新国家
前回の投稿から時間が開いてしまって申し訳ありません。これでは、ほぼ私の生存確認レベルですね。
正直言うと自分で入れたストーリィ上のバグみたいな物に自己嫌悪になって気力を失っていたのですが。 久しぶりに見たら、とてもありがたい事に校正や感想をもらっていて、読んでくださる人がいるのに、あまり中途半端で終わるわけにはいかないかなぁっと。
区切りの良いところまでは続けたいと思います。
合わせて数日前から頂いた校正+αで過去の部分を修正しています。読み返すと申し訳無い事に誤字だらけでしたね。
議会での朝議で、帝都を襲っている空飛ぶ魔獣の対策を話し合っている・・わけだが。
そういえば、右大臣の息子のルマリオはどうしたのだ? 彼も副皇帝のはずだから参加しないといけないのでは?
俺「そういえば、ここにルマリオさんが、いないようですが?」
お城にもいなかったぞ。
右大臣「3日前の魔獣との闘いで負傷しました。今は病院です。」
名誉の負傷?
俺「それはまた、たいへんでしたね。」
この世界の回復薬を使ってさえ1日で治らないとなると重症だろうな。
議長「そろそろ本題に入っても良いでしょうか?」
俺「そうですね。魔獣の被害は、どれぐらいなのでしょう?」
議長「帝都では魔獣の体当たりで、5つの神殿が崩壊しました。
城壁が10か所、お城の尖塔もひとつ破壊されています。
その他に図書館や学校、市場なども被害を受け、けが人が数百名。死者は3人。
一般の住宅よりは大きな建物への被害が大きいようです。」
今のところ死者が少ないのは幸いだが。
俺「魔獣による空からの体当たり攻撃という事でしょうか。」
議長「そうです。
それで、その対策というわけですが。」
左大臣「民衆は、ひろたんがなんとかすると思っておるぞ。」
俺「へ?」
右大臣「昨日の朝の瑠璃放送ニュースが、ひろたんが空飛ぶ魔獣を落としたとか言う世迷言を流しおった!」
エストリア「事実だわ。」
左大臣「なんだと!?まさか、瑠璃ニュース社の情報源は・・」
たぶん、エストリアだな。
エストリア「ゼム湖で上を通過する魔獣を、ひろたんが落としたのよ。
だから帝都でも、ひろたんがいれば。」
俺「いや、あれは移動中の不意打ちだったし。戦闘状態だと一匹落としても他の魔獣にやられてしまう。」
エストリア「だったら、また、ゼム湖に潜んで・・。」
寒いから止めて!
俺「繰り返したら、敵も対策してくると思う。不意打ちの繰り返しは効かない。」
エミャルがいれば何羽かは落とせると思うけど、全部、一度に落とすのは、やはり無理だろうな。
エストリア「・・・。そうなの?」
左大臣「期待している民衆を失望させたら、どうなるやら。」
エストリア「それは確かに問題だわ。 なんとかして!」
俺に言ってるの? どうしろって言うのだ!?
俺「魔獣を送ってる組織や、その目的は分かりますか?」
議長「それなんですが、一昨日、この通信が古い形式の帝国軍暗号通信で送られてきました。
方角から言っても魔獣を差し向けている組織からの物でしょう。
3日前の大規模な攻撃のあと、攻撃が途絶えているのは、この通信の応答を期待しての事かもしれません。」
俺「古い暗号ですか?」
議長「おそらく、敵の中に帝国軍の通信兵だった者がいるのでしょう。」
暗号で送ってきたのは政治的な配慮か。
皆の前に文章が広げられた。大きめの字で書いてある。おそらく通信の内容を会議用に書き出したのだと思うが。
「新国家ネクトマより 帝国に告げる
我々は旧国家に虐げられてきた人民のためにロンダミムス地方に新国家建設している。
旧国家である帝国は、これまでに犯した罪を償うために、この新国家建設に協力する義務がある。
各々100万ゴールドの資金と1000ダルムの麦を用意し我々に送ること。
この義務を果たさない場合は相応の罰を受ける事になるであろう!
新国家ネクトマ 総統 」
脅迫状だな。金額がたいした事無いように思えてしまうのは、先ほどのエミャルたち話のせいか。
左大臣「ふざけるな! 誰が金など送る物か!」
右大臣「お金を送れば、その金で、新たな魔獣を作りかねないでしょう。絶対に送るべきではありません。」
エストリア「その通りね! この要求は断固として拒否よ!」
金にうるさい皆さんですね。
俺「その、お金の引き渡しをネタに交渉してみるのは如何です?
時間稼ぎと、情報を得るため、そして和平の糸口をつかむための策として。」
左大臣「交渉など出来るものか!金の無駄だ!」
暗号で送ってきているのは、政治的な交渉を前提としているのだと思うけど。
俺「ですが戦うにしても、もう少し敵の情報があった方が良いと思いますよ。」
議長「そうですね。この組織については、不明な部分が多すぎます。
100万ゴールドで情報が得られるなら安いかもしれません。」
左大臣「100万ゴールドが安いだと!?」
議長「戦費や復興費用を考えたら安いものですよ。」
右大臣「ですが、情報を得るためには、うまく交渉しないといけません。
まして和平となると難しそうです。」
俺「金を渡しても良いという事で連絡すれば、ある程度は応じてくれるのじゃないでしょうか?
お金や食料の受け渡しのためにも相談が必要な事ぐらい理解していると思います。
その過程で多少でも敵の情報が得られれば、その後の戦いにプラスになります。」
右大臣「できますか?」
俺「まかせて頂ければ『敵の情報を得る』までは、できると思います。
和平までは分かりませんが、やってみます。」
右大臣「ヒロタン殿は意外にうまく交渉しますからね。良いでしょう。
まずは、その交渉の結果、次第としましょう。その上で次の手を考える。」
左大臣「まあ、時間稼ぎにはなるか。
もし金を渡すなら、くれぐれもムダ金にならんようにしろよ!
ムダ金になったら、おまえに払ってもらうぞ!」
いや、俺の金なんてあるのか?
エストリア「ヒロタン・・皇帝個人に、そんな金は無いわよ。」
やっぱり・・。
左大臣「ほぉ。意外だな。あれだけいろいろやっていたのに。」
あんたらと一緒にしないで欲しい。
俺「ところで、魔王国に対してはどうなっているか分かりますか?」
議長「帝国と同様の魔獣の被害が報道されていますが、ここ数日は止まっています。
もしかすると、同様の脅迫を送っているのかもしれません。公式には何も発表されていませんが。」
その時、突然、会議室の扉が開いて松葉杖をついたルマリオが入ってきた。
病院じゃ無かったのか?
ルマリオ「皆さん! おまたせしました!」
右大臣「ん? 寝ていろ言ったはずだが?」
ルマリオ「父上!帝国の一大事です。寝てなど、いられません!」
右大臣「その体で何が出来る?」
ルマリオ「考えがあります!」
右大臣「・・・。何をする気か知らんが、以前のおまえの失態のおかげで旧皇帝派が勢力を盛り返した事を忘れるなよ。」
それがミリアが皇帝代理になってる理由かな?
ミリア「皇帝派の議員が何を言おうと父は引退を決め込んでますわ。」
俺がいない間に何があったのだ?
ルマリオ「その汚名をそそいで見せましょう!
わがルマリオ騎士団に、5000の兵を御貸し頂ければ必ずや!」
なんだ、その騎士団は?
俺がいない間に出来たのか?
左大臣「何か策があるのか?」
ルマリア「敵は、空から少数の魔獣で攻撃してくるだけです。
ですので部隊を少人数の小隊分け、分散して進撃すれば全部が一度にやられる事はありません。
たとえ半数が、やられても残った部隊で敵の本拠地をせん滅できましょう。」
消耗戦か。一応、理にかなってはいるが・・、。半数がやられる事が前提?
右大臣「それなりに妥当に思えるが、。その作戦は、おまえが考えたのか?」
ルマリオ「い、いや。その、。分散進撃はノカナ将軍の案ですが・・」
右大臣「なるほど。勇猛なノカナ将軍なら考えるだろうな。
ところで、たとえ分散して進軍しても、おまえ自身やおまえの騎士団は真っ先にやられるぞ。」
ルマリオ「・・・。な、何故です?
あ、、そうですね。先鋭が狙われるのは必然!」
右大臣「バカか!目立つからだ! おまえたちの金銀の派手な鎧は、空から見て一番、目立つ!
それで3日前に死にかけたのを忘れたのか?」
ルマリオ「うっ・・。いや、ですが、あの鎧は我々騎士団の誇り!」
右大臣「今度はほんとうに死ぬぞ!」
ルマリオ「・・・・・。」
なんだか青くなってる。
俺「ルマリオさんの作戦は最後の手段としましょう。
実はルマリオさんが来る前に、交渉で敵の情報を得ようという話しになっています。」
ルマリオ「ふんっ。臆病者のヒロタンらしい進め方だな。
だが皆さんが、それで納得しているなら・・やむを得ない。
わが雄姿を、お見せする機会が遠くなり残念である!」
内心、ほっとしているのが見え見えだが。それでもカッコつけるあたりは、さすがだ。
ってか俺って臆病者のヒロタン・・なのか? まあいいけど。
右大臣「いいから、おまえは寝てろ!」
議長「兵法でも、危うきに非ざれば戦わずと言います。
悪戯に戦うべきじゃないでしょう。
まずは、ヒロタン陛下が、その新国家ネクトマとやらと交渉するという事でよろしいですね?」
左大臣「まあ良いだろう。時間があれば防御の準備もできる。」
右大臣「はい。まずは、それで。」
左大臣「ところで、議長は士官学校の校長もやってるのだよな?
そこで、今、言ったような臆病な兵法を教えてるのか?」
議長「あ、いえ。そ、そういう本があるというだけで。教えるとかは、その。」
左大臣「そうしてくれ。それは政治家の判断であって兵士の判断じゃないぞ。」
めんどくさいつっこみだが、逆に言えば議長は政治家だよね。
ミリア「ところで私の肩書なのですけど。」
議長「そ、そうでした!
陛下が戻られた以上、ミリアさんが皇帝代理というわけにはいきませんな!!!」
左大臣「最近は皇帝派の議員がうるさいからなぁ。彼らの手前、ミリア姫にも何か役職が必要だろう。」
議長「副皇帝は既に二人いて、多すぎるぐらいですし。」
右大臣「かつては上皇というのがいたようです。」
左大臣「それ引退した皇帝だぞ?」
右大臣「ですから引退した元皇帝の代理と言う事で。」
議長「上皇代理ですね。」
左大臣「上皇代理ねぇ。それっぽくはあるか。」
また、妙な物を・・・
ミリア「よろしいのですが、。その上皇代理と副皇帝では、どちらが上になるのかしら?」
エストリア「そうね。そこが重要だわ。」
つまり、ミリアとエストリアのどっちが上か?
うわ~。どっちにしても、もめそう。
議長「それはその・・。」
ミリア「どちらでして?」
エストリア「決めてくれる!」
議長「同格という事で。」
議長は苦労人だけの事はある。
二人とも不満そうだったが、それ以上、もめる事は無かった。
そして、その日の昼には、新国家ネクトマの代表という人たちとの通信がつながった。
ほんとに帝国軍の古い方式で連絡できているらしい。
お城の通信室で俺とエストリアとミリア。
映し出されたのは、中央に座った偉そうな男と、両側に控える男女の合計4人。4人とも鎧・・というか鎖帷子のようなものを付けている。その鎖のところどころに銀と思われる金属が使われていて、胸のあたりに独特の文様を作り出している。文様は4人とも違う。
左に控えた陰気な感じの男が隣の偉そうな男を紹介して、。
男『こちらが新国家ネクトマのシサム総統である。』
どっかで聞いたような名前だが・・。
総統の右が派手な女性、そのさらに右が眼光の鋭い老人。
俺「私が帝国の新皇帝のヒロタンです。」
シサム『ヒロタンか・・。久しぶりだな。
皇帝とは偉くなったもんだ。確かにあの時の演説は悪く無かったが。
だが、どうやって皇帝に?』
俺の事を知ってるの? どこかで会ったっけ?
ミリア「ヒロタン陛下に無礼でしてよ。シサム将軍。」
そうか、以前は帝国の将軍だったシサムというヤツか! そう言われると軍人らしい気もする。
帝国軍の古い暗号通信が使える理由もそれか。
そういえばこいつが魔王国を襲ったりしてたよな。悪の親玉?!
シサム『ん? ミリア姫?
つまり、勇者ヒロタンはミリア姫と結婚したのか?』
ミリア「いえ、それは、ま・・。」
エストリア「そんな話はありません!」
シサム『おまえは・・。確か、左大臣のところの、。軍で魔法兵をやっていたよな。
通信のために呼ばれたのか?』
エストリア「今は副皇帝という立場です。」
シサム『なんと!いきなり?! おまえは、たぶん親の力と言う事なんだろうな。』
言ってしまえばそうなんだが・・。
シサム『平民出の兵士はどんなに優秀でも、たいした出世は望めないのに。
おまえらみたいのがエラくなりおって・・。
まったく帝国は腐った組織だな。
それだから・・』
最初にシサムを紹介した、となりの男が苛立たし気に
男『総統!本題に入ってください!』
他は良く分からないけど、この陰気な男の鎖帷子の文様は、どこかで見た気がする。
シサム『うむ。そうだった。
我々の要求は届いているな。今すぐ100万ゴールドと麦を持ってくるのだ!』
俺「渡しても良いのですが和平が前提です。
金を渡した後で、また襲われたのでは意味がありません。」
左側の男が
男『立場を分かっていないようだな!
おまえたちは、我々の要求に無条件で従う以外無いのだ!』
俺「それと、その和平は帝国と魔王国の両方に対する物である必要があります。
大陸全体の平和が必要です。
それが約束されない限り、お金は出せません。」
男『き、きさま! 俺の話を聞いているのか!?』
シサム『まあ、待て。
今、両方の国と言ったかな? 我々は帝国と同時に魔王国にも100万ゴールドを要求している。
だが、今のところ完全に無視されているのだが。』
そうなんだ。
シサム『2つの国の和平という事であれば200万ゴールドを用意してもらわないと困るぞ。』
俺「必要があれば、そのように。」
エストリアが俺をこずいている。そんな金は出せないという事だろう。
シサム総統の右側の女性が・・。
女『できれば麦も2国分で、お願いします。』
線の細い上品で知的な感じの美人さんだ。とてもじゃないがテロ国家の幹部には見えない。
シサム『そうだな。金と麦を2国分・・。
出来るのか?』
男『騙されてはいけません。なんで、こいつが、魔王国との和平まで言うのですか?』
シサム『ん? そう言われると、おかしな話しではあるが・・。』
男『魔王国との和平を言うなら魔王国の魔王との交渉でないとおかしいでしょう。
こいつが何を言おうが魔王国は攻撃してくるかもしれない。
そもそも、魔王、、あの悪魔をなんとかしない事には和平など、ありえません!』
吐き捨てるように魔王とか悪魔とか言ってるが・・。
ミシャに恨みでもあるのかな?
女『それでも2国分のゴールドと麦は、ありがたい話しです。我々は早急に・・』
男『黙れ! 言うな! たとえこのまま飢え死にしても悪魔との和平などありえん!
しかも、こんな通信で、それを言うか?!
もし、本気で和平を言うなら、あの悪魔を、ここへ連れて来いという事だ!』
なんだか良く分からないが、、。
俺「魔王様を伴って、直接、行けば良いのでしょうか?」
画面の中の4人が、一瞬、凍り付いた。いや、老人ははじめから凍り付いたように俺を見つめているだけだが・・。
シサム『何を言ってるのだ? おまえにそんな事が出来るのか?』
俺「ただし、そちらの本拠地までは行けません。」
男『いいだろう。ダフライルの街でどうだ? そこに魔王を連れて来い。
そうしたら和平交渉に応じてやる。』
そう言いながら、いやらしく笑う。思いっきり何か企んでそうだが。
エストリア「ダフライルの街は、そちらの本境地に近くて我々には不利な場所ですね。」
男『魔王はコードを無視して凶悪な魔法を使える。そんな悪魔と会うのだ。
多少、こちらが有利な場所でも構わんだろう。』
良く分かっているような分かっていないような・・。
俺「ところで、あなたの、お名前を聞いても良いですか?」
男『名乗るほどの者では無い。単なる総統の部下だ。』
その総統さんがあっけに取られているみたいですけど。
俺「分かりました。魔王国の了解を得て、その場所に魔王様と参ります。」
男『・・。どうせ無理だろう。だが、もし来たら、、、会ってやる。』
女『その時には食料も持って来きくださいね。』
男『うるさい。おまえは黙ってろ! とにかく、あの悪魔を連れて来い!』
女『何をする気ですか?我々には・・』
シサム『あー。これで通信は終わりだ! 良い返事を待っているぞ!』
ブチっと切れた。なんだかグダグダな気もする。
エストリアがため息をついて、。
エストリア「ダフライルへ行くのは危険よ。見え透いた罠だわ。」
俺「多少の危険は・・。」
エストリア「そんな事をしなくても通信の感じだと、ほっておけば自滅する状態じゃない?
右の女が食料を気にしていたし、左の男が飢え死にとまで言っていたわ。」
俺「食料を言ってる時点で気が付くべきだったが、かなり困ってるみたいだね。
意外に要求金額が小さいのも実際にお金が欲しいという事だろう。
それは、つまり、和平の可能性もあると言う事だよ。」
エストリア「どうでしょうね。」
ミリア「わたくしも賛成しかねるのですが・・。」
俺「ミシャを呼んできてくれないか。この通信室で、このまま魔王国と通信しよう!」




