重なる難題
キャヘマ「レッドドラゴンが暴走すれば世界が滅びるでしょう。
それを止めるために、あなたが必要です!」
いきなり何を言ってるのだ?
俺は正義の味方的なヒーローだから、そういうと必ず駆けつける……とでも?
作者は時間が空いたせいで、俺のキャラを忘れてしまったのか?
俺「クラムが何を言ったか知らないが、そう言われても行かないよ。
聖女さんはともかく、昨日の枢機卿とか、兵士とか、明らかに危なかっただろ?
そんな人たちの国に、エミャルと一緒に行くとか、ありえない!」
キャヘマ「世界を救う……」
そもそも、世界が滅びるとか、トンデモ過ぎて信じられない。
この世界には確かに魔法があるが、これまで見て来た限りでは、その魔法にしたってパワーはそこまでじゃない。世界が滅びるなんてレベルじゃないぞ。
俺「いやだね。行かないぞ!」
キャヘマ「で、でもレッドドラゴンが……。」
レッドドラゴン? 何それ?
ホワイトドラゴンの親戚?
確か魔王国で眠っていると言うホワイトドラゴンは人間……ってミシャは言ってたよな。とっても強いらしいが、。それの親戚? ならば、人間??
俺「え~とレッドドラゴンは、そう呼ばれている人間……とか? 」
キャヘマ「いいえ、違います。
あれは化け物です。人間などではありません。 」
名前は似てるけど、魔王国のホワイトドラゴンとは違う?
まあ、なんでも良いけど、。
俺「その化け物を俺が、なんとか出来る……ものなのか? 」
キャヘマ「戦って倒すという意味ではありません。
暴走する前に消滅させるという事です。それにはコードに縛られない魔力が必要なのです。」
さっぱり分からんが『コード』は魔法で人間を殺せないというヤツだと思ったが……。
消滅??
俺「聖女さんの魔力ではダメなのか?」
キャヘマ「確かに私の魔力はグレイゾーンです。ですが、それもコードの範囲内ですよ。
清王の奇跡による不確定性を利用した境界線上の範囲の拡大にすぎません。」
まあ、眠らせるだけで、直接、殺してはいないか。
俺「それは残念だね。でも、なんと言われても俺やエミャルは行かないよ。」
聖女キャヘマも、ようやく俺の事を理解し始めたようだが、。
キャヘマ「で、では、、その。一緒に通信……、だけでもお願いできないでしょうか?
数理博士と連絡が取れれば、私よりも詳しい事情をお話しできると思います。
そうすれば、或いは、あなたも……。」
俺「博士?」
キャヘマ「聖殿の4賢人のひとりで、最高位の博士です。」
俺「事情が分かったところで、いかないよ。
危険を考えたらエミャルをあんたたちの国に連れて行く事はできない。」
キャヘマ「聖殿のある第ゼロ教区は、高度な自治を与えられています。
枢密院も手をだせません。博士たちが、あなたがたの安全を保障してくれるはずです。」
宗教都市みたいな感じかな?
俺「まあ興味深いから通信はしても良いけど、、。早く帝都に戻らないといけない。
一緒に帝都まで来てくれたら……、そこで、、だね。 」
キャヘマ「……、。分かりました。
……、。でも、さらに遅くなりますね。間に合うかどうか……。」
俺「もし、行くとなれば、帝都からの方が早いかもしれない。」
キャヘマ「はい?」
俺「まあ、行かないから関係無いけど。」
食事の後、すぐに、船長さんに島のセクタの港へ行くようにお願いする。
風が良かったのか、この船が早かったのか、たぶん、その両方の結果だと思うけど、その日の夕方にはセクタの港についた。島をほぼ半周だし馬車だと3日はかかる距離だが、すばらしく速い。
船を降りようとしていると船長が挨拶に来た。
船長「気前の良い坊ちゃんの仕事なら、いつでも大歓迎だ。また使ってくれ。」
クラムが金持ちというわけじゃないのだが。
キャヘマ「できたら、待っていてください。戻ってくるので、帰りも……。」
俺「いや、それは必要無いと思う。」
キャヘマ「いや、でも……」
俺「もし共和国に急いで行く気なら、もっと速い方法で行けるようになると思う。
だから、待っていなくて良いぞ。」
船長「ん?? この船より速い? それは聞き捨てならないな。
このあたりの海じゃ、この船は最速だぞ。いったい誰に騙されて、そんな事を言ってるのだ?」
俺「確かに、この船は速かったし、あんたの、。」
船長「イスティだ」
俺「イスティ……船長の言葉を疑う気は無いよ。
このあたりの『海』では最速かもしれないね。」
船長「海では……か。」
少し考えてから、。
船長「なんとなく言ってる意味は分かるが、。
飛行艇は、この島から出る方向には使えないぞ。何か勘違いしてないか?」
さすがプロというか、分かっている?
俺「あー、。そこをなんとかする方法を見つけたのだよ。こちら側からも使える方法。」
船長「おいおい。本当かよ。
そんなものがあったら俺たちの商売を取られちまう。この船は最速が売りなんだぜ。」
大規模に始めたら確かに、この船の客船としての仕事には打撃かもしれない。
この細い船だと貨物輸送には向いて無さそうだし。
俺「もし経営危機って事にでもなったら相談してくれ。
この港の公社で、ヒロタンと言えば俺に連絡が取れるだろう。」
船長「分かった。その時は頼むわ。」
船を降りて岸壁を歩いていると左大臣の商会の旗がついた船の横で、驚いた事に、船上のエストリアから声をかけられた。共和国へ向けて出発する準備をしていたらしい。
驚いて立ち止まった俺に向かって、船から駆け降りてきたエストリアが「何故、ここに、あなたがいるの? 連絡が取れないから心配していたのよ。」
俺「いや、いろいろあってね。」
先に出発したエストリアに、この港で追いついてしまった事になる。
エストリア「でも、ちょうど良かったわ。 あなたに連絡しようとしていたの。」
俺「ん?」
エストリア「途中で帝都に寄ったのだけど帝国議会がたいへんなのよ! 」
俺 「俺は忙しいのだけど。 」
エストリア 「魔王国へ変な事を言ったし、ネクトマの人たちの恩赦もあるでしょ。
それらには議会の承認が必要なのだけど。」
俺 「エストリアが議会はなんとかなるって言ってたのじゃなかったっけ? 」
エストリア 「あんたが悪いのよ!
エミャルと右大臣たちにネクトマとの商売のネタを提供したでしょ?
それで、左大臣が怒って反発しているの。
勝手に宣戦布告とか言ったのもまずかったわね。
議会が拒否したらネクトマとの約束も魔王国との交渉も、全部、ダメになるわ。」
あれはエストリアが先に帰ってしまったからエミャルに持ち掛けたのだが、。それで左大臣が反発してる?
それにしても左大臣は情報が早いな。エミャルの周りに左大臣のスパイでもいるのかな?
俺 「左大臣は、おまえの親だろ。なんとかしろよ。」
エストリア 「私は市民会議のために共和国へ行くから無理! あなたが帝都に行ってなんとかして。
皇帝なんでしょ! 」
俺 「そういや俺は皇帝だよなぁ。皇帝なら議会よりエライのじゃないか?
議会とか気にしないで勝手に宣戦布告とか言っても……。」
エストリア 「そんなわけ無いでしょ! 帝国の正規軍を動かすには議会の承認が必要よ。
あんたが動かせるのは、せいぜい近衛部隊だけ。
宣戦布告は、本来、議会にかけるべき話ね。」
いや、まて。エストリアとミシャが宣戦布告とか言ったのであって、俺は……。
「じゃあ、私は出航するから、あとはよろしくね。 」
そう言い残すとエストリアは船に……
なにがよろしくだよ!!! あの左大臣のジジイと交渉なんて、イヤだよ!
なんで、面倒な話ばかり増えるの?
エストリアが乗り込もうとする船の上から、ライラが俺に手を振って
ライア「共和国へ帰る事にするわ!」
彼女も一緒に船で帰るのか。そりゃ、良かった。
ライラ「また来るけど、それまで変な事しちゃダメよ。」
俺「おぉ! またな! 」
ライラは乗り込んで来たエストリアと船室に消えた。
と、俺の後から、岸壁を歩いて来たキャヘマが駆け寄ってきて、船を指刺して
キャヘマ「今、船の上にいたのは? もしや?」
さっきまで船の上にいたのは・・
俺「ライラの事か?」
キャヘマは、明らかに動揺して、。
キャヘマ「やはりライラ……なのですね。何故? 何故、ここに? 共和国にいるはずでは?」
知ってるのか?
まあ、ライラは共和国では有名みたいだし、国外で知っている人間がいても不思議は無いか。
俺「いや、まあ、ちょっと用事があってここへ来ただけだ。今から、この船で共和国へ帰るらしい。」
キャヘマ「そ、そうなのですね。」
俺「何かあるのか?」
キャヘマ「……、。なんでもありません。」
それ以上は何を聞いても答えてくれなかった。
その夜はセクタの城に泊まった。
共和国に出発する時以来だが、まあ、それなりに馴染んではいる。一応、まだ兼務で領主でもあるし。
キャヘマも城の客間へ泊める。
その城で、夜になってからダムラル老が俺の部屋を訪ねてきた。
旧セクタ王国の時代から、この城に使える爺やさん。家老的な人。この人も久しぶりだ。
ダムラル「実は、最近、この城で、古いティアラが見つかりまして。」
そう言って持参した箱を開けると銀細工に宝飾をあしらった、とても綺麗なティアラが。
俺「豪華だな。もしかして偉い人の物だった?」
ダムラル「以前はセクタ国の王妃様が身に着けておりました。」
俺「それが今になって見つかった?」
ダムラル「城の掃除をしておりましたら、たまたま見つかりまして。」
帝国が占領した時に、城にあった財宝を全て持っていったはずでは?
確か俺が、ここの領主になった時に金がまったく無いから……と、金策に行かされて……。
こんな豪華な物があるなら、売れば金になったと思うが。
ダムラル「旧セクタ国の成人した王女、王妃が身に着けてきた伝統の装飾品でもあります。
領主様……、陛下なら、これを成人したエミャル様に賜って頂けるのではないかと……。」
もしかして、エミャルが、もうすぐ成人するのでもってきた?
そういうのありなのか?
俺「だったら、ダムラルが直接、渡せば良いのでは?」
ダムラルは少し驚いたような感じで
ダムラル「旧王家の物を私的に扱うなど反逆罪にあたりましょう。たまたま発見されたとして、今の、わしに出来るのは陛下に献上させて頂くのみです。」
旧王家の秘宝を隠していた……としたら、その時点で帝国への反逆行為じゃないか?
良く見ると、最近、加工した跡がある。正面の銀のパネルには新しく刻んだような、あたりさわりの無い文様。だが、丁番の感じからしてパネルを裏返した?
俺が調べている風なのを見て、。
ダムラル「痛んでいたので、修復させました。」
そして、俺が裏側をめくろうとすると
ダムラル「めくってはなりません。 」 と言って止めようとしたが、。
俺「 見なかった事にするよ。 」
そう言いながら、俺はめくってみる。
ダムラルはしかたないという表情。
裏側にはセクタ王家の紋章が刻まれていた。さすがに、それが表ではまずいので裏返したのか。
まあ、俺は別に構わないけどね。
俺「俺がエミャルに渡すのは構わないが、、。」
金にうるさい大臣たちには秘密しておかないと、まずいだろうな。
ダムラル「ありがとうございます。」
俺「ミシャの分はあるのかな?」
ダムラル「はぁ?」
俺「ミシャが成人する時には、、、その、何か新たに発見される予定があるのか?と聞いているのだよ。」
ダムラル「め、めっそうもございません。まるで、わしが隠しているように言われましても……。」
俺「それだと渡せないな。不公平だし、ミシャが悲しむだろ。」
ミシャは幼く見えるけど、元の世界でエミャルと1才程度の違いでしかない。この世界では半年後に誕生日と言う事だ。
ダムラルは微妙な笑い顔で。
ダムラル「かないませんな。……、。ミシャ様の誕生日にも新たに見つかる品があるかと思います。」
俺「 必ず見つけろよ。 」
ダムラル「 必ず見つけましょう。」
う~ん、まだ、ありそう……。
俺「……、それだけ?」
ダムラルは少し考えてから。
ダムラル「……、。お二人のご結婚のおりに……。それで、ほんとうに全てです。」
なるほど。
俺「分かった。それまで、元気でいてくれよ。」
ダムラル「ありがとうございます。」
翌日は、クラムやキャヘマと帝都へ向かって出発する。
キャヘマの国との通信のために魔法に詳しいロコナもセクタから引っ張って来た。
帝都には途中で馬車で一泊して翌日の到着。
そして帝都に入るとすぐに左大臣の家に向かう。気が重いが……エストリアが言っていた議会の件。
俺「え~と、。左大臣閣下は、お元気そうでなにより、、。」
左大臣「おまえには失望したよ。わしと交渉するつもりかもしれんが時間の無駄じゃ。帰れ! 」
俺「ネクトマとの和平を…… 」
左大臣「要らん。ネクトマとか言うテロ集団とは、これから戦争だ!
それで、おまえと右大臣の企みをぶっ壊してやるだけよ。 」
うわ~、。せっかく収まったのに、苦労が水の泡で、、。戦争になるのか?!




