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交渉

 自称新国家との交渉のためにダフライルの街に付いた。

 夕食の時に、サミアスから不穏な通信が入ったので、エストリアやルナリスに相談してみたが、既に日も暮れてしまったし、明日、捜索してみようという事で、その日は寝る事にした。


 そして、ベッドに横になると、


 「静かに! 声を出したら殺します!」


 突然、闇の中からの声が。そして、俺の喉元で短剣が光る。いつの間に? 暗殺?

 油断した!魔獣の警戒はしていたが、まさか暗殺者とは! そういうワナだったの!?


 いやでも、殺す気なら既に短剣は俺の喉元に刺さっているだろう。


 「命が惜しかったら、答えてください。」


 目的は情報? 俺たちの弱点を探る?


俺「わ、、わかった。」


 そういえばこの声は、通信の際にシサム総統の右にいた女性。そんな事をする人には見えなかったが。

 (まくら)の裏に、電撃の瑠璃(デバイス)を隠してあるのだが、喉元に短剣を突きつけられていては、手を伸ばす(すき)も無い。


女「どうやってサミアスを支配しているのですか?

  あなたが奴隷にされたサミアスの主人だと聞きました。」


 何の話だ? 奴隷の瑠璃(デバイス)の事? 確かにサミアスに埋め込んだままだが。


俺「奴隷の瑠璃(デバイス)の事か?」


 この人は奴隷の瑠璃(デバイス)を知らないのかな? この世界では一般常識だと思ったが。


女「とぼけないでください。

  奴隷の瑠璃(デバイス)の範囲外でも、サミアスはあなたに支配されています。

  その方法を白状してください。」


 何それ? 知らないよ!


女「サミアスは組織にいたときも任務に苦しんでいました。

 組織が壊滅して、なお、あのような仕事を続けるなど、考えられない事です。

 いったい、どういう(ひど)い手段で強制しているのでしょう?」


 う~ん。まあ、確かに俺が危ない仕事をさせてるわけだが。

 それは、つまり俺は悪いヤツって意味で言ってるのかな? まあ、そう・・かな?


俺「すまん。だが、俺が依頼したのは暗殺では無くて・・。」


女「無駄話しをする余裕はありませんよ。サミアスの支配を解くか、ここで死ぬか、すぐに選んでください。」


 ナイフが動き(のど)に痛みが走った。首筋(くびすじ)を血が流れるのが分かる。まだ傷は浅いようだが(おど)しでは無いと言う意味だろう。

 これは本格的にやばい! なんとかごまかさないと死ぬ!

 だが、そもそも、支配を解くか死ぬかの二択(にたく)なのだから死にたく無ければ答えは一つになる。


俺「分かった支配を解こう。」


 だが、どうやって? 支配って何だ?


女「どうやって解除するのですか?」


 知らないよ!あんたに言わされてるだけなんだから聞かないで欲しい!


俺「サミアスと通信させてくれれば、、解除できる。」


 ウソだけど。通信できればサミアスと相談できるし、そうすれば何か策があるかもしれない。

 まだ、近くにいるなら瑠璃(デバイス)の通信が出来るはず。


女「今は薬で眠らせています。通信は無理ですね。」


 終わった! それでは通信できない・・。

 俺は、一瞬、目を閉じて息をもらす。思考が行き(づま)って、いろいろと、どうでも良くなってくる。


俺「無事なのか?」


女「組織内でバレバレに()ぎまわっていた時より、私が保護している今の方が安全でしょうね。」


 保護? サミアスに対して悪い事をする意図は無いと言う事か。

 どちらかと言うと、彼女にとって悪人は俺という想定かな。


俺「すまん。無理な事をやらせてしまったようだ。申し訳ない。」


女「……。なにを今更!?」


 まいったな。

 俺が死んでも皆がなんとかしてくれるだろう……か。


俺「残念だが、通信も出来ないなら、その支配……の解除はできない。」


 完全に()みだ!


俺「まあ、確かに俺が悪いヤツらしいし。

  痛く無いように頼む。」


 あきらめて目を閉じてみたが……。そう思ってみると、あまり殺意が感じられない。


俺「殺さないのか?」


 目をあけてみたが、女は何か考えているらしい。


女「あなたを殺すと言ったらサミアスがひどく嫌がりました。

  もちろん、あなたに支配されているからだとは思いますけど……でも、。

  どうも、私にはあなたが……」


 なんだか、微妙に暗殺者らしくないな。


俺「驚いたな。そんなに仲間の感情が分かって、やさしいのに……。

  サミアスの仲間という事は、つまり暗殺を仕事としてやっていた?

  とてもそんな感じには……」


 俺の言葉に少し笑っている!?


女「仲間……ですか。似たような事をしていた、、と言えばそうですけど。」


 サミアスとは違うタイプだが魅力的な感じだし、それはつまり、そういう色仕掛け(ハニートラップ)の人?

 それって。


俺「サミアスと同じって事は、もしかして、実は君も(おとこ)!?」


 喉に痛みが走る!


女「何を言ってるのですか!?やっぱり殺そうかしら!」


 うわっ。今度は本気で殺気がぁ!!


俺「あ、あう、、。ご、ごめんなさい! ぜんぜん女性です! とても魅力的な女性です!」


女「誤解があるようですね。私は彼の仲間だったわけではありません。

  昔の私は彼の……敵だったでしょうか。組織としては。」


 良くわからん。


女「あなたの方が変ですよ? サミアスを使って陰謀を企む悪の皇帝にしては……。」


 うん。そんな感じの脳内設定じゃないかと思った。


俺「見方によっては、そう見えてもしかたない立場だけど。」


 かすかな笑い声が聞こえた。


女「本当に無駄話は終わりです!

  明日の朝、サミアスを目覚めさせるので通信で支配を解除してください。

  もし解除されなかった場合は(あらた)めて、あなたを殺しに来ます!」


 そう言って俺から離れた。離れた瞬間なら枕の裏の瑠璃(デバイス)で攻撃できそうだったが……。なんだか、やる気になれなくて、闇の中に消えていく彼女を見送った。

 もう一回来ると言われても、当然、明日には警戒を厳重にするわけだし無理だと思うぞ。


 翌朝、喉の傷を皆に聞かれたが、誤って髭剃(ひげ)りで切ったとか言ってごまかした。

 そして、約束通り、サミアスと通信できるようになったが。


俺<大丈夫か?>

サミアス<捕らえられてますけど、僕は大丈夫です。それより、ヒロタンさんは大丈夫ですか?>

俺<昨夜、ちょっと脅迫されたけどね。特に問題は無い。>


 一時は怖ったけど……。


サミアス<ごめんなさい。僕のせいですよね。>

俺<いや、俺が悪い。今回、依頼した事は忘れてくれ。>


 これは任務の解除であって支配の解除じゃないが、それで良いのかな?


サミアス<ヒロタンさんが、そういうのであれば……。どちらにしても、あまりうまく出来ていませんし。>

俺<今、サミアスを捕らえている人……が誰か分かるか?>

サミアス<以前の帝国の諜報員です。確かネイリン捜査官。犯罪捜査で何回か僕と渡り合っていました。>


 うわ~。想像とぜんぜん違った!

 って言うか、そういう人がテロ国家で何をしているの?


俺<今は、その人に従ってくれ。その方が安全らしい。>

サミアス<……分かりました。>


 少し残念そう?


サミアス<助けに来てはくれないのですね。>

俺<すまん。誤解されているみたいなので、今は合流しない方が良さそうだ。

  交渉がうまくいけば、なんとかなると思うので、それまではおとなしくしていてくれ。>

サミアス<……はい。>


 その日、ネクトマの使節も到着した。数は少ないが全員が武装していて、かなりものものしい。


 すぐに交渉と言う事になったが。


 交渉は街の中心にある集会所で行われる事になった。かなり頑丈そうな建物だし、外から魔獣で襲っても簡単には崩れないだろう。

 建物はそれで良いのだが、直接交渉を行う部屋に入る人数は双方3名という条件で押し切られた。俺とミシャで(すで)に2名なので、あと1名しか選べない。

 あと1名は、。最悪、戦うような事があっても人間相手ならミシャと俺がいれば十分すぎるだろうし。エミャルにはできるだけ近くにいてもらう事にして、。残り一人は交渉に()けたエストリアにお願いした。ネクトマ側は以前の通信の時の4名から老人を除いた3名。


 かなり広い会議室の大きなテーブルの両側に双方3名づつの計6名が座る。それ以外の随員(ずいいん)は、交渉が始まる前に外に出て、大きな扉が閉じられた。そして内側から厳重にロックされる。

 シサムの左側の男がミシャをにらんでいる。


シサム「その娘が魔王? 本当か? 良く分からんヤツらだな。」

男「見た目で油断しないように。」

シサム「フーは知ってるわけか。」

男「……」

ミシャ「フーコート司祭ですよね。ネクトン派の。」


 なんだ?ミシャは知ってるのか?


フーコート「あなたには、仲間がずいぶんとやられました!」

シサム「落ち着け。戦争とはそういう物だろう。今日は、そういう話しでは無いぞ。」


 さすが職業軍人か。


ネイリン「傷が残っていますね。ごめんなさい。」

 と俺に向かって。しかし、昼と夜で性格(キャラ)が変わって無い?

俺「いえ、たいした事はありません。それよりもサミアスは。」

ネイリン「あなたが約束通りにして下さっているようですので、何も……。彼は仕事をあきらめると言っています。」

 そりゃ、良かった。


シサム「なんの話だ?」

ネイリン「個人的な雑用です。気にしないでください。」とシサムに答えた後、俺たちに向かって

  「それで、お金と食料は、持ってきているのでしょうね?」

エストリア「近くにあります。」


 さて、ここからだ!

 魔獣の操作について、聞き出す必要がある。誰が、どうやって操っているのか。そして、それを止めるにはどうすれば良いのか。

 どちらにしても、魔獣を抑える事が和平の条件でもある。


俺「我々としては魔獣をこれ以上、使わないという保証が必要です。そのために……」

 俺の言葉は突然、強い言葉で、さえぎられた!

フーコート「必要無い! 金と食料と、その悪魔を置いていけ!

   さもなければ魔獣で攻撃する!」


 へ? 交渉する気なし? 魔獣? どこにいるの?

 もちろん、何か(たくら)んでるとは思ったが、いきなり何を言ってるの!


俺「和平が成立しないのであれば、何も渡せません。

  それと、いかなる条件でも、ミシャ……、魔王様を渡すなど出来ません。」

シサム「フーは落ち着いてくれんか?」

俺「交渉する気が無いなら帰りますよ。」

ネイリン「待ってください。我々にはお金と食料が必要です。」


フーコート「ふん。ネイリンも総帥も甘いな。」


 さっきから不穏な事を言っているが、何があると言うのだ? 魔獣で攻撃?

魔獣が近づいているという報告は無いし、外から、この建物を破壊したら全員が被害を受けるぞ。


フーコート「おい。ヒロタンとか言う皇帝!

 この場で一番強いのは、その悪魔だと思ってるだろ?」


 悪魔ってミシャの事? いや、そんな事は無い。


フーコート「魔王はコードを無視して凶悪な魔法を使えるのだから、一瞬で俺たちを殺せる。

  それで余裕というわけだ。」


 何が言いたいのかな?


フーコート「確かに魔王の魔力は強大だ!

      だが、俺たちは、それをはばむために長年に渡り研究してきた!」

シサム「何を言ってるのだ?」

フーコート「総統! 今、ここで、こいつらを捕らえて、ごらんに入れましょう。

      魔王と皇帝を人質とすれば、全てが手に入る!」


 そういいながら、瑠璃(デバイス)のついた(スティック)を取り出すとミシャに向けた。瑠璃(デバイス)が怪しく(ひか)(はじ)める。


フーコート「これを()っていたのだ!この距離なら悪魔の魔力をすべて封じる事が出来る!

  つまり単なる小娘(こむすめ)って事だ! ぐははははっ。」


 違う! 魔力を(うしな)ったミシャは単なる少女……では無い。魔力で体を維持しているミシャから魔力を奪ったら……。

 ミシャが(あお)ざめてふらつく。

 魔力を奪われたミシャは生命の維持もできない!


 さらにフーコートがもう一本の(スティック)を取り出すと、(うし)ろから、オオカミのような(けもの)が飛び出してきた。

 フーコートの鞄の中に入っていたようだが大きさを考えたら、ありえない!どういう状態で入っていたのだろう!?猫型ロボットのポケットかよ!

 そして異様な目の(ひか)りから言って普通の(けもの)では無い。これも魔獣か!

 良く見るとやせ細っていて骨が浮き出ている。むしろ骨だけが動いているようだ。何、これ!?

 骨だけだから折りたたんで入っていた?


俺「()めろ!」


 言いながら、俺は電撃のシャワーの瑠璃(デバイス)を取り出し振った! 空中から細い雷が出現してネクトマの3人と(けもの)を襲う。これで全員気絶して……

 だが、彼らの鎖帷子は電気を逃がす避雷針の効果があるようだ。驚いてはいるが、あまりダメージは受けていない。獣の方は、しびれたらしく身を震わせて止まった。口から血が流れているが、電撃にそんな効果は無い……。この魔獣は初めから(こわ)れてるのじゃないか?

 フーコートは俺の電撃を見て、


フーコート「今の攻撃は!? お、おまえは、何者だ!?」


 問題はミシャの魔力を奪っているフーコートの瑠璃(デバイス)!それは、止まっていない。

 ミシャがくずれ落ちて、苦しそうに手を差し伸べている。


俺「いますぐ、ミシャの魔力を戻せ! さもないと殺すぞ!」

フーコート「そ、そうか! おまえが魔王で、となりの少女は偽物(にせもの)だったのか!

 我々はすっかり(だま)されていたのだな!

 そういえば最後の報告にあった幻影の男とやらが、おまえに似ている!」


 どういう解釈? フーコートが、ミシャに向けていた瑠璃(デバイス)を俺に向けた。

 俺の魔力が封じられた? らしい。 試しに瑠璃(デバイス)を振っても何もおきない。


 そして魔獣が起き上がった。電撃の効果は一時的だったようだ。

 剣を抜いてみたが、こんな魔獣相手に俺に何が出来るだろう。不気味に開いた口の中で魔獣の牙が光る。その口から(よだれ)のように血が流れ出して、不気味だ。

 電撃などでは無く最初からフーコートを殺すつもりで攻撃すべきだった。俺の失敗だ。


 フーコートは俺の魔力を抑えている瑠璃(デバイス)以外に、もう一つ、端末(ターミナル)風の瑠璃(デバイス)で魔獣を操作している。2つの瑠璃(デバイス)の同時操作は普通の人間にはかなりの負担だと思うが、たいしたものだ。


フーコート「捕らえるつもりだったが、こうなったら殺すしか無い。」

シサム「おい! どういうつもりだ? やめるんだ!」

フーコート「うるさい! 邪魔するなら、おまえも殺すぞ!」

シサム「うっ……。」


 フーコートはシサムたちからも距離を取りながら、部屋の入口を(ふさ)ぐように陣取った。逃がさないという事だろう。

 この状態で、俺に出来る事は、この魔獣と刺し違えるぐらいか。魔獣以外に強力な暴力装置は見当たらない。俺の(にせ)勇者のレベルでも刺し違えるぐらいはできるかもしれない。

 こんな事なら、もう少しレベル上げをしておけば良かった。


俺「エストリア! ミシャを頼む!」

エストリア「無理よ! 何をする気!」


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