使節団
新国家ネクトマの要求に従って、ダフライルの街での交渉に応じる事にしたのだが。
俺「それは、つまり、和平の可能性もあると言う事だよ。」
エストリア「どうでしょうね。」
ミリア「わたくしも賛成しかねるのですが・・。」
皆はあまり賛成してくれない。
俺「ミシャを呼んできてくれないか。この通信室で、このまま魔王国と通信しよう!」
ほどなくミシャがやってきたので事情を話すと・・。
ミシャ「そうですね。和平の可能性あるなら、行くべきだと思うのですけど。
国としての交渉なら私の一存では決められません。」
俺「あー。これから、一緒に魔王国と通信する・・で良いかな?」
幸い、すぐに魔王国の宰相閣下とすぐに繋がったが・・。
宰相『ミシャ様は帝都の魔王国大使館にいらしていないようですが、どうされたのでしょう?』
そんなものが出来たのか?
国交が正常化されたのだからあたりまえか。
ミシャ「ごめんなさい。昨夜は、お城に用事があって、遅くなったものですから。」
どういう用事かな?
宰相『心配していたのですよ。今日は行ってくださいね。』
ミシャ「・・。はい。」
今夜はゆっくり休めそうだ。
俺「それで、新国家とやらの事なのですが・・。」
先ほどの通信の内容を説明してみたが。
宰相『そんな所へミシャ様を連れて行くなど危険すぎます! どうみても罠でしょう!
そもそも、そのような交渉は必要はありません!』
俺「魔王国でも空飛ぶ魔獣による被害が出ていると聞いていますが。」
宰相『魔王様がお戻りになれば解決できます。』
ミシャ「私が? 10匹もいましたよ。」
宰相『お忘れですか? ホワイトドラゴンを目覚めさせる季節です。
ですので、早く魔王様に戻って欲しいのです。』
何それ!? なんだかすごいファンタジーなんですけど。
ミシャ「そうでしたね。でも私に出来るかしら・・。」
宰相『ミシャ様も成長されているはず。戻ってホワイトドラゴンの儀式を試みてください。』
ミシャ「そうだわ。お義兄様とエミャル姉さまを連れていけば、あの儀式が成功するのじゃなくて?」
宰相『そ、それはそうかもしれませんが・・。』
何の話しかさっぱり分からんぞ!
俺「良く分からないのですが、ホワイトドラゴン?
なんか、こう、正義の巨大生物みたいな物ですか?」
宰相『ヒロタン殿は夢のあるお話しをされますね。』
ミシャ「お義兄様は、おとぎ話を信じてしまう悪いクセがあります。」
俺「へ?」
ミシャ「ですが、現実に、そうした事は、ありえません。
ホワイトドラゴンは伝説の巨大生物・・などではありませんよ。
そう呼ばれている人間です。」
俺「人間? その人間が魔獣を倒せるとでも?」
ミシャ「はい。あの魔獣の10匹ぐらいたやすいかと。」
巨大生物以上に非常識だろ!
そんなのがいるなら、何故、いままで!?
ミシャ「ただし、長い眠りについていて稀にしか覚醒しません。
今は、たまたま、その覚醒の季節なのです。」
勇者みたいなもの? 或いは、それ以上か? そういう暴力装置はどうかと思うが。
ミシャ「覚醒の儀式にはコードを無視した魔法力の行使が必要です。それも大量に・・。
1年前に私が試みましたが、、。できませんでした。
お会いしたかったのですが。」
宰相『今年は成功するかもしれません。ミシャ様もこの1年で成長されているはず。』
ミシャ「してませんよ。この体で成長・・なんて。
むしろ1年前より弱っています。」
はっきり言うなぁ。
ミシャ「それよりはヒロタンお義兄様とエミャル姉さまで。」
少し宰相さんは考えていたが・・。
宰相『分かりました。』
改めて、俺に向かい。
宰相『ヒロタン様。どうか我々にお力を・・。』
なんだかなぁ。
俺「そのホワイトドライゴンが目覚めたら、新国家ネクトマというのを攻撃するのですか?」
宰相『魔獣も含めてせん滅できるでしょう。これは帝国にとっても良いお話しだと思います。』
一人の人間ってレベルじゃないな。
俺「でしたら、」
宰相『ありがとうございます。』
俺「お断りします。」
宰相『は? いまなんと?」
俺「私の主義に反するので。」
宰相『・・・。もしかして、未だに帝国と魔王国の戦争を危惧されているのですか?
戦力バランスとかを?』
俺「違います!
もし、ネクトマとの和平が成立して大陸が平和になったら、そのホワイトドラゴンを目覚めさせる事に協力しましょう。
ミシャが会いたいと言うのであれば、そのためにも。」
宰相『相変わらず、わけが分からない人ですね。』
ミシャは少し考えていたが。
ミシャ「・・・・。
あ、いえ。お義兄さまが正しいでしょう。」
ミシャのまなざしが眩しい。
宰相『ですが、その会談は危険すぎます。交渉と言うより単なる罠としか思えません。』
エストリアがうなずいてる。
宰相『魔獣の群れが襲ってきたら、どうするのですか?
そのような場にミシャ様を連れて行くなど、到底、受け入れる事はできません。』
俺「命に代えても守ります。」
ミシャ「お義兄様とエミャル姉さまが一緒に行けば大丈夫です。」
う~ん。10匹の魔獣が一度に襲ってきたらやばい気もする。朝議で俺自身が、そう言ったような。
俺「それと、彼らが麦を要求しているのは飢えているからだと思います。
それも通信の感じだとかなり切実に。ですので、それを手に入れるために交渉には応じるはずです。
いきなり襲ってくる事は無いでしょう。」
宰相『飢えているなら、ほっておけば良いでしょう?。
彼らが飢えて死ねば、こちらの被害が減ると言うものです。』
エストリア「賛成だわ。それで良いのじゃない?」
この世界の基準では、それが正しいのかな?
俺が間違っている?
だが俺の横からミシャが進み出て、
ミシャ「エスマはいつから、そんなに罪深くなったのですか!?
飢えて死ねば良いですって? 明らかに私たちの教義に反する態度ですね。」
ミシャの声は静かだったが、。その言葉に宰相さんが蒼白になって跪いた。
何がおきたの? エスマって、宰相さんの名前だったかな。
大きな宰相さんが、これでもかと言うほど小さくなっている。そして泣きそうな声で、。
宰相『も、申し訳ありません。その通りです。いかなる罰をも、この身に・・。』
ミシャ「ヒロタンお義兄様に従ってください。」
ミシャがカッコ良すぎて死ねるぞ。
俺「いえ、その必要はありません。宰相閣下にはミシャ‥様に従って頂ければ、それで十分です。」
ミシャ「・・そうね。和平交渉をすすめてください。」
宰相『分かりました。魔王国から、できる限りの使節をお送りします。
ミシャ様を守るためにも。』
エストリア「・・・え~と、でしたら彼らの要求にあるゴールドと麦の魔王国の分も、お願いできるかしら。」
小物臭いから止めて!
宰相『分かりました。』
エストリア「それと、言っておくけど、とても危険なのは、まぎれも無い事実よ。
宰相さんは、ミシャ様を心配するあまり、言いすぎたのだと思うわ。
妙な雰囲気になってるけど、ミシャ様は宰相さんを罰したりしないでくださいね。」
ミシャが少し驚いたようにエストリアを見て・・。
ミシャ「そうですね。分かっています。」
微妙な表情で、
ミシャ「そして、つまり、エストリアさんは、ヒロタンお義兄様を心配して言われていた。」
そうなんだろう。
エストリア「そう言ってもらえると嬉しいけど、。
でも、そのヒロタンにお義兄様と付けるのは、どうかと思うの、、。」
さりげなく付けてたが、エストリアはずっと気にしていたかな?
ここで喧嘩されても困るぞ。
俺「できるだけ万全の準備をしましょう。明日には共和国から皆が戻るはずですし。」
ミシャ「そういえば、魔獣から取り出した瑠璃なのですが魔王国の刻印がありました。」
宰相『魔王国内で調達した瑠璃という事ですね。ですが、それだけでは、なんとも・・。』
ミシャ「技術的に、そうとう高度な構成がされていたと思います。」
宰相『神官長たちに調べてもらえば何か分かるかもしれませんね。今日、港に着いたと連絡がありましたから、そちらに向かうように伝えておきます。』
忙しくなりそうだ。
その夜は、侍従長に伝えて、ミリアもライラも少し遠い部屋にしてもらった。そもそもミリアは帝都内に屋敷があるはずだが・・。
そして、安心してベッドに入ったのだが、。
エストリアが隣の部屋から顔を出してきて。
エストリア「明日にはエミャルが戻ってくるのよ。そっちの向かいの部屋にね。」
俺「もう、遅いから寝るよ。」
エストリア「分かってる?二人だけなのは、今日までなの!?」
俺「そ、そうかもしれないが・・。」
エストリア「ライラ嬢には念のため見張りを付けてもらったわ。」
エストリアが薄着のままベッドに近づいてくる!
エストリア「言ったでしょ。あなたは女性を知るべきなの・・。」
薄着のエストリアは、体のラインが強調されてヤバい。意外に細い体に不釣り合いに大きな胸が、いやでも目に入る。
どうやら、強引に同じベッドで寝るつもりらしい。大きなベッドではあるが、それでも、これはつまり、。
そして、エストリアが俺のベッドの布団をめくると、布団の中から
ミシャ「今日は、お兄さまが来てくれなかったので・・。」
いつの間に? 最初からいた? なんだか遠慮無くなってる?
ってか大使館はどうしたの?
エストリア「ミシャ様!? なぜここに!?
今、『今日は』って言った?」
ミシャ「は、恥ずかしい・・です。」
顔を赤らめて誤解されるような事を!!
まあ、エストリアは、そういう事が無いって分かってると思うけど。
エストリア「何を言ってるの? だめよ! いいから来なさい!」
そのまま、エストリアはミシャを引っ張って隣の部屋に・・
良く分からんが、いいのかな?
翌日には共和国からエミャルたちも戻ってきた。
和平交渉の使節には、エミャルや他のメンバーも加わる事にする。慌ただしいが2日後の出発。
だが、その前にサミアスを呼んで、。
俺「この新国家ネクトマに侵入できないか?」
サミアス「誰を殺すのでしょう? 総統・・とか言う人でしょうか?」
俺「いや、殺さないで良いから! そうでは無くて情報を集めて欲しい。」
そうすれば交渉で情報を得られなくても
サミアス「・・・。情報・・ですか?そういうのはやった事が無いのですが・・。」
俺「侵入はできるよね。」
サミアス「はい。」
俺「侵入したら、なんでも良いから見聞きした事を書き留めてくれ。
幹部の人についての情報や、魔獣について。」
サミアス「・・やってみます。」
サミアスが出て行くと入れ違いにライラがやってきた。
ライラ「今のがエストリアさんが言っていた人かしら?
たしか、サミアス・・さん?」
廊下ですれ違ったのかな?
俺「そうだよ。」
ライラ「ふ~ん。そうなのね・・。確かにきれいな人だわ。」
俺「何しに来たのだ?」
ライラ「機長たちが、不時着した飛行艇を回収して、共和国へ帰りたいと言っています。
協力してください。」
回収? あれを持って帰るのか?
俺「俺はかまわないけど、運ぶのはたいへんそうだな。」
ライラ「あんたたちを送るための飛行だったのよ! 協力すべきでしょ!」
事故の原因のひとつはおまえだ!
俺「分かった。帝都までは帝国の負担で運ぶので、その先は、ライラたちでなんとかしてくれ。」
帝都に置いておけば、最悪、帝国で接収できる。
ライラ「ん~。分かったわ。帝都から先の輸送はギルドに相談してみる。それと・・。」
俺「まだ、何かあるのか?」
ライラ「夜、私に見張りを付けるのは止めてくれます?!」
それはエストリアの指示だと思うけど。
俺「俺が寝るのを邪魔しないでくれるなら・・。」
ライラ「・・・。あんたが、エストリアお姉さまたちを襲わないなら良いのだけど・・。」
俺「あー。絶対に襲わないよ。」
ライラは少し考えて・・。
ライラ「私を襲わないので、おかしいと思っていたのだけど、。
もしかしてあんたは特殊な趣味を持っていたりする?!」
また変態とか言う話しか。
ライラ「恋愛対象が男性?」
俺「へ?」
ライラ「そうなのでしょう?
言いたく無いのは分かります。ですが、さきほどのサミアスさんとか。」
俺「はぁ・・」
エストリアが変な事を言ったのかな?
ライラ「つまり、ある意味、同志です。」
どういう意味だろう。
ライラ「協力していきましょう!」
協力して何するの? まあ、誤解でも仲良くしてくれるなら良いや。
その夜は、エミャルが隣の続き部屋から俺の部屋に顔を出して、。
エミャル「戻るのが遅れてしまって・・。
も、もしかして、、。その、ヒロタンさんは既に深い関係に?!。」
え? ミシャとの事がばれた?
エミャル「エストリアさんが何やら言われていたので。」
俺「あー。エストリアとは何も無いぞ。」
エストリアが反対側から顔を出して、
エストリア「ミシャ様に邪魔されたわ。」
聞いてた?
エミャル「そうなんですか?! ミシャが私のために!」
違うと思う。
エストリア「あの子、危ないと思うのよ。」
エミャル「とても良い子ですよ。」
そうだね。危ない良い子だ。
準備は順調に進んだ。新国家側も交渉に期待しているのか帝都への魔獣の攻撃も無い。
2日後、使節団は帝都の城門に集結して簡単な送迎式。俺とエストリア、ミシャ、エミャルといった以前からのメンバーは、ほぼ使節団に加わる。
ルマリオが豪華な鎧を着て見送りに来てくれたが。
ルマリオ「 帝都は俺が守る。安心して死んで来い! 」
いや、死なないぞ。
ルマリオ「あ。でも彼女だけは傷つけるなよ。一応、小隊を付けるがな。」
誰?
エストリアたちは別の馬車だから俺の乗った馬車には、ルナリスとクラムが乗っている。
なんとなく近衛隊の服も馴染んできた。
ルナリス「なんだか、豪華な馬車がいますね。」
ん? ミシャたちかな?
と思ったが違うようだ。見た事ある文様な気もするけど・・。
俺が乗ってる皇帝の馬車より豪華で目立ってる。
クラム「ルマリオ騎士団の馬車だよ。金色の紋章があるだろ。」
そうなんだ。って、ルマリオは帝都だよな?
クラム「俺・・私も誘われたのだけど、すげー給料が良いらしい。」
ルナリス「んー。クラムちゃんは、そういった組織で身分照会されると問題かもしれませんね。」
クラムは相変わらず男の子っぽさが抜けないが、。ルナリスは何が言いたいのだ?
ルナリス「私は裁判所から冤罪という事で奴隷の身分を解除する通知を受けたのですが。
クラムちゃんやサミアス、ストリュさんは、奴隷のままなのですよ。」
俺「そうなのか?ルナリスの奴隷の瑠璃は外してない気がするが・・。」
ルナリス「私の瑠璃はこのままにしてください。そう約束したはずですし。それに、どのみち、ヒロタンさんは3つの機能のうち、通信しか使って無いでしょ?」
3つ? あれ? エストリアは2つしか言ってなかったような……
ルナリス「とにかく、私以外の皆さんは、帝国の憲兵隊に知られると問題になりそうです。
ヒロタンさんは奴隷としての管理をやっていませんので。」
俺「分かった。後で、エストリアに相談して、なんとかしてみよう。」
ダフライルの街について、広場で馬車を降りると、ちょうど豪華な馬車が着くところだった。いったい誰が乗ってるのか立ち止まって見ていると、。護衛の金ピカの鎧の騎士が扉を開けて、中の人間に深く頭を下げた。
タラップを降りてきたのは、、エミャル??
どういう事?
俺が近づくと、豪華な騎士の隊長風の男が間に入ってきた。
「 エミャル様に安易に近づかないで頂きたい。 」
まて! 俺は確か皇帝のはず!
エミャル「サイモン分隊長。ヒロタンは構いません。」
「はっ!」 分隊長さんは、エミャルに言われて下がってくれた。
俺「どういう事?」
エミャル「ルマリオ騎士団のお金は私が出しているのです。」
ルマリオ騎士団の、やけに豪華な鎧とか馬車とか、給料が良いとか、そういうの全て?!?!
エミャルがスポンサーなの?
俺たちが着いて、すぐに魔王国の使節団も到着した。魔王国の神官長も俺たちと来ているが、神官長やミシャは、交渉の後、ここから魔王国の使節と共に魔王国へ帰る予定になっている。
ネクトマの使節は1日遅れて到着するとのこと。
だが、ここで落ち合う予定だったが、サミアスは見つからない。潜入から戻っていないようだ。先に情報が欲しかったのだが。
その夜は、ダフライルの街で一番大きなホテルに泊まった。最悪、魔獣の攻撃を想定して、俺とミシャ、エミャルは隣同士の部屋に。エミャルがいれば魔獣に対して、ある程度の攻撃ができるはず。
ホテルの食堂で夕飯を食べている時に、サミアスから瑠璃の通信が入った。埋め込みの瑠璃での通信だから、近くに来ているらしい。だが、、。
サミアス <ごめんなさい。ばれてしまって……>
俺<え? どうして?>
サミアス<むかしのぼくを知っている人がいて、それで……>
昔の仲間? 暗殺者仲間?
サミアス<あ、うわっ、そんなっ>
切れた。最後は ふじこlp的な感じだったが大丈夫なのだろうか?
でも、通信できたという事は近くまで来てる?
新国家とやらの使節は、まだ、到着していないが。
エストリアやルナリスに相談してみたが、既に日も暮れてしまったし、心配だが、明日になってから捜索してみようという事で、その日は寝る事にした。




