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飛行艇

 細見の帆船・・の上に銀色の・・飛行機? 飛行艇? この世界に、こんな物があるのか?

 でも、エンジン、、と言うか動力があるようには見えない・・。どうやって飛ばすのだ?

 聞こうと思ったが、ライラはいつの間にかいなくなっていて、とにかくエストリアと二人、船に乗せられた。おれたちが乗り込むと、すぐに岸壁(がんぺき)を離れる。

 船員たちは、皆、忙しく働いている。そのまま外洋に出たが、普通に帆船(はんせん)として航行(こうこう)しているだけ。細見の船体で高速だとは思うが、それだけの事? 上に乗っている飛行艇は(かざ)り??


俺「エストリアは知ってるのか? 甲板に乗ってる飛行艇・・?の使い方・・」

エストリア「さあ。とにかく速いって事しか聞いて無くて。」


 朝、ミシャに聞かれた時に答えなかったのは、意地悪じゃなくてエストリアも分かって無かったから?


 寝不足なせいもあって船の中で眠りかけていたら、椅子から放りだされそうな、すごい()れで起こされた。

 港を出てたいしてたっていないと思うが、いきなり(あらし)!? 運が悪いな・・。

 丸い窓から外を見ると、激しい雨があたっている。既に暴風雨のようだ!

 大丈夫なのだろうか?


 暴風雨の中を船はマストが折れそうなほどに風をはらんで、ものすごい速度で波を切って進んでいく。 椅子につかまって()れに耐えながら外の(あらし)を見ていたら、突然、船員に声をかけられた。


船員「そろそろ、(うつ)ってください!」

エストリア「どうすれば良いの?」


 エストリアも分かっていないらしい。


船員「これを着てください。」


 救命胴衣(ライフジャケット)雨合羽(レインコート)のような物を着せられた。そして、甲板に出て、上に載ってる飛行艇に乗り移るように指示される。やっぱり飾りじゃ無かった?

 船室から甲板に出る(ハッチ)を開けると、外は本当にすさまじい(あらし)だ! 下手に飛ばされたら海に落ちて死ぬぞ! 

 飛行艇は乗船する前に見た通り、船の進行方向と逆向きに積んである。明らかに操縦席(コックピット)と思えるものが逆向きだ! そして飛行艇の下からロープが伸びていて、母船のウインチのような所につながっていた。単にそれだけで、滑走路(かっそうろ)打出機(カタパルト)も何もない。相変わらず動力も分からない。

 飛行艇の胴体は軽金属のモノコックといった、かなり近代的な物だ。この世界の技術レベルはちぐはぐで理解できない事が多い。一方で、羽は軽金属のパイプの間に布を張った感じで、なんだか、たよりない。それを折りたたんである。なんとなく昆虫の羽を思わせる。

 嵐の甲板を飛ばされないよう、()うように進んで、なんとか飛行艇の入り口にたどり着いた。

 既に操縦士(パイロット)と思われる二人が乗り込んでいて、なにならチェックしている。沢山のレバーやハンドルを、一つ一つ操作(そうさ)して、外の羽との接続(せつぞく)(ため)しているようだ。

 後ろには荷物が積まれていた。大きな箱が一つと、小さい箱がふたつ。小さい箱はホテルから持って来た俺たちのものだが、この大きな箱はなんだろう。俺たちの荷物には無かったから、飛行艇の備品かもしれない。

 機長らしい人に、座席(シート)に座るように指示された。雨合羽(レインコート)を脱いで座る。俺の後からエストリアも乗り込んできて、おれの隣の座席に座った。客席は、その2つだけ。

 ドアを閉めると、暴風雨の音が(やわ)らいで、ようやく普通に会話ができるようになった。


エストリア「ここらあたりは、(つね)(あらし)なんですって。」


 常に(あらし)? そういう気象現象なんだろうか。

 船長・・いや、機長と思われる人が後ろを向いて


機長「そうですね。我々の目的は、その(あらし)ですから。

 そろそろ、出ますよ! 座席(シート)についてベルトをしっかり締めてください!」


 声からすると機長は女性のようだ。つなぎっぽい飛行服(パイロットスーツ)救命胴衣(ライフジェケット)だと性別は分からない。声質以外、女性という感じはしない。

 言われるままに体をベルトで固定する。このあたりは完全に航空機だな。

 機長たちがレバーを操作すると、窓の外で羽が広がった。羽は船の幅を超えて大きく海に張り出していく。そして、その羽に嵐の風があたり機体が振動する。


機長「行きます!」


 機長が床のレバーを倒すと、ちょっとしたショックの後、(あらし)の風にあおられて、飛行艇が母船を離れた。

 離れた途端、大きく右に()れて窓に水面が迫って来た! そのまま海に突っ込むかと思ったが、すぐに姿勢を立て直し、高く()い上がる。なかなか怖い!

 そして、上昇を始める。母船とはロープで(つな)がっているが、そのロープが伸ばされているようだ。

 飛行機と言うより(たこ)かな?逆向きに積んであったのは、風の向きに合わせたのだろう。船は追い風で進んでいるから逆向きに積めば飛行艇には向かい風になる。その向かい風を受けて、舞い上がって行く。

 しかし、単なる(たこ)だと、船と同じ速度でしか無いと思うが。


 と考えていると、どんどん母船から離れていく。ロープを伸ばす事で嵐の中を登っていく。

 上昇するに従って、ますます風が強くなった。機体がビリビリと振動して、きしむ。大丈夫なのか?


エストリア「ようやくヒロタンと二人だけになれたわね。」

俺「・・・。あー、久しぶりだな。」


 エストリアは平気なのか?

 俺は微妙に怖いぞ! 外はすごい(あらし)だし、こんな物で飛んでるのだし。


エストリア「二人だけになったら言おうと思ってたのだけど・・・。

      いい? 幼女趣味(ロリコン)は絶対にダメよ!」

俺「あ、うん。」


 いや、昨日、馬車の中でも言ってたよな。しつこいぞ。


エストリア「特にあのミシャ様ね!あの子が、あなたを不幸にしているのよ!」

俺「そんな事も無いと思うけど。」

エストリア「そうなのよ!

      だから、これ以上、あの子に(かか)わるのは止めて!」

俺「いや、あの。」

エストリア「まあ、あなたが変態(ロリコン)になってしまった事については、私にも責任があるかもしれないわ。」


 なったのか? 確定してるのか?


エストリア「最近、私が、あなたから離れていたから・・。

      それで、エミャルなんかとも・・。」

俺「昨日のエミャルの話しは違う意味だぞ。」

エストリア「いいこと!

      あなたは、本当の女性を知るべきなの!」

俺「え~と・・。」

エストリア「だから、戻ったら、わたしが、」


 会話を(さえぎ)るように、閃光が窓を照らして、次の瞬間に凄まじい(かみなり)の音が響いた。

 そして、、、ほぼ同時に船内に悲鳴(ひめい)が響き渡る! まるで小さい女の子のような悲鳴!


俺「(かみなり)が怖いのか?エストリアにしてはかわいい悲鳴だな。」

エストリア「どういう意味よ!? それに私じゃないわ!?」

俺「へ?」


 機長と、副機長が顔を見合わせている。二人でも無さそう!?

 ただ、副機長の視線が後ろの箱に・・。この人は何か知ってるのか?

 と思っていたら、副機長の視線の先にある大きな箱が勝手に動いた! もしかして?!


 慌ててシートベルトを外して、うしろに()んである大きな箱にかけよる。

 どうやら悲鳴の(ぬし)はこの中だ!

 かけてある(なわ)を外して、フタを開けると


ライラ「うわっ。ばれちゃったわね。」

俺「何をしている!?」

ライラ「エストリア姉さまは私が守ります!ヒロタンと二人だけにはしませんよ!」


エストリア「何を言ってるの!?」


副機長「そこの壁に補助席があります。早く座ってベルトをしてください。」

機長「補助席? そんなものをいつセットしたのだ?」


 もしかして、副機長とライラはグルなのか?


機長「密航者か!? これでは重量オーバーだ!」

副機長「ライラさんを入れて計算済です。

    比較的軽い人ばかりなので、規定限度内に(おさ)まっています。」

機長「・・・。戻ったら処罰は覚悟しておけよ。」


俺「しかし、ライラにしては、かわいい悲鳴だったな。」


 小さい子みたいな悲鳴だった。


ライラ「どういう意味? それに私は悲鳴なんか上げて無いわよ。」


俺「へ?」


 振り返って見ると、小さい方の箱の一つも動いたような。

 再び、あわててベルト外して、箱にかけよる。小さい方の箱を開けると・・


ミシャ「く、苦しい・・。」

俺「こんな箱に入ってるからだ。いくらミシャでも小さすぎる!」


ライラ「何よ! この子!」

機長「この子も君が?」

副機長「知りません!」


ミシャ「苦しい・・・。」


 箱の中で酸欠状態になっていた?


機長「呼吸用のマスクが棚の上にあります。それを使ってください!」

副機長「補助席は、もうありませんよ。」


 機長が指さした棚の扉を開けると酸素マスクと思われるものがいくつか入っていた。マスクからホース状の物が出て何かの装置につながっている。

 ミシャを俺の膝の上に座らせ、マスクを口にあてる。付属のベルトをミシャの頭の後ろに回してマスクを固定。


機長「マスクの装着方法(そうちゃくほうほう)を良くご(ぞん)じですね。」


 機長が何か操作すると、かすかなガスの流れるような音が聞こえた。

 

機長「しかし、二人も多いとなると完全に重量オーバーだ!

   止むを得ない。船に巻き戻してもらおう! 下の船に発光信号を!」

副機長「でも、ここで戻っても・・・。」

機長「タリーニャ! これは命令だ! 安全第一だぞ!」

副機長「分かりました。」


 タリーニャと呼ばれた副機長が、小さい窓をあけ、下の船に向けて発光信号を送り始める。


機長「一度、母船に戻ります。そこでお二人には降りて頂きます。」


 まあ、そうなるわな。それに、ミシャの状態を考えたら戻るのは正解だろう。船ならば医務室があるだろうし、船医がいるかもしれない。

 酸素マスクのおかげか、今は落ち着いているみたいだが。


ライラ「あんたのせいよ!」


 ミシャに言ってるらしい。人の事を言える立場なのか?


副機長「信号、送りました。これでっ」


 突然、船体に衝撃が走って椅子から投げ出されそうになった。同時にバキバキっと言う、ものすごい音! 見ると足元(あしもと)(ゆか)に穴が!

 その穴から、落ちていくロープとその先についた船体の破片が見えた。おそらくは床の一部。


副機長「うわわわわ!」

機長「バカどもが! 減速させずに、いきなり停止させたのか?」


 どんどん伸ばしていたロープを、いきなり停止したらしい。飛行艇は、ロープを繰り出しながら上昇中だったから、それをいきなり停止した事で、床ごとロープが外れたようだ。

 文字通り糸の切れた(たこ)となって、飛行艇はグルグル回り始める。


副機長「うわわわっ! 落ちるぅ! し、しし死ぬぅ!! 」


 一番、パニクってるのは、タリーニャと呼ばれた副機長だ。

 もっとも、俺は声も出ない状態・・・なんだが。


 それでも、機長は操縦かんを必死に操作している。グルグル回る機内でさすがだ!

 そして、回転を止めた!


機長「落ち着け! 飛行に問題は無い! どのみち切り離そうとしていた所だ。」

副機長「わわわわわ!落ちるぅ!死ぬぅ!!」

機長「だまれ! ブス!」


 そう言いながら機長が副機長を足で蹴った。そういえば副機長も女性だ。

 副機長は蹴られた事で、我にかえったようだが、。それでも震えている。


副機長「ひ、ひどい・・」

機長「タリーニャ! いいから高度計を読むんだ!」

副機長「こ、高度計?ですか?」

機長「そう! 目の前の高度計を声を出して読め!」

副機長「10121ダル」

機長「続けて読め!読み続けてくれ!」

副機長「10122」

副機長「10123」


副機長「10124・・、。上昇しています!」

機長「そうだ。(すで)に上昇気流に乗っている。

   このまま行くよ!」

副機長「わかりました。」


 上昇している事で落ち着いたらしい。


副機長「あ~っ。でも重量が・・。6人も乗っていたら、どこまで上昇できるか・・」


 機長が後ろを向いて・・


機長「お嬢ちゃん、大丈夫かな? 自分の体重は分かる?」


 ミシャに言ってるらしい。

 ミシャがうなづいてマスクを外そうと手をかけたので、俺が後ろからマスクを外した。


ミシャ「先に何か・・。袋・・。ウッ・・」


 機長があわてて皮の袋を手渡してくれたので、それをミシャの口の前に持っていく。

 ミシャの背中をさすると、朝食を全て吐き出した。

 口の周りも(ひど)い事になったので、俺のシャツを少し切り()いてミシャの口を(ぬぐ)う。そして、そのぬぐった生地を、一緒に皮の袋に入れて口を閉じた。


ミシャ「あ、、ありがとうございます。」

機長「あー。それで、嬢ちゃん。体重は? 分かるかな?」

ミシャ「嬢ちゃんではありません。こう見えて、8才と10節になります。」


 元の世界では16才ぐらいだよな。もうすぐ17才って感じ?

 見た目は、ほんとに小さい子なんだが・・


ライラ「え? そうなの? 9才の私と大差無いじゃない!

    年齢的には十分に女だわ!!」


 ライラは18才ぐらいって事か。むしろ、大人びて見えるぐらいだが。


機長「あー。それはすまなかったね。では、お嬢さん、。

   悪いが体重を教えてくれるかな?」


ミシャ「体重は、24ダイムです。」


機長「いやいや。ここでそういうウソは止めてくれないか?

   そんなに少ないわけ無いだろう。」


 でも、ミシャの体なら。


俺「ミシャは病気なんだ。本当にそれしか無い。見た目が幼いのも病気のせいだ。」

機長「ほんとうに?」

俺「ほんとうだよ。なんなら、こちらに来て(かか)えてみれば分かる。」

機長「・・・。それで良く生きてますね。」

俺「正直、ぎりぎりなんだ。」

機長「・・・。分かりました。マスクを戻してあげてください。」


 機長は少し考えてから。


機長「そのぐらいの重量なら荷物を捨てればなんとかなるでしょう。

  タリーニャ、捨てられる物を全て捨ててくれ!」


 機長が操縦している間に、副機長が荷物を捨て始める。ドアを開けて荷物の箱を嵐の中に放り出す。


エストリア「私かヒロタンの荷物よね。一つは最初からミシャ様になっていたみたいだけど。」

機長「(あきら)めてください。」


副機長「この箱のフタは、床の穴をふさぐのに使えませんか?」

機長「なるほど。誰かが落ちたら危険だし、とりあえず、それでふさいでおいてくれ。

   あとで、ちゃんとした修理を試みよう。」


 穴の上に箱のふたをおいて、ロープで縛った。

 副機長が穴を覆った箱のふたを蹴ってみたが、意外に大丈夫そうだ。


エストリア「こんなので大丈夫なのですか?」


機長「着水には耐えられないでしょうね。後で、もう少しちゃんとした修理を試みます。」


エストリア「まったく、なんて事に・・。

      あなたたちのせいですよ!」

ミシャ「・・。」


 ミシャが言い返さないとは。だいぶ弱ってるのか?


ライラ「ほんとに、どうかしてるわ!」


 おまえもだ!


ミシャ「私、。ごめんなさい。(はや)く国に戻りたかったので。」

俺「いいよ。一緒(いっしょ)に行こう。」


 俺の言葉にエストリアが何か言いたげだったが。ミシャのぐったりした様子を見て、それ以上は言わなかった。


 窓から見ていると飛行艇は高度が上がるに従って展開する羽を広げているようだ。折りたたんだ銀色のパイプを伸ばし、パイプの間に張った布を広げていく。飛行機と言うよりは(ちょう)のようになってきた。


機長「全員、マスクをしてください! これより上では必要になります。」


 酸素マスクが必要という事は、かなりの高度まで上昇するという事だよな。こんな飛行艇(グライダー)で、そんな事が出来るのだろうか?

どんどん広げている羽は、薄くなった空気でも浮力を維持(いじ)するためか。


 気温も下がってきて、外の嵐は雨から雪っぽい物になった。配られた毛布で体を包む。

 そして雪も見えなくなり雲ばかりに。


 大きく揺れるたび、ミシャは()きそうになっているが、(すで)に吐く物は残っていない。ただ、苦しそうに顔を(ゆが)めているだけ。


俺「大丈夫か?」

ミシャ「お願いが、、。」

俺「なんだ?」

小さい声でミシャが・・

ミシャ「私の体の臓器(ぞうき)は支えが無いのです。こんなに()れていると・・。」


 何?


ミシャ「私は、、。(すで)(ちから)が入りません。 お兄様の手で支えてください。」


 意味が分からなかった。が、ミシャが俺の手を取って、自分の体にあてた事で理解した。

 大きく揺れるたびに、ミシャのえぐれた体の内側で内蔵あばれているのだ。腹筋でおおわれていない部分がかなりある。

 俺は手でそれを抑えた。ミシャの心臓の弱い鼓動と呼吸が手に伝わる。


ミシャ「あ、ありがとうございます。」


 そう言った後、ほとんど意識を失った。今は、その方が良いだろう。

 手に伝わる、ミシャのゆっくりとした呼吸と心臓の鼓動で、いくぶんか安心できる。


 飛行艇(グライダー)は雲だけの世界を大揺れに揺れながら登っていく。


 どれぐらい時間がたっただろうか。

 突然、揺れが止まり、ウソのように静かになった。

 外を見ると雲が晴れて、まだ昼間だと言うのに空が少し暗い。太陽は十分に高い所にあるのだが、同時に星が見える! おまけに地平線が丸い! 惑星としての湾曲(わんきょく)が見える!

 どんだけ上昇したのだろう。 或いは地球より小さい惑星なのか?

 羽に張った布は薄くて、太陽の光を反射して虹色に見える。銀色の(すじ)の間に張られた虹色の羽。

 これ、外から見たら、ものすごく綺麗(きれい)なんじゃないだろうか。


機長「方位測定を。」


 副機長が持ち出してるのは、六分儀(ろくぶんぎ)? おそらく、そのためにあるであろう、天井の窓に当てて・・。

 方位を定め、地図を確認して飛行艇は向きを変えた。


 そして、今、前方に見えるのは・・


 東の島・・大陸って、本当に火山だったのだ。惑星の湾曲が見えるほどの、今の高度から見て、初めて巨大な富士山型の火山に見えた。一つの山だけの丸い島。なんと中央にはカルデラのくぼみまである。島の地上にいた時には、わずかな傾きだけで平原にしか見えなかったが、こうして見ると全体が確かに山になっている。あまりに大きく、あまりに少しづつの傾きだから、地上では傾斜のある平原にしか見えなかった。

 そして、中央のカルデラから噴煙? いや、違う。渦を巻いた積乱雲のような物が上空に向かって登っている。たまたま、積乱雲が中央のカルデラにあるだけかな?

 この世界の気象現象なのだろうか。理解できない事が多い。


 その巨大火山の島に向かって、飛行艇(グライダー)は静かに飛んでいく。


 ようやく、この飛行艇の飛行方法が分かってきた。

 嵐の上昇気流で、とんでも無い高度まで登ったあと、滑空だけで目的地に向かうらしい。そんな事が出来るのか? 元の世界からみたら、とんでも無い話だが。


 静かになった事で機長と副機長が二人で船体の床に開いた穴を調べ始めた。


機長「まいったね。こりゃ、修復は無理だぞ。着水したら、たちまち浸水してしまう。」

副機長「できるだけ港近くに着水しましょう。そして、救命艇(ゴムボート)(うつ)る。」

機長「この穴だと、すぐに沈みそうだが。」

副機長「救命胴衣(ライフジャケット)を着けてますし、沈む前に、全員、海に飛び込むしかありません。

 扉を開けたまま着水して、救命艇(ゴムボート)を放りだし。ボートまで泳ぐ。」


俺「海水に()かって泳ぐという事ですか?」

副機長「()むを得ないでしょうね。救命艇(ゴムボート)の展開には少し時間がかかります。

   その前に、この飛行艇は沈んでしまう。」

俺「秋も深まっているから泳ぐには冷たいような。」

副機長「短時間なら大丈夫です。健康な成人であれば、。」


ミシャ「わ、私は・・。」


 皆の会話で目を覚ましたのかミシャが・・。

 だが、そうだった! ミシャがいる!


俺「ミシャには無理だ!この子は耐えられない!」


 ほとんど心臓から皮膚一枚しかないのだぞ。

 回復薬と魔力でかろうじて(たも)っているだけのミシャの体で()えられるわけがない。

 視線がミシャに(そそ)がれて、一瞬、全員が静かになった・・。


ミシャ「良いのです。私が悪いのです。」


 何を言っている!?


ミシャ「これで、お兄様を不幸にする事もなくなるでしょう・・。」


 おい!止めろ!冗談じゃない!

 もしかして、箱の中でエストリアの言葉を聞いていたのか!


俺「どうせ、この機体を破棄するつもりなら(りく)に降りる事はできませんか?」


 胴体着陸だ!


機長「無理ですよ。この飛行艇は軽く作るために非常に薄い金属になっています。

 以前、風に流されて畑に着地した飛行艇がありましたが、、大破して全員、死亡しました。」


 そんなに弱いのか?


ミシャ「ですから私の事は気になさらずに・・」


 そんなわけにいくか! でも、どうすれば・・

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