襲撃者
と~っても時間が開いてしまい申し訳ありません。
期待されている方は少ないと思いますが、区切りを付けたいので、なんとか、もう少し……
いきなり襲って来た集団
その中の老人がミシャの首にナイフを突きつけて、。
「そこにいるヒロタン! 武器を捨て両手を上げて、こちらに来るのだ!」
目的は俺なの?
その言葉を聞いていたルナリスが駆け寄ってきて俺を引き留め「待ってください!」
行くなと?
だがミシャの顔が痛みにゆがむのが見えた。ナイフがミシャの首に食い込み白く細い首筋から一筋の血が流れ……。それは脅しでは無いという警告だ!
これでは考えてる余裕など無い。
俺は、持っていた瑠璃と剣を、心配そうなルナリスに預け、両手を上げて前に進み出る。
ミシャとの間に立ちはだかっていたライナさんも通してくれた。
進み出た俺に向かって、ミシャの首に剣をつきつけていた老人が
「よし! ヒロタン! すぐに後ろの馬車に乗れ! 魔王ミシャ! おまえもだ!」
そう言って彼らが乗ってきた馬車を示す。
そして、老人は帝国と魔王国の兵士たちに向かって
「追って来たら、こいつらを殺すぞ!」
もしかすると、俺は脱出のための人質? いや、良く分からん。
そういえば、この爺さんは見た事がある。確か、最初に帝都でネクトマの人たちと通信した時にシサム総統とかと並んでいた人だ。その後は見て無いが、。
つまり彼らはネクトマの関係者?……なのか?
でも、残っていたネクトマの人たちも啞然とした様子で、この騒ぎを見ているし、仲間……では無い?
剣を持った兵士っぽい、と言っても白い服で僧兵といった感じだが、二人が馬車の御者台に登り、俺とミシャは客室に乗せられる。キャビンにはあと一人の兵士、そして、老人、最後に怪しい瑠璃を油断無く構えたオレンジの服の女性が乗り込……もうとしたが、。
その女性が俺を見て、。いや、見てるのかな? やっぱり目は閉じたままだが。顔を俺に向けて、。
「わ、私が、その席でしょうか? その方のとなり……、ですか?」
そう言いながら顔をしかめる。
たしかに俺の隣しか座れそうに無い。俺とミシャの横だと狭いって事?
俺は出来るだけつめて空けてみたが、それでも乗り込む事に躊躇している。
この馬車の客室は4人乗りだと思う。向かい合わせに二人づつの席。ミシャと俺が加わった事で定員オーバーぎみ。
だが、ミシャは小柄だし、俺もたいして太く無い。オレンジの服の女性も細いから、2人席だとしても、俺とミシャの横に乗れない事は無いように見えるけど……。
老人は太めだし、兵士は大柄だから、向かい側はぜんぜん無理。
オレンジの服が「聖女である私は、男の方のとなりには座れません。枢機卿様がそちらに。」
俺の前に座っていた兵士が「ですから、さきほどから枢機卿様は前の席にと……。」と意外に可愛い声?!
背があるので、そう思って無かったが、今、俺の前に座っている兵士は声からすると女性らしい。俺より大きいけど、。
枢機卿と言われた老人が「いや、。わしは後ろ向きに座ると酔ってしまうのだ! そちら側は無理だぞ!」
確かに俺が座っている前側の席は進行方向に後ろ向きではある……が。
女性兵士が「今は、そのような事を言ってる場合では……。」
枢機卿「いいから、トリライヌは立て!」
そう言われて女性兵士がしぶしぶ立ち上がると、老人が女性兵士が座っていた奥に移動した。
そして、「ほれ、。ヒロタンと娘は、わしの隣に座れ。トリライヌは空いた前の席に!急ぐのだ!」
枢機卿「これで、キャヘマの隣は女のトリライヌじゃろ?」
そう言われて、ようやくオレンジの聖女が乗り込んできた。結果的に俺の正面。
キャヘマと言うのがオレンジ……の聖女?の名前らしい。その聖女キャヘマが、俺に「もう少し膝をひっこめていただけますか。」
目を閉じていても、俺に向けられた汚い物でも見るような視線を感じる。しょうがないので、俺は、できるだけ小さくなる。
「私は、男の方に触れてはいけないのです。」
宗教的な何か……かな?
聖女さんは金色の長い髪に真っ白い肌。そして額に銀色の金属のバンドでいくつかの宝石……を付けている。宝石では無く瑠璃かな? バンドには不思議な模様。クラムが持っていた槍の模様に似ている気もするが、そういう模様を付ける金属加工の工房があるのかな?
そういえば、あれが瑠璃だとすると目の代わりなのかもしれない。帝国の魔法兵も瑠璃で遠くを見る時は目を閉じていた。あるいは視力が無いために、ずっと瑠璃を使っている……という可能性もある。
だが、そうだとしたら、先ほどから『見る』ために、ずっと瑠璃に魔力を流していると言う事だ。それには、かなりの魔力が必要なはずだが、。
先ほどのコードに触れそうな瑠璃での攻撃といい、聖女というのは魔王的な魔力の持ち主なのだろうか?
彼女の顔は何処かで見た……、いや誰かに似ているような気もするが目を閉じているし、良く分からない。
全員が乗ると馬車は猛スピードで走りだした。
その瞬間にルナリスが瑠璃の通信で俺に、
< 必ず助けます! 待っていてください! >
そう願いたいものだが、全速の馬車では埋め込み瑠璃の通信可能範囲から、すぐに出てしまうだろう。
隣に座った老人が
枢機卿「完璧に計画通りだ!」
とドヤ顔
これまでの全てが、この爺さんの手の内だった……とでもいうのか?
女兵士トリライヌ「確かに、。信じられないほどうまく行きましたね。むしろ簡単すぎるというか……」
少し考えてから。
トリライヌ「この島の人間は、なにか、こう、、。ボケてませんか?。」
この島? つまり、彼らは、この大陸……、この島の人間では無い?
枢機卿「わしの作戦が完璧だっただけだよ。グハハハ!」
そう言いながら、ドヤ笑い。一方でオレンジ服は少し伏し目がちに、。
聖女キャヘマ「ですが、私には、このようなやり方は、。まるで夜盗のようです。」
枢機卿「何を言うか。 彼らは異教徒だぞ! 」
聖女キャヘマ「清王様は、たとえ異教徒と言えど、このようなやり方は……。」
枢機卿「経典を覚えていないのか? 異教徒は、こうした厄災を受けるべき存在だぞ! 」
聖女キャヘマ「経典、、そうですね。新約の経典では、。
ですが、私は、清王様の声を聞いています。
はたして新約の経典の異教徒のくだりは正しいのでしょうか?」
枢機卿「黙れ! それ以上は聖女と言えど異端審問の対象だぞ!
おまえは、黙って、わしの指示に従えば良い。」
キャヘマは頷いたが、微妙な表情。
そして、気を取り直したように俺に向き直ったキャヘマが。
「それにしても、貴方は……、。似てますね。」
え? 俺? 俺がだれかに似ているの?
枢機卿「そうじゃろう。わしも最初に見た時は驚いたのだが、そっくりだ!」
誰に?
聖女キャヘマ「そっくり……ですか? 私は、そこまで良く見た事が無くて。」
枢機卿「うむ。とても良く似ている。」
聖女キャヘマ「どういう事でしょうか?」
枢機卿「血筋的に関係がある……という事じゃないかな。
魔王は血筋だと言うし、先祖返りと考えれば不思議では無いぞ。」
さっぱり分からん。先祖と言ってるから歴史上の誰か……にでも似てるのか?
肖像画でも残ってる?
まあ、俺の容姿は以前の世界とは違う感じだし、今の俺に似ているとしても、俺自身とは関係無いだろう。
そして、このあたりで、お決まりの質問を投げてみないと……
俺「俺たちをどうするつもりだ!」
枢機卿「我々に同行してもらう。」
俺「何処へ?」
だが沈黙しか返ってこない。
強制的に連れて行くなら、教える必要は無いか。
こちらとしては少しでも情報が欲しいのだけど、。
しょうがないので、質問を変えて、
俺「なぜ、俺たちを狙ったのだ?」
聖女キャヘマ「魔力を、。あなた方はコードに縛られない魔力を使えるはずです。私たちにはそれが必要です。」
戦争でもするのかな?
何処ぞの国でさらわれた時と同じ?
でも、聖女キャヘマのさっきの攻撃はコードに触れてないの?
戦争なら、あれがあれば十分では?
馬が疲れてきたのか馬車の速度が落ちてきた。今の俺はドアの傍に座っているし、この速度ならドアを蹴り破って飛び降りれるかもしれない。
俺ひとりなら……
だが、今はミシャがいるからなぁ。ミシャを抱えて、それをやる……のは無理がある。
とりあえず、もっと情報を得るために会話を続けてないと、。
俺「なんのために、そういう魔力が必要なんだ?」
枢機卿「我々の国を救うため、。いや世界を救うため……と言えるだろうな。」
そりゃまた、すごいけど、。
俺「コード無視の魔力が必要なら俺だけで良いだろう。ミシャは解放してくれないか?
彼女は体が弱いのだ。」
俺の言葉に、ミシャが小さい顔を俺に向けて、小声で。
ミシャが「……、お義兄様……?」
実際、今のミシャは、先ほどの攻撃でだいぶ弱っている。
魔力で体を維持しているミシャは、その魔力を止められた事で急速に衰弱した。
俺「ミシャを解放してくれれば、俺は君たちに協力するぞ。」
聖女キャヘマはミシャを見ながら……、いや、相変わらず目は閉じていて顔向けただけだが
「体が弱い……?? 確かに、。その娘の体は酷い有様……ですね。」
何を見ている?
俺「分かるのか? 」
キャヘマ「ある程度まで服の内側も見えます。 ですので、その娘の体も……。」
どういう原理? 額の瑠璃は単なる目の代わり……じゃないのか!
キャヘマ「恐ろしいぐらい悲惨な状態に見えるのですが、。
生きているのが不思議なほど。……、。」
ミシャが手で隠すように自分の体を押さえて……、下を向いた。
キャヘマ「迷信だと思いましたが、もしかして魔王は人間では無い? 」
俺「ミシャは人間だよ。深い傷を負っている。 それだけだ。 」
キャヘマ「傷……ですか。もし、そうなら、確かに旅に耐えられないかもしれませんね。 」
枢機卿「それでも来てもらうぞ。ヒロタン 一人の魔力では足りないかもしれない。」
イヤな感じだ。
俺「もし、ミシャの身に何かあれば断じて協力などしないからな。」
そう言われて枢機卿は言葉につまったようだ。
馬車の中は、馬の蹄と車輪の音だけになる。
キャヘマが沈黙を破るように。
キャヘマ「お二人の関係が気になります。血を分けた兄弟……には見えませんが。」
枢機卿「そうだな。わしも、血縁でない二人が、二人とも魔王というのが気になっていたのだ。
魔王は血筋では無いのか?」
良く調べていると思ったが、そこまでは分かって無いのか。
まあ、秘密だよな。そもそも、俺が魔王というのが秘密なはずだが。
キャヘマ「血縁で無いとすると、。
つまり、お二人は男女の深い関係で、それを大瑠璃に認められた……という事でしょうか?」
うつむいていたミシャはキャヘマの言葉に顔を上げた。
しかし、驚いたな。彼らはそういう魔王の性質を知っているのか? 俺は魔王国の大瑠璃の光の中で聞いただけだが。
でも、しかし、誤解がある。俺との関係を大瑠璃に認められたのはミシャでは無くエミャルだ。
枢機卿「なるほど。キャヘマと清王様の関係と同じという事か。」
誰と同じだって?
キャヘマ「でも、見たところ、その……、。
まだ幼いようですし、しかも、その体で男女の深い関係というのが……。
ありえないのでは? 」
隣でミシャの体がこわばるのが分かった。ミシャは自分が否定されたと思った?
ここはミシャのためにも俺が、。
俺「何を言ってるか分からないが、俺はミシャで十分だよ。」
キャヘマ「そうなのでしょうか?
あなたは魔王の力を得るために無理をしているのでは?」
俺「いいや、無理などしていない。」
キャヘマは俺に顔を向けて「ヒロタンさんは男性としては、十分に良く出来てるように見えます。
それで、その壊れた少女というのは、何か、こう……。」
顔を上げたミシャが、聖女の言葉と顔の微妙な向きで何か気づいたらしく
ミシャ「あ、あの~、。聖女さんは服の内側が見える……のですよね?」
キャヘマ「はい。ある程度……。」
ミシャ「ヒロタンお義兄様の、ココも見えたりします?」
そういってミシャが恥ずかしそうに俺の下半身の一点を指さした。
おい! それっ!? 何処を指してる!!
キャヘマ「そ、それは、、。」
キャヘマは少し赤くなって……、目を、、いや顔を伏せ、。
その時、突然、キャヘマの額の金属バンドに埋め込まれた瑠璃のひとつが赤く光り始めた。そして、キャヘマは苦しそうに顔を歪める。
金属バンドに埋め込まれた3つの瑠璃のひとつ、。中央の瑠璃。
女性兵士のトリライヌがあわてた様子で「聖女様! 不浄な事を考えてはいけません!
清王様への裏切りになります!」
聖女キャヘマが俺から顔を背けて、。だが、まだ苦しそうに首をふる。
トリライヌ「聖女様! 素数です! 素数を数えるのです!」
聖女がもぐもぐと何やら数え始める。そういうのあるの?
枢機卿「う~む。キャヘマは聖殿から、あまり出た事が無かったからな。
男への耐性が無いのかもしれない。」
少しの間、もぐもぐやって、なんとか平静を取り戻した様子の聖女キャヘマが
「だ、だいじょうぶです。聖王の瞳も怒りを収めてくれました。」
額の瑠璃の赤い光は消えている。それが聖王の瞳?
だが、ミシャが少し悪戯っぽく「ほんとに?」
そう言いながら、また、俺の体のある場所を指さす。
聖女は慌てて目の上あたりにある2つの瑠璃を手で覆った。さきほど光った中央の物とは別の左右にある2つの瑠璃。
つまり、左右の二つが目の代わり? バンドに付いている瑠璃は3つ。
キャヘマ「止めてください!」
枢機卿「そうじゃよ。 聖女は心と体の純潔を守らんといかん。」
トリライヌ「その通りです! それ以上、聖女様を挑発するのであれば……。」
そう言ってトリライヌが腰の剣を半ばまで抜いて銀色の刀身を見せ「容赦しませんよ。」
ミシャは怖がって俺に抱きついてきた。
それも前向きからしっかりと……。
そのミシャの様子を見た聖女が
キャヘマ「まあ、。人前で、なんてかっこうでしょう! はしたない!
子供で、その体だとしても……。」
手で覆ったようで、しっかり見ている。瑠璃だから?
枢機卿「子供……ねぇ。わしの調査だと、その娘は8才と半年近い。
見た目はあまり成長していないがな。」
そう、元の世界だとミシャは16歳以上、たぶん、17才相当ぐらいなのだよな。
傷の影響で見た目は12歳以下程度なんだが。
しかし、じいさんは良く調べてる。
キャヘマ「な、なんですって、。その歳で人前で、そのように男性と抱き合うなんて。
不潔です!」
枢機卿「年齢を考えるとキャヘマが言っていたような深い関係と言うのもありえると思うが。」
キャヘマ「いいえ! その娘の体ではありえません! 」
良く分からんが、この聖女とミシャの相性は最悪だな!
ミシャが不安そうな目で俺を見るので、俺はミシャに、
俺「大丈夫、。ミシャは、とてもかわいいよ!」
俺の言葉に偽りは無い。
キャヘマ「もしかすると、ヒロタンさんが本当の女性を知らないから……でしょうか?
それで……、。」
枢機卿「その話はもうやめろ! また、清王の涙の罰に触れる事になるぞ。
だいたいキャヘマが男を知っているわけでも無いだろう! 」
キャヘマ「何を言うのですか!
あなたがた枢密院が無理やり私を清王様の妃にしたのですよ。
聖女が必要だからと、。
儀式の中で私は十分に女としての経験を得ています。」
既婚なの? 無理やりって事は政略結婚とか?
いや、でも、。良く分からん会話ばかりだ。
枢機卿「じゃが、それは……。」
キャヘマ「いいえ! 十分です!」
話していると、突然、俺の頭の中で瑠璃の通信が
ルナリス<聞こえますか?>
通信できると言う事は意外と近くにいる?
俺<おぉ! 聞こえる!>
ルナリス<今、そちらの馬車の轍を追っています。>
俺<ありがたい!>
そうか。追ってきてるのね。助かる……かな。
ルナリス<でも、彼らは何処に向かっているのでしょう!? もう、その先は、崖しか無いのですが……。>
俺<崖?>
ルナリス<島の外苑にある海へと落ちる崖です!>
この島の周囲は大半が海へと落ちる絶壁だ。そういう島の外周部に向かっている?!
どういう事?
俺<近いのか?>
ルナリス<はい! でも、今から、その馬車を止めます! 何かに捕まってください!>
おい!何をする気だ?!
ルナリス<行きます!>
俺は片手で窓枠に捕まり、もう片方の手でミシャを抱きかかえた。
突然、大きな爆発音がして、同時に馬車の前が大きく跳ね上がり、窓の外に炎と煙が噴きあがるのが見えた。
火薬を使ったな!
枢機卿「うわ~!! どうしたのだ!?」
キャヘマ「だ、だめ! 何も見えない!」
ネタをふってしまったしエミャルの成人式までは……続けます。




