている。


っていうか曲がっちゃってるよ俺の腕!


「平野っ!!この期に及んで何を言い出すかと思えば付き合ってくれだと?!この大バカァーーー!!」


「ぐぎゃああ腕の感触がない〜!!」


誤解なのにっ!ああ腕が変色してきたっ!


助けて!北川!


「平野が……俺のことを……平野が……俺のことを」

しかし北川は何事かを呟いているだけで俺の究極の懇願は敢なく無視された。


「今日という今日は許さないぞ!覚悟しろ平野!」


「お、お助けを〜!ひぎゃあああ!」


俺はまたもや圧倒的な力で教室まで引きずられていく。



そんな彼らをチャイムと共に見守る少女がいた。


「楽しそう、だな……ふふふ」


あまりに可笑しかったので、柄にもなく笑ってしまった。


「私も……入れるかな?」

そんな少女のため息と共に、今日一日が始まりを告げるのだった。

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