表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の魔王に代打で召喚された!~だけど、魔族の待遇改善に努めてから還ります~  作者: 都辻空


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/28

19th pinch 辿り着いた真相

ご覧いただきまして、ありがとうございます。


「クロムウェル。以前、陛下に使節団への入団希望をしに来た際、お前はこう言ったな? 〝一度、人間に助けてもらった〞と」


 エルドラの鋭い視線に、ジャックス君は一瞬言葉を飲み込んだ。


「……はい」


「それで、その後はどうやって魔族領へ来た?」


 以前、聞いたことがある内容に、私は間に入って答えようとする。


「え? それは――」


 けれど、言い掛けそうになった私の肩を叩いてそれを止めたのはクリストフさんだった。


「?」


「……」


 振り向いて視線があった私に対し、妙に真剣な表情をするクリストフさん。


 そしてその場の全員の視線が、再びジャックス君へと向けられた。


 エルドラは一呼吸置くと、ついに確信へと至る言葉を告げる。


「では、単刀直入に訊ねよう、クロムウェル。


 お前はどうやって、テノト大河を越えた?」


「それは、先代の陛下が……」


「では、それはいつのことだ?」


 間髪を入れずにエルドラが訊ねた。


「えっと、退位される前、でした」


「そうか。だが、先王が退位する今から約百前――その時既に先代には、お前を運ぶだけの魔力はなかったぞ」


「――っ!?」


 エルドラの言葉を聞いて、ジャックス君は驚きの反応を見せる。

 そしてそれは彼だけではなく、私も同様だった。


「何か、言いたいことは?」


「……」


「ジャックス君?」


 けれどジャックス君のその反応を見て、私は違和感を覚えた。

 どうして何も言わないのだろう?


「……もういい。お前が陛下を偽ったことには目を瞑れても、陛下の御身を危険に晒したことへの罪は見逃せん」


「ちょっと!」


 今にもジャックス君へ制裁を加えそうなエルドラを、二人の間に入って制止させる。


「私が怪我したのは私の責任で、ジャックス君は関係ないでしょう?」


「ですが、この者が陛下を偽ったことには代わりありません」


「それはさっきあなたが〝目を瞑る〞って言ったでしょう? 私が気にしていないのだから、罪に問う必要はないわ!」


 背後に庇ったジャックス君が呟いた。


「陛下……」


 私は彼へと向き直り、その瞳を見つめる。


「ジャックス君。エルドラの言う通り、私たちに隠していることがあるの?」


 本来の宮内環奈(わたし)よりも長く生きているはずの魔族の彼は、今大勢の〝大人〞に囲まれていた。


 そのせいか、萎縮したその肩は僅かに震えている。


「……ジャックス君」


 私は静かに彼へと語りかけた。


「話したくないのなら別に構わないわ。でも、これだけは解って。


 私はあなたを信じてる」


 結局、会談の二日目は開催されることなどなかったけれど。


 私の要望に答えるために夜遅くまで付き合ってくれた彼を、私は信じたかった。いや、信じたい。


「……ち……です」


 その時。

 ジャックス君の唇から、小さな言葉が紡がれる。


「……僕は、親友を捜しているんです」


「親友?」


 それだけだと訳がわからず、続く彼の言葉を待った。


「はい。親友を――レンドルディを捜しているんです」


「!?」


 その名前に反応したのは、エルドラだった。


「あの半魔か」


「半魔? それって、魔族と人間との間の……?」


 ここに来て新たな事実が発覚するとは思いもしなかった。


「ええ。そしてそのレンドルディの父親は、先々代魔王です」


「はいっ!? なんだって、そんな子が人間領(こっち)に?」


 私が訝しく思っていると、ジャックス君は申し訳なさそうに口を開いた。


「申し訳ありません、陛下。レンドは、どうしてもそれは言えないって教えてくれなくて……」


「そっか……なら仕方ないけど……」


 これからどうしたものか。


 先々代魔王の息子のレンドルディがこちらへ来ているとして、その目的も居場所もわからないのであれば手の打ちようがない。


「まあ、ここは穏便に済んだということでよしとされては?」


 私の表情から読んだのか、クリストフさんが優しく言ってくれた。


「そうね」


 そうだ。今わからないことはどうやったってわからないのだ。


 なら、地道に情報収集をしていく他ないだろう。


(わからないで言えば……)


 私はエルドラへと感心を向けた。


「でも、エルドラ。よくジャックス君のことが気づいたわね」


 さすが知恵者の名を冠している魔族だ。


 私は当人の先代と会っていないから、その魔力がどれ程強力かはわからないけれど、エルドラやクリストフさんの話では、時の魔王を弑逆した強大な魔力の持ち主だったという。


「先代の魔力の低減とか、知ってたのね」


 私が流石と頷いていると、とんでもない爆弾発言が投下された。


「ああ。それはまったくの嘘、口からのでまかせです」


「……はい?」


 私は耳を疑った。

 あんな、さも事実のように言っておいて?


「先代は自由人でしたから、人間領へ出向いて魔族の救出なんてやりかねないのですが……」


 もし、ジャックス君が本当に先代に助けられたのなら、ただ事実を口にすればよかった。


 けれど、彼は口をつぐんだ。


 つまりジャックス君には、私たちに〝言えない何か〞がある。そう推測したそうだ。


「ずっと気になっていたんです。クロムウェルの様子が何かを隠していると」


「……も、申し訳ありませんっ」


 ジャックス君が深々と頭を下げた。


「五十年くらい前のことです。突然レンドルディが〝人間の国に行く〞って言い出して……勿論、僕は止めたんです!


 でもレンドの奴、どうしても行くって聞かなくて……それで、人間に興味があった僕も誘惑に負けて一緒についていきました。


 結局、その時は物見遊山的な感覚で魔族領へ戻ってきたのですが、後日レンドの姿がどこにもなくて……。


 すみません……こんなこと誰にも相談できなくて……もし、レンドが人間に見つかりでもしたら大変なことになるなんてこと、わかっていたのに……」


「ジャックス君……」


「それで陛下が和平使節団を作って人間の国へ行くときいて、僕も参加したいと思ったんです。


 でも……っ」


「陛下に助けていただいたことで、陛下の力になりたいと思ったことも本当です! だから……っ」


 今にも泣き出しそうなジャックス君。


「だから――」


「うん。信じるよ」


 私は彼へと目線を合わせ、彼へ手を伸ばした。


「私は君を信じる。だから、また一緒に和平を目指してくれる?」


「……っ。はい……っ!」


 ◆


 その日、ヴェルゲン帝国の帝都ヴェルグストは朝から騒々しかった。


 中でも帝都の中心部に位置する大講堂前の広場は歌や楽器、そして人の歓声で一際賑わっていた。


 それらの喧騒は、同じく中心部にある宮廷にも伝わってきていた。

 

「……ちっ」


 本当に騒々しい連中だ。

 小さく舌打ちをして、待つようにと言われていた執務室のソファから立ち上がる。


 そしてバルコニーへと繋がるベランダの窓を開け、一歩外へ出た。


 ここからなら、宮廷の裏側を屋根づたいで渡っていけば裏の森へと行ける。


 それまでこの煩さに目を潰ればなんとかなる。

 そう思って、手すりに足をかけたその時。


「どこに行こうって言うんだい? レンドルディ」


 背後で、自分の名を呼ぶ声がした。


 足を下ろしレンドルディが振り返った先にいたのは、この部屋の主であるレーヴィスだった。


「どこへ行こうと俺の勝手だ、レーヴィス」


 扉を閉めた彼は苦笑を溢しながら肩をすくめる。


 三十路前に差し掛かる長身痩躯なレーヴィスは、格式張った服装に身を固めていた。


「まあまあ、一応は僕の晴れ舞台なわけだし、そんなめでたい日に君の姿が他の人間に見られでもしたら厄介だろう?」


「そんなこと、俺の知ったことじゃない。お前たち人間の下らない(まつりごと)に従う義理なんてないしな」


 肩口で結ばれる灰色の髪に、穏やかそうな藍色の目。


 その実、つい今しがた戴冠式を終えてこの帝国の皇帝になった男は、悠然とした態度で言葉を放った。


「……勘弁してくれよ。唯でさえ君の勝手な行動で、こっちは計画が遅れてるんだ。せめて、何もしなでいてくれないかな?」


「お前に指図される謂れはない」


「うーん。別に指図してるつもりはないんだけどね。だって僕たち、利害が一致しているわけだし。そうだろう?」


 纏っていたローブを脱ぎ、幾分か動きやすそうになったレーヴィスは真っ直ぐにレンドルディへと視線を向ける。


「……なら、早く情報を寄越したらどうだ。俺はお前があいつの居場所を知っているというから、協力しているだけに過ぎない。


 一体、いつまで待たせるつもりだ?」


「そうかっかしないことだよ、レンド」


「……」


 親しくもないのにその名で呼ばれ、レンドルディは目の前に立つ男に一瞬殺意にも似た感情を覚える。


「大体の場所は掴めている。だが、もう少し時間をかけないと鮮明な場所まで特定できないんだ」


 だから、もう少し待ってほしい。

 これまで何度となく言われた台詞だった。


「その言葉、違えればお前の命はないぞ」


 レンドルディの言葉に眉一つ変えず、レーヴィスは変わらずに言葉を告げる。


「安心しろ。もうじきすべてが整うんだ。


 魔王が皇帝(父上)暗殺を謀ったと世界中に知れ渡れば、その仇討ちとして魔族領への進行理由が生まれ、帝国軍の正式な進行を促すことができる。


 親父殿は頑なに首を縦に振らなかったが……報復を恐れて利益の拡大を諦めるなんて、それこそ愚者のする行為だ」


「ほんとにお前はあの皇帝の息子か?」


 嫌味を口にする。

 しかし、レーヴィスはさもありなんと苦笑を溢した。


「ええ、お恥ずかしながらね。


 耄碌すると、ああも自分の沽券に関することには気弱になるなんて……我が父親ながら失望します」


 そしてレーヴィスは思いもよらぬ言葉を口にする。


「君のところもそうなのでしょう? レンドルディ」


「……」


 切り返されたその言葉は、すべてを知っているからこそ言えるものだった。


「君には悪いと思うが、ここ数日は式典(セレモニー)で騒々しくなる。我慢してくれ」


 レンドルディはその言葉を聞いて〈影纏い〉で姿を消すと、自分にと宛がわれた皇室の奥の部屋へと戻った。


 ここを出ていったところで、行く宛もない。

 そう思って留まっては見たものの、いっこう奴の姿はおろか足跡も追うことは出来なかった。


 不意に、部屋に用意されていた姿見と、そこに映り込む自分の容姿に目が留まる。


 短く切り揃えられた黒い髪に紫紺の瞳。


 それは、いやがおうでも、自分があの男の血を引くことを認識させられる烙印だった。


『君のところもそうなのでしょう? レンドルディ』


 普段であれば気にも留めない自分の外見に、先ほどのレーヴィスの言葉が反芻されたことで内に潜む憤怒が溢れだす。


 気づけば、拳の一撃で姿見の鏡を粉々にしていた。


「くそ……っ」


 歪んだ鏡に映るいくつもの自分の姿が目に入って、手の痛みを感じる前にまた怒りが込み上げてくる。


 自分がここまできた理由は、ただ一つだった。


(――俺はなんとしてもお前を殺す。ベルガスヴラド……ッ!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ