救助隊、そして問題の多いハーレム
救助要請の通信は繋がったが、相手のミリアはエストリアの言葉を信じてくれない。ミリアとエストリアは、あまり仲が良い気はしなかったが・・。これでは、助けを呼べないではないか!
俺「俺がミリアと話せないか?」
エストリア「無理と言ったでしょ!」
どうやら俺の言葉を伝えるようなマイクは無いらしい。どうやってか知らないが直接、瑠璃を操作している人間しか話せないらしい。どうやって声が伝わるのだ?この世界の魔法自体が体内の魔法回路に結びついてるみたいだし骨伝導マイク的な物かな?
ミリア『エストリアのそばに誰か、いますの?』
エストリア「まあ、いるのだけど・・。」
ミシャ「ミリア姫様! 私です!」
ミリア『・・。その声は、ミシャ様?』
そうか!今回、ミシャも通信を操作している人間だ。
ミシャ「はい! 私も一緒に遭難しています。お願いします!助けてください。」
ミリア『・・・。ミシャ様が言うなら・・。どうやら本当のようですね。
すぐに救助隊を編成して助けに参りますわ!』
エストリア「ちょっと待ってよ!私が話した時と違いすぎない!?」
ミリア『うるさいですわね。助けに行くのだから文句は無いでしょ。』
エストリア「まあ、良いけど・・。」
ぜんぜん良く無さそうな顔だぞ。
エストリア「それと10匹あまりの魔獣が、いましがた、この上を通過して帝都方面に向かいました。
警戒してください。」
ミリア『10匹ですって!?
昨日の4匹でも、かなりの被害だったのに。冗談じゃ・・』
ミシャ「ほんとうです!」
ミリア『そうなんですね。わかりました!』
エストリア「とりあえず切るけど。ゼム湖の近くまで来たら・・。」
魔獣対策で飛行艇に雪をかぶせてるから、救助隊が来ても見つけ難いかもしれない。
俺「俺はミリアと通信できる近距離通信の瑠璃を埋め込んであるぞ。
近くまで来たら俺に瑠璃で連絡してもらえれば・・」
だけど、エストリアは俺の言葉を無視して・・
エストリア「ゼム湖の近くまで来たら信号弾をあげてくれる?
こちらで目印の旗を立てるから。」
俺「へ?
ミシャが言ってくれるか? 俺がいるって!」
ミシャは俺を少し見つめて、、そして。瑠璃に向い。
ミシャ「信号弾を、お願いします。」
なんで言わない?
まあ、でも、これで助かった。
夕方近くなって、帝都を攻撃してきたと思われる帰りの魔獣が飛来した。やはり10匹。
多少、傷ついているように見えるのは帝国軍と戦ったせいだろうか?でも数は減って無い。
一応、身を潜めて警戒したが、やはり俺たちには見向きもしないで、頭上を通り過ぎる。
ここの上空はオートパイロットで通過する事になっているらしい。もし、そうなら、もう一匹、落としても良かったかもしれないが・・。まあ、それで、明日になって敵に襲われても困る。
その日の夜には、だいぶ非常食が減ってきたが、。魔獣の肉は相変わらず不評だった。機長が一口食べたが、まずそうな顔をして、それ以上は食べなかった。毒では無いようだが他のメンバーはまったく食べていない。
簡易ストーブで雪を溶かしたので水は問題無い。温めた水で顔を洗う事もできた。
次の日の朝、警戒していたが魔獣は来なかった。魔獣たちも連日の出撃で疲れたのかな?
昨日の帰りには多少、傷ついていたみたいだし。
そして、その日の昼過ぎ、早くも近くで信号弾が上がる。救助隊だ!助かった!
丘を越えて雪の中をやってきたのは、大小20あまりのソリでトナカイ風の獣が引いている。元の世界のトナカイと同じ物かどうか俺には良くわからない。馬は同じに見えたし、これも同じかもしれない。地学・気象・天体は違和感があるけど、動植物のかなりは元の世界と同じだろう。特に人間が使う物、育てるものは同じように存在している。
救助隊にミリアはいなかったので瑠璃での通信は、どちらにしろ無理だったろう。どうも、この救助隊は帝都から来たのではなく、連絡を受けて近くの街から来たらしい。早いはずだ。
すぐに救助隊のソリに乗って凍ったゼム湖を出発する。
飛行艇を軽くするために捨ててしまったので荷物はほとんど無い。魔獣から回収した瑠璃だけは調査のために持っていく事にする。
その日は下る方向、島の外側に向かう方向にソリでひた走って夕方には雪の少ない宿場町までたどりついた。
宿場町の通信所からミシャのために魔王国にも連絡した。驚かれたが、すぐに迎えを送ると言ってくれた。だが、この街から魔王国へ向かう道の国境付近は危険なので、安全を考えて大陸を反対周りで迎えに来るとの事。例の魔獣を送っている組織の本拠地が帝国と魔王国の国境付近だから、そのあたりを通るのは危険らしい。
迎えが反対周りなら帝都は同じ方向だ。ミシャも帝都まで一緒に行く事になった。ミシャは急いで帰りたいみたいだが、その理由とかは聞けていない。そもそも、遭難してからこっち、あまりミシャと話せていない。その日もミシャは食事もそこそこに宿の部屋にこもってしまった。
まあ、遭難生活の疲れはあると思う。俺も、他の皆も、久しぶりのベッドで、ゆっくり寝たいというのはあった。
宿場町に泊まったた翌日、朝から馬車にゆられて夜には帝都に到着した。
既に連絡が行っていたのか、夜の城門は盛大に明かりが灯され、沿道にも沢山の人が出迎えに出ていた。そう言えば、一応、俺は皇帝だしな。不安定な立場な気もするが・・。
しかし、戦争に勝って凱旋したみたいな歓迎だぞ!?
面倒なので適当に馬車から手をふっただけで、まっすぐにお城に向かう。お城の広間にも結構な人がいたが晩いし疲れているからと言って、皆を振り切って俺の居室に登ってしまう。
お城の4階にある俺の部屋。共和国に出発する前に少し暮らしただけだが、それでも帰って来た感はある。ここならフカフカのベッドで寝れるわけだし、。
だがドアを開けると、そこには
ミリア「ヒロタン陛下がいらっしゃるなら私も迎えに参りましたのに!?
なぜ、通信で言ってくれなかったのです?」
微妙に色っぽいようなドレスを着たミリアが待っていた。そういえば下の広間にはいなかったな。
俺「いや、まあ、、。」
ミリア「エストリアが隠していたのでしょうね。なんて意地悪な女なのでしょう。
見た目通りのいやしい女ですわ。」
ミシャも言わなかったけどね。いや、その前に、なぜ、ミリアがここにいる?
エストリアが隣の続き部屋から扉をあけて顔を出し、。
エストリア「大きな声ね。聞こえてるわよ。」
俺より先に階段を上がってきたらしい。この隣の続き部屋はエストリアの部屋。俺が皇帝とやらになってから決まっている・・らしい。
反対側の続き部屋を占拠しているはずのエミャルは、まだ、共和国から戻っていない。
エストリア「ミリアは、さっさと、その部屋から出て行きなさい! そこはヒロタンの部屋よ!
皇帝が帰って来たのだから代理は不要でしょ!」
そう言われてもミリアは、あまり動じていないようだ。エストリアを無視して俺に向かい、。
ミリア「この部屋を使わせて頂いておりましたの。」
ここが皇帝の部屋でミリアが皇帝代理だから・・・なのか?
一歩近づいてきたミリアから甘酸っぱいような香水の香りがする。俺の周りの他の女性は、あまり使わないようだが、この世界にも香水があるらしい。ミリアも以前は使っていなかったような・・。
俺「あー。皇帝代理という事なら良いのだと思う。」
ミリア「ベッドは別に、もうひとつ運び込んで頂きましたので大丈夫ですわ。」
そう言われてみると、もうひとつベッドが加わっている。微妙に明るい色のベッド。
俺「わざわざベッドを入れなくても良かったのだが。」
寝具は変えてるだろうし。俺が使っていたベッドを使っても。
ミリア「えっ! 同じベッド・・・ですか・・。」
少し恥ずかしそうに、
何を気にしてるのかな?同じベッドを使うと、、、間接キス的な?
ミリア「でも、そうおっしゃるなら、」
いや、だから何?
ミリア「今夜・・なのですね。」
横からエストリアが苛立たしげに・・
エストリア「分かってる? ミリアは今夜も、その部屋に居座るつもりなのよ!」
今夜も?
俺「あ、そうか。
俺たちは突然帰って来たわけだし、。急に、今まで使っていた、この部屋から出て行くなんて無理だよね。」
このお城には沢山の客間がある。豪華なのも多いから構わない。
侍従長さんに言えば別の部屋をすぐに用意してくれるだろう。
俺「俺は別の部屋で。」
だが、俺が部屋から出ようとすると、ミリアが回り込むように出口のドアの前に立って、。
ミリア「何処へ行かれますの?ヒロタン陛下の部屋はここでしてよ。」
なんだか少し顔を赤らめて・・。こういうミリアは初めてかな? でも、ちょっと困る。
だいたい、ミリアってこういうキャラだっけ?
エストリアに助けを求めようと視線を向けると、。
エストリア「はいはい。美人のミリアに、そこまで言われたらヒロタンも考えちゃうでしょ?」
何を考えろと言うのだ?!
ミリア「エストリアは下がって頂けるかしら。」
エストリア「ヒロタン次第ね。」
なんだか二人とも怖いのですけど・・。どうしたら良いやら。
と、。 ミリアの後ろでドアがノックされた! 誰?
「ヒロタン陛下。ライラ様がこちらに。」
侍従長さんの声だと思う。ライラをここに連れて来たのか?余計な事をしてくれる!
これ以上のグダグダは止めて欲しいのだが!
侍従長「あ、。ライラ様! お待ちください! 勝手に入られては!」
ドアが勢いよく開いて、
ライラ「小さな国のくせに、大きなお城よね。
しかも、いろいろとうるさいし・・。」
侍従長「も、申し訳ありません。ライラ様がどうしても・・と、。」
ライラが無理を言ったのだろうな。侍従長もかわいそうな立場だわ。
俺「いや、いいよ。大丈夫だ。下がってかまわない。」
侍従長「よ、よろしいのですか?。 つまり、本当に、そういう事なのでしょうか?」
ん? 本当に何?
ライラ「下がってって言われたでしょ!下がってくれる?」
えっ?
侍従長「はぁ・・。それとミ・・」
ライラ「いいから、下がりなさい!」
侍従長さん押しに弱い? 何か言いかけたが、ライラに強く言われて帰っていった。
ミリアの事を言いかけたのかな?
そうだよな。ミリアがこの部屋にいるって先に言って欲しかったよね。今更だわ。
そのミリアが、突然、入ってきたライラに。
ミリア「どなたかしら?」
ライラ「誰って言われても・・。」
部屋の様子とミリアを見て何やら納得したらしく
ライラ「なるほど。そういう事ね! 安心してください!
私がヒロタンからお姉さんを守ります!」
お姉さんってミリアの事?う~ん。逆じゃない?
ミリア「何をおっしゃってるの?」
ライラ「・・。お姉さんは綺麗だから危ないわよ。」
ミリア「まあ。」
ちょっと喜んだ?
ライラ「ここがヒロタンの寝室って聞いたのだけど、ベッドが2つあるのね。」
ミリアが運びこませたと言うベッドがあるわけだが。
ライラ「つまり、こっちはヒロタンの監視役である私のベッドね!」
そんな話しは無い。
皆が、とまどっているうちに、ライラは上着を脱いだだけで、そそくさと片方のベッドにもぐりこんでしまった。ミリアが運び込ませた明るい色のベッド。
ミリア「何をしているの!?」
ライラ「私は監視役なんです!今夜は、ここでヒロタンを監視します。」
どういう状況だろう。
ミリア「監視? 証人と言う事・・でしょうか。
そうね。少し無粋な気もしますが、皇帝の初めてともなれば、そういう事もあるのでしょう。」
初めての何?
ミリア「まあ、良いですわ。ベッドは一つあれば足りるわけですし。」
そういいながらミリアは扉に何やらした後、俺のベッドに向かい、
ライラ「なっ!? そっちはヒロタンのベッドじゃなくて!?」
ミリア「ヒロタン陛下と、わ・た・し・のベッドでしてよ。」
ライラ「えっ!!!」
ライラは言葉を失っている。彼女には刺激が強すぎかな?!
ミリアは以前からあるベッドに座って、青い瞳で少し恥ずかしそうに俺を見上げる。
十分に色っぽくて魅力的だとは思うが、。だが、そう言われてもエストリアもいるし、そんな事は出来ないだろう。エストリアがいなければ、そんな事が出来るかどうかは保留だ!
とりあえず、ミリアはドアから離れたわけだし、この部屋を出て客間にでも行けば良いだけ。
そう考えて部屋の入口のドアの所まで来た、、、が。ドアのノブが動かない!? 壊れた?
ミリア「これ以上、邪魔が入らないように鍵をかけました。」
えぇ! 俺も出れないじゃないか! この部屋の鍵ってミリアが持ってるの?
そういや俺は持っていないが・・。
エストリア「何よそれ!反則じゃない?!
そういうのはヒロタンが決める事よ!」
さすがにエストリアが突っ込んでくれた。
ミリア「運命です。」
エストリア「そんなわけないでしょ!
しょ、しょうがないわね。ヒロタンはこっちの部屋に来るのよ!」
いいのか? 入ったら殺すみたいに言われた時もあったが。
まあ、たぶん単にエストリアの部屋を通って外に出ろって意味だろう。今日は、それで客間に行って寝るという事で・・
エストリア「ミリアに見せつけるようで悪いと思うけど仕方ないわね。
もし聞こえたらごめんなさい。」
ミリア「なんですって!!」
うわ~。何を見せつけるって言うのだ!? 何が聞こえるのだ?
こうなるとエストリアの部屋に行くとしても、それなりの・・
思わず立ちすくんでいると、反対側のもう一つの扉で何かが光ったような気がした。いつの間にか、もう一つの続き部屋のドアが少しだけ開いている。エミャルが使っていた部屋だが今夜はエミャルはいないので誰もいないはずだが、、。掃除の人が閉め忘れた?
いやでも、わずかに開いたドアの隙間で光ったのは、目? それに良く見ると人影も見える。 そして、その背丈だと他には考えられない。
俺「俺は、こっちの部屋で寝るよ。」
そう言いながら、俺がそのドアに近づくと慌てて閉じられた。俺以外はドアが少し開いていた事に気づいていないようだ。
ミリア「えっ?」
エストリア「そっちは誰もいない部屋でしょ?」
そのドアを開ける。開けたとたん、薄暗い中をパタパタとドアから遠ざかる影。
エストリア「まあ、いいわ。今夜は邪魔が多いですものね。」
ミリア「えっ!?」
部屋に入り後ろでドアを閉める。薄暗いけど小さなランプがついている。それと窓から差し込む星の明かりのおかげで真っ暗というわけでは無い。
後ろで閉めたドアの向こうから声が漏れて、
ミリア「あなたのせいですよ! 悪趣味に私とヒロタン陛下の初めてを!?」
ライラ「違います!」
あとは良く聞こえなくなった。
暗くて良く見えないが、少し離れて立っているのは確実に、。
そして、その小さな人影から消え入りそうな声が、
「ち、近寄らないで・・ください。」
俺「変なところを見られたかな・・」
「盗み見ていたのは誤ります。ですので、、。出て行ってください。」
だんだん目が慣れて来た。そして、次第にはっきり見えて来たのは大きな黒い瞳に涙をいっぱいに浮かべたミシャ。星の明かりで涙がキラキラと光っている。
ハーレム展開の熱情が一気に冷めて、ミシャの痛みが伝わってきた。
美しい分だけ痛すぎる。零れ落ちる涙が刺さるように痛い。




