別の戦い
時間が空いてしまって、すみません。忘れられる前に終わらせないと……
俺「ミシャが同意してくれるなら、ミシャの口から言ってくれ。俺も同じ意見というだけだ。」
ミシャ「分かりました。」
宰相『何を話しているのでしょう? 魔獣が来ないのであれば、この件は終わりで・・』
ミシャが決然として宰相さんに向かい
ミシャ「捕虜の解放を要求して、魔王国に対し宣戦を布告します!」
何だって??!!!
宰相『はぁ?』
ミシャ「お義兄様は、そう考えています。」
俺「えっ!」
いやいやいや、そんな事は考えて無いぞ!!!! 戦争なんかしたら人が沢山、死ぬのだぞ!
エストリア「驚いたわ! ヒロタンは、そんな事を考えていたの? 」
いやいや、ぜんぜん考えて無いけど。
それに、そんなばかげた戦争はエストリアが否定してくれるだろう。 それで、この話しは終わりだ!
エストリア「そうねぇ・・。
いいわよ!」
おい!!
エストリア「今の戦力比と、ミシャ様がこちら側という大義名分から言えば5日程度の電撃戦で落とせるでしょ。
それで、帝国が大陸全土を支配下における。」
恐ろしいヤツだな!
エストリア「そして、ミシャ様の権力基盤が無くなる。悪い話しじゃないわね。」
おまえは何を言ってるのだ!?
宰相『ちょ、ちょっと待ってください!
それはつまり、大陸の3分2を相手に国家元首抜きで戦争?!』
エストリア「開戦の準備があるので20日後で良いかしら?」
ミシャ「やむを得ません。20日後に開戦と言う事で最後通告としましょう。」
エストリア「分かっていると思うけど、魔王国の敗戦で、ミシャ様はふつうの人間になるのよ。」
ミシャ「はい。それで、ふつうの……」
ミシャは少し笑っているような。
宰相『止めてください!
ヒロタンは本当に恐ろしい暴君ですね。こんな事のために戦争だなんて・・。』
いや、俺は……
宰相『わかりました! 大至急、十人委員会を開いて、捕虜の解放を検討します。
ですので戦争だけは回避してください!』
エストリア「そうなの?」
残念そうに言うな! おまえはどこまで本気なんだ?
宰相『それと、お願いですから、ミシャ様は戻ってください。ほんとうにお願いします。
ミシャ様だけが狂暴なヒロタンから今の魔王国を守れるのだと思います。』
その後、少し小さい声で……
宰相『そしてホワイトドラゴンを……。』
通信はそれで終わってしまった。後半、俺は何も言っていないのだが……
とんでも無く悪者にされてる気がする……。
通信の後、ホテルに戻る途中で、
エストリア「まあ、宰相さんも戦争は避けるでしょう。エストマの件は、だいたい終わったかしら。
私は、急いで帝都での用事を片付けて共和国へ行かないといけないの。
時間が無いから、今日、これから、すぐに帝都に出発するわ。あとはお願い。」
だが、ルナリスが心配そうに「少人数での帝都までの移動は危険かもしれません。」
エストリア「魔獣の件は片付いたでしょ? 何があると言うの?」
ルナリス「街道で異様な集団が目撃されています。」
そういや、以前、俺たちが盗賊にあったのもこのあたりかな?
いや、それよりも。
俺「エストリアと相談したい事があるのだが。新国家エストマのお金の事で……。」
エストリア「そんな相談は時間の無駄よ。お断りだわ! お金は出さない! その必要は無いでしょ?
私は急いでるの! 」
そしてエストリアはルナリスに向かって
エストリア「近衛から少し警護の兵を貸して! 」
ルナリスもあきらめたように
「分かりました。20人ほどエストリアの護衛に付けます。
ルマリオ騎士団の人たちも残っていますし、こちらは大丈夫でしょう。」
残りの近衛部隊は10人ぐらい?
エストリア「ルマリオ騎士団はエミャルの護衛よね。エミャルも時間が無いと思うけど……。良いのかしら。」
そして、エストリアは、さっさと帝都へと出発してしまった。俺としては少し思惑が外れたわけだが。
エストリア以外の他の皆は翌日以降の出発と言う事で残る。特にミシャは、まだ体調が十分で無いし急がない方が良いだろう。もちろん、ミシャは、この後、魔王国へ帰るのだが……
少し心配だったので、ホテルのミシャの部屋へ行くと入り口に赤い鎧の騎士がいて。
騎士「宰相閣下にミシャ様を見張るように言われています。」
若干、めんどくさがっているようにも見えるが……。 え~と、この人は確か四天王のひとりの……
俺「ライナさん、でしたっけ? 」
ライナ「はい。あらかじめ、お断りしておきますが宰相閣下の指示で魔王様の外出は禁止です。」
まあ、いろいろあったからなぁ。ミシャは軟禁状態という事か。
俺「はい。」
つまり見張りは外からの侵入者に対する警護では無く、ミシャを中から出さないため!?
部屋に入るとエミャルも来ていた。
俺「エミュルも来ていたのか。エストリアが気にしていたが、エミャルは急がなくて良いのか?
確か共和国の……」
エミャル「そうですね。私も共和国へ行かないといけないのですが。その市民会議……がありますし。
でもミシャが心配で……。」
ミシャ「大丈夫ですよ!」
お金の件はエミャルに相談かな……。エストリアはいないし。
俺「ちょうど良いかもしれないのだが。共和国まで短時間で行ける方法があったら使えると思う?」
エミャル「もしかして、あの……、。飛行艇ですか? 帝都の近くに壊れたまま放置されてると聞きましたが。」
俺「エストマの人たちに協力してもらえる前提で提案があるんだ。ビジネスになると思う。」
エミャル「何を言っているのでしょう? 」
俺「エストマの人たちは、お金が必要みたいだし。 」
と言う事で、俺の計画を話してみた。ビジネスとして。
そして、その出資者としてエストリアかエミャルなんだが……。
エミャル「それ、。エストリアさんにも話したのでしょうか?」
俺「話そうとしたら、先に帰ってしまった。帝都に戻ってから、機会を見て話してみるつもりだ。」
エミャル「エストリアさんにお話しする必要はありません! エストマの皆さんも早く現金が欲しいでしょう!? 私が、ここで現金を渡して話しをまとめます。」
俺「ここで現金? 持ってるのか?」
エミャル「こういう時のために馬車に10万ゴールドほど積んできています。それを手付金にして、先に契約します。」
俺「いや、だが、契約といっても、相手は昨日までのテロ国家であって。そんな約束は……」
エミャルは少し考えてから
エミャル「やってみます。エストマの、どなたに言えばわかりますか?」
俺がシサム総統やアウラの事を話すと、エミャルはうなずいて、すぐに部屋を出て行った。
ミシャと二人きりになれたのは良いが、ミシャは少し不安そう。
ミシャが「大丈夫でしょうか? エミャル姉さん一人で……。
捕虜の解放については、まだ、魔王国から返事が来ていませんし、。
もし、争いになったら……。」
たぶん、ルマリオ騎士団の人と行くのだと思うけど、、それでも心配ではあるかな。
俺「そうだな。一応、俺も行った方が良いかもしれない。」
ミシャ「私も行きます!」
俺「体は大丈夫なのか?」
ミシャ「大丈夫です。……、それに、もし、だめだたったら、また、お義兄様に……」
俺「また、何?」
ミシャ「とにかく行きます!」
俺「いや、でも、ライナさんが外で見張っていて……。ミシャは外出禁止みたいだぞ。」
ミシャ「さきほど確認したのですが1階のトイレに小さい窓があります。私であれば通れると思います。」
脱走? 良いのか?
ミシャ「お義兄様は、トイレの窓の外で、少し待っていてください。」
良いのか? でも、こういう時のミシャは強情だから止めても無駄なのだろうなぁ。
俺がトイレの外で待っていると……、小さい窓が開いて……、ミシャが顔を出した……が。
でも、この窓は小さくないか?! 小柄なミシャでも……。
そして、やっぱり……
ミシャ「ちょ、ちょっと服が、ひっかっかって……。」
なんとか手を出したあたりで、もがいてる。
「ごめんなさい、手伝ってください!」しょうがないので、俺がミシャの手をひっぱると……
盛大にビリビリと布の裂ける音がして……。
なんとか脱出は出来たが、服が派手に裂けてしまった! かなりの露出度だぞ?!
幸い怪我は無いみたいだが。
俺「こ、これでは……、。戻った方が良いのじゃないか。」
ミシャ「いいえ。ここを、こう……、。抑えていれば大丈夫です。行きましょう!」
抑えていないと、服が落ちてしまって危ない感じなんですけど……。
今は秋の気温だし。とりあえず俺の上着をミシャにかける。
ミシャ「ありがとうございます。これで、大丈夫ですね。」
俺は少し寒い……。
ホテルの正面に出ると広場を横切って、エミャルとルマリオ騎士団の人たちが重そうな箱を持って、去っていくのが見えた。エストマの人たちが泊まっているホテルに向かうのだと思う。
エミャルはいつのまにかサングラスをかけている。いつぞやの共和国での出来事を思い出したが、もしかしてサングラスはビジネス用のアイテムなのかな?
後を追うが、ミシャがゆっくりなので追い付く……のは無理。
それに俺と、この状況のミシャは、見られたらまずい気がする。脱走しているわけだし。
なので、こっそりと尾行するように付いて行く。
エストマの人たちが泊まっているホテルの近くまで来ると……。
先に来ていたエミャルたちが、ホテルの前で入り口にいた兵士と何やら言い争っている。
俺たちも同じような物だが、エストマの人たちはこのホテル全体を借り切っているらしい。そして、入り口を味方の兵士で警備しているのだろう。
もちろん、兵士は怪しいヤツを入れないようにしている。そしてエミャルたちは十分に怪しい。
これは門前払いで終わりかな?
っと思ってみていると、。
エミャルたちが持って来た箱の中身を少しだけ開いて入口の兵に見せた。それを見た兵士は顔色を変えて中に飛んで行き……。少しして、兵士に呼ばれたであろうシサム総統とアウラ副長が入口に現れた。現金の力?
そして、二人はエミャルと話し始め、やがてエミャルたちをホテルの中に招き入れた。
ミシャが小声で「お姉さまたちは、中に入って大丈夫なのでしょうか? 中には武装した兵士が沢山いるのですよね。」
俺も小声で「入口の兵士はいなくなったし、俺たちもホテルに侵入してみるか?」
ミシャ「はい。こっそりと入って、エミャル姉さまたちがピンチになったら、この瑠璃で……。」
いや、だが、今ミシャが持っているそれは空間を切り裂く瑠璃だぞ! また、物騒な……。
俺「今の彼らは、あの鎧は着ていないようだし電撃の方で十分だよ。」
ミシャは少し考えて、瑠璃を持ち替えてくれた。
そして、俺たちは怪しい尾行状態のまま、こっそりホテルに入る。そのまま、入り口近くにある階段の影に隠れた。
ここならロビーのテーブルに座っているエミャルたちからは見えない。
だが、暖炉の近くで少し熱い。
熱いのでミシャは俺が貸した上着を脱いでしまったが……。それだと……
ロビーから声が漏れてくる。
エミャル「仕事をやってもらえるなら、これを差し上げると言っています。」
そういってテーブルに箱を置いたようだ。鈍い音がひびく。たぶん、あれが10万ゴールドの現金。
アウラ副長「お金は必要です。私たちに出来る事なら、おっしゃってください。」
エミャル「内容は、こんな感じなんだけど……。」
ロビーの話に耳を傾けていたら、とつぜん、ミシャが俺に抱き着いてきた! 驚いてミシャを見ると、そのミシャの視線の先に……
……いつの間にかネイリンがすぐ近くで俺たちを見ている。いつの間に? ぜんぜん気が付かなった!
夜中に侵入してきた時と言い、まったく気配の無い人だ。さすがプロ!?
そして、そのネイリンの表情は軽蔑というか、さげすみと言うか、汚い無い物でも見るように俺たちを眺めて、。そして少し抑えた声で、。
「こんなところで、お二人で何をされているのでしょう?」
ミシャは破れた服のまま、それを抑える事もせずに、俺に抱き着いている。おかげで、背中から、かなりの部分まで肌が、むき出しに……。幸い俺に抱き着いているのでミシャの体の表側にある傷は見えない。
俺「すまん。おれたちの事は黙っていてくれないか。」
俺たち二人は暖炉の暖かさで少し熱を帯びている。しかもネイリンから見ると、ほぼ裸のミシャ……
ネイリン「そういう、ご関係だったのですね!? ヒロタンさんの悪趣味や変態趣味を、とやかく言うつもりは無いのですが、こんな場所で? 」
なんか誤解していないか? ミシャに失礼な言葉も入っていた気がするが。
ミシャが少し伏せた顔を赤らめて「ごめんなさい。でも、秘密にして頂けると……。」
ネイリンはため息をついて、一度、その場を離れ、。そして、どこからか衝立を持ってきた。
ネイリン「そもそも、それでは隠れてなどいません!」
そして、俺たちの前に衝立を置いて、。
ネイリン「これの影から出ないでください。お願いしますね。風紀にかかわります!」
そう言ってから、ネイリンはエミャルたちのテーブルに加わった。
シサム総統がネイリンに「遅かったな。」
ネイリン「ごめんなさい。さかりのついたネコたちが入り込んでいたみたいで。」
ニャーとでも鳴けば良いのかな?
シサム将軍「まあ、あまり良いホテルでは無いからな。」
エミャル「その、今いらした方のために、もう一度、話さないといけないでしょうか?」
ネイリン「いいえ、。大丈夫です。続けてください。」
エミャルが説明している間もネイリンは近くにいたし。聞いてたよね。
アウラ副長「そうですね。やってみないと分からない所はありますが、理論的には出来そうです。その飛行艇と言う物を調べないと断言できませんが。」
エミャル「やって頂けれるのであれば、この、お金は手付金として置いていきます。」
ネイリン「そうしてもらえると助かります。実は、ここのホテルの払いも手持ちの武器を売らないと難しい状況で。」
エミャル「ただし、お金を置いていくにあたって、契約の担保となるものが必要です。」
シサム総統「担保? 何かを差し出せと?」
エミャル「はい。私としては、このビジネスを他の方に取られないための保証が必要です。そして、その保証が得られるなら、このお金はあなたがたの物と言う事です。」
シサム総統「しかし、我々は、10万ゴールドに見合うような物など持っていないぞ。」
見えないけど、エミャルが少し笑ったように思えた。
エミャル「こうした場合、相応の価値は人にあるのじゃないかしら? たとえばあなたです! 」
シサム総統「私?」
エミャル「あなたを人質にさせて頂く。ただし、お強いみたいだから奴隷化のデバイスを埋め込ませて頂きます。」
シサム総統「わ、私が奴隷? ……、。」
エミャル「一時的に」
シサム総統「……、。ふ~む。奴隷化デバイスの主人は、きみ、、になるのか?」
エミャル「いいえ、私は用事があるので……、。そうね。
リマーニャ! お願いできるかしら? 」
エミャルの傍らに立っていたルマリオ騎士団の女性騎士が驚いて
「私……ですか? そういった事は私では無く副隊長の方が……。」
エミャル「副隊長だと、いざという時に殺せないでしょ。この総統さんは歴戦の将軍です。痛みぐらいなら振り切って逃げますよ。容赦なく殺せる人じゃないと抑えられない。」
リマーニャ「それで、私?」
エミャル「知ってますよね? この総統さんは、帝国がセクタを落とした時、城を攻めた将軍です。」
リマーニャ「聞いてはいましたが、。」
エミャル「そして、この将軍の指示で城にいた人たちの多くの人が殺された……。」
シサム総統は顔をしかめて、。
シサム「その騎士さんは以前のセクタ王国と何かあるのかな? 」
エミャル「リマーニャだけじゃないけど、。
シサムさんが、そのあたりの事情まで知る必要は無いわ。
リマーニャは遠慮無くあなたを殺す。だから逃げる事ができない、。
それを理解頂ければ良いだけ。」
シサム「うむ。あの時の私は軍人としての職務を実行しただけなんだが、。 」
エミャル「そうでしょうね。
ですから、リマーニャは、この人を生きて逃がさないという職務を実行してください。」
リマーニャ「そうですね。分かりました。そうします。 」
リマーニャと呼ばれた女性騎士は、はっきりと言い切った。
いや、良く分からん。エミュルと、この女性騎士は何か関係あるのか?
エミャル「ビジネスがうまく行った場合は、毎節、この額以上を渡せるでしょう。3節後に総統さんは解放します。」
シサム「逆に問うが、。我々が、エミャル殿の、その言葉を信じる根拠は何処にあるのかな?」
エミャル「別に信じて頂かなくてもかまいません。あなたの首を、この10万ゴールドで買うと思って頂いても結構です。」
アウラ「そういう事なら止めるべきですね。総統の首をお金で売るなど……。」
シサムがアウラの言葉を遮って。
シサム「もう、ひとつ、聞いても良いかな?」
エミャル「なんでしょう?」
シサム「君は、初めにヒロタンに言われたと話していたが、このやり方もヒロタンの考えなのか?」
エミャル「……。あの人は、もっと甘い……やり方しかしないでしょう。でも、これがヒロタンさんのためにも正しい事です。」
シサム「正しい……か。ヒロタンに責められる事は無い……と。」
エミャル「あの人なら分かってもらえると思います。」
いや、良く分からん。特にエミャルが分からん。
シサム総統は少し考えていたが、やがて決意したように、アウラに向かい。
シサム「後を頼む。ネイリンとアウラと……。私の副官も残っているから大丈夫だろう。爺さんは消えてしまったが……、。皆で頑張ってくれ。」
ネイリン「それが総統のご指示なら……。」
アウラ「いや、無理ですよ。」
シサム「10万ゴールドは貴重だろ?」
アウラ「そうですが……。」
ネイリン「そういえば、あの老師は何処へ行ったのでしょうね。」
アウラ「我々への興味を失ったのでしょう。魔法の技術は優れていましたが、怪しい人たちでしたし、いなくなって良かったと思いますよ。」
そして、シサム総統は、エミャルとルマリオ騎士団に連行されてホテルを出ていく。
10万ゴールドの箱を残して。
良いのかな? う~ん。
この後、この人たちとの交渉は誰とやれば良いのだろう。
ミシャも唖然とした感じで、
ミシャ「 なんだか、すごい、お話しになりましたね。
そ、そういえば、。エミャル姉さまは……。
もしかすると、お義兄様は分かっていないかもしれないのですが、エミャル姉様について、重要な事があります。」
俺「へ?」
ミシャ「 この節の20日、つまり、18日後がエミャル姉さまの9才の誕生日なのです。」
知らなかった。この世界での9才は元の世界では18才……っと少しぐらいで、、。そして、たしか、その9才の誕生日は成人になる儀式でもある。
俺の、あきらかに知らなかったという顔を見て……。
ミシャ「エミャル姉さまの親族は私しか残っていません。本来ならお祝いに行きたいのですが、無理でしょう。 近くにいてエミャル姉さまを祝えるのはお義兄様だけです。」
ミシャは時々、妹と言うより姉のような事を言う。
ミシャ「ですので、お義兄様が……。」
俺 「あー。できるだけ盛大にお祝いしないとね。 」
ミシャと話していると、エミャルたちとの話しを終えたネイリンが、戻ってきて俺たちを覗きこみ
ネイリン「まだ、やってるのですね。」
ネイリンに覗かれるとミシャは反射的に俺に抱き着いてくる。誤解されるから止めて欲しい。
ネイリン「こんな所で……、いつまで……。」
ミシャのやぶれた服は俺に抱き着いた事で、再びめくれてしまい……。暖炉の熱で上気した肌が露わになって。
ネイリン「このホテルの空いてる部屋にでも案内してもらいましょうか?」
空いてる部屋で何をしろと言うの?
ミシャ「ありがとうございます。部屋があるのでしたら、お願い……、」
ま、まて!
俺「いや、要らないからね。」
とか話していると階段の上から声が。 サミアスの声?
サミアス「帝国の人たちが来ていると聞いたのですが? ボクを迎えに?」
そして階段を下りて来る。
階段の下からネイリンがサミアスに「エミャルさんたちは帰りましたよ。……、。あ、でも、。」
降りて来たサミアスがネイリンの視線を追って
サミアス「そこに誰かいるのですか?」
ネイリン「だめです! あなたは見てはいけません! 」
だが、既にサミアスが階段の影を覗き込んで、。
サミアスが見たのは俺と、俺に抱き着いている半裸のミシャ……
大きな目を見開いて凍り付くサミアス
ネイリン「サ、サミアスは落ち着いてくださいね。男なんて、そんなものですから。」
いや、サミアスも男だぞ。
サミアス「……、。し、知ってますよ。魔王様でしょ。ヒロタンさんは立場上、仲良くしているだけですよね。」
そうだったかな?
俺「ま、まあ、あれだ。これはつまり、そんな感じで……、。
サミアスも一緒に戻る事にしよう。」
ミシャ「空いている部屋……、。」
だから、ミシャは何をする気?
サミアス「はい。戻りましょう! 」
近寄ってきたサミアスが痛いほど強く俺の手をつかんで、俺を引っ張り出そうとする。俺はあわてて上着をミシャにかけた。
そして、俺たちのホテルに戻ると……
ミシャの脱走でホテルはすごい騒ぎ……になっていた。
まあ、なんとか収めたが……。
良く朝、出発のために広場に集まった馬車群れ。
しばらく会えなくなるので、もう一度、ミシャに分かれを言いに行こうとしたら、ライナさんが剣を抜いて俺の前に立ちふさがり「それ以上、近づかないでください!」
ライナさん以外にも魔王国から来ていた兵士たちが、俺の前に押し寄せてくる。俺は完全に危険人物になっているらしい。
ライナ「あなたをミシャ様に近づけるなとの宰相閣下のご命令です。」
昨日の今日だと、そうなるわな。
俺「いや、一言、別れの挨拶を言うだけで……。」
ライナ「ダメです! それ以上、近づかないでください!」
あきらめて振り返ると、エミャルが特別に目立つ豪華な馬車に騎士たちにかしずかれて乗り込むのが見えた。後ろの別の馬車にはシサム総統が連行されるように乗せられている。なんとも哀れな感じ。
エミャルたちは、馬車に乗り込むと広場から出発していく。
エストマの人たちも、馬車に残りこみ、別の方向へ次々に出発していく。
これで、この町での騒ぎは終わりという事だ。
ルナリスが近寄ってきて俺も馬車にのるように言ってくる。
ミシャへの分かれの挨拶はあきらめるしかないか……。
そう思って、ルナリスが指示する馬車に向かおうとした……が、
と、その時、突然、ミシャたちの後ろから1台の馬車が猛スピードで広場に突っ込んできた。明らかに不穏な馬車。そして、ミシャの近くまでくると、その馬車を飛び降りた数人の人間がミシャに向かって走って来る。
魔王国の兵士は、俺を警戒するあまり、その方向は手薄だった。それでも何人かの兵士が侵入者の前に立ちふさがる。侵入者は数人だし、それで十分……。
だが、立ちふさがった兵士が次々に倒れていく。眠るように目を閉じて崩れ落ちて丸くなる。
何かの魔法? 魔法で攻撃出来るの? コードに触れてないか?
襲ってきた人たちは真っ白い服をまとっていたが、一人、鮮やかなオレンジの線が入った白い服を着た長い髪の女性。彼女が、なにかの瑠璃を構えていて、おそらく、兵士たちはあれにやられたのだろう。そんな物があるなんて……! 彼女は目を閉じているようにも見えるが、……、普通に走ってるし、もしかして閉じてるように見えるだけで薄目を開けてるのかな?
そのままオレンジの女性が瑠璃を構えてミシャに近づくと、ミシャのすぐそばにいた兵士も倒れた。ミシャは特に影響されていない様子。そして、そのミシャは、何かの瑠璃、恐らくは攻撃用の瑠璃を取り出して使った……。が、何もおきない。
もう一人の別の侵入者が瑠璃を構えてミシャに向けている。老人のように見えるが身のこなしは若い。
もしかすると、あの瑠璃はフーコートと同じ、魔力を封じる瑠璃? だとするとミシャはまずいかもしれない!
恐れた通りミシャは力なく膝をついた。魔力を封じられたミシャは体を維持する事ができなくなるし、逃げる事もできない。
かなりまずい!
ライナさんたちがミシャに向けて走り出していた。俺も走り出した、が……
だが、既に襲撃者の一人、魔力を封じる瑠璃を使っていた老人がミシャを捕まえて、ミシャの首に剣を突きつけた。
そして、ミシャに近づこうとするライナさんたちに向けて大きな声で
「こいつの命が惜しかったら、それ以上近づくな! 」
ライナさんたちが止まった。
老人は、ライナさんたちが止まったの確認してから
「そして、もう一つ!」
ミシャを人質に、なにやら要求する気?
まあ、目的がミシャの殺害……で無くて良かったが。
「そこにいるヒロタン! 武器を捨て両手を上げて、こちらに来るのだ!」
へ? 俺?
ルナリスが駆け寄ってきて俺を引き留め「待ってください!」
だがミシャの顔が痛みにゆがむのが見えた。そしてミシャの細い首筋から一筋の血が流れる。脅しでは無いという意味だ!
これでは考えてる余裕など無い。
俺は、持っていた瑠璃と剣をルナリスに預け、両手を上げて前に進みでる。ライナさんも通してくれた。
ミシャの首に剣をつきつけていた老人が俺を見て
「よし! ヒロタンは馬車に乗れ! 魔王ミシャ! おまえもだ!」
そういって彼らが乗ってきた馬車を示す。
振り返って帝国と魔王国の兵士たちに
「追って来たら、こいつらを殺すぞ!」
この爺さんは、見覚えがある。確か、最初に帝都でネクトマの人たちと通信した時にシサム総統とかと並んでいた人だ。
つまりネクトマの残党的な人たち?
良く分からんが、ネクトマの関係者……なのだろう……か。
だが、出発直前で残っていたネクトマの人たちも啞然とした様子で、この騒ぎを見ている。
今回の件は既に終わったと思って油断していたかもしれない。こんな事になるなんて……!!!




