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港へ戻って

 馬車はかなりの速度で真っ暗な夜の街道を走っている。俺の隣はエストリア、正面にライラ。そして、、何故かライラの隣にエミャル。

 既にとっぷりと暮れた街道を、馬車の強力なランプが照らしている。


エストリア「言っとくけど、港からの予約は二人分だけよ。あなたの席は無いわ。」

エミャル「さきほどから何度も聞きました。私は別に探します。港まで乗せて頂ければ結構(けっこう)です。」

エストリア「まあ、良いですけど。」


俺「それで、西の島・・大陸で何があったのだ?」

エストリア「詳しい事は分からないけど、魔王国との国境付近の山岳地帯から空を飛ぶ魔獣(まじゅう)飛来(ひらい)して帝国領内を荒らし回っているみたい。

  昨日は帝都にまで(あらわ)れて被害が出たとか。」

俺「帝国軍で対抗できないのか?」

エストリア「空から(おそ)われると(むずか)しいみたいね。抵抗(ていこう)はしているらしいけど。」

俺「たいへんだな。」

エストリア「言っとくけど、他人事(ひとごと)じゃないのよ。

  これから、あなたは帝国へ戻って、その魔獣(まじゅう)撃退(げきたい)しないといけないの!」


 行きたくねぇ!


エストリア「勇者を(たお)したヒロタンならやれるでしょ。」


 エストリアは分かって無いのかな? 俺の魔力は・・


エミャル「私がいないと無理じゃないかしら。」


 だよな。エミャルがそばにいないと、たいして魔力を使えない。


エストリア「エミャル!あなたねぇ・・。さっきの官邸でもそうだったけど。

   いつから、そんなに自信家になったの? 変わり過ぎじゃない!?」


 まあ、そうなんだが。

 エストリアとしては、それがイラだたしい?


エミャル「いえ、そういう事じゃなくて・・。」

エストリア「大丈夫! ヒロタンには私がいれば十分よ!

    あなたは必要無いわ!」

俺「エミャルが言ってるのは、違う意味、」

エストリア「あなたは黙っていてくれる!?

  これは、私とエミャルの問題よ!」

エミャル「エストリアさんは分かって無いみたいですけど、ヒロタンさんと私は、(すで)にそういう関係なんです。」

エストリア「なんですって!? エミャルなんかと?! いつの間に!!」


 なんだか、誤解してないか?


エストリア「  ・・・。

  いえ、。 そうね。

  私が離れていたのが悪かったのでしょう。それでエミャルなんかと・・。」


 エミャルと何?


エストリア「でも、これからは私がヒロタンのそばにいるのよ。そして、私が、、。」


 微妙に恥ずかしそうにするエストリアが、普段と少し違うかな?


エストリア「そのためにも、先に二人で海を渡るの!」

エミャル「何を言ってるのですか?」

エストリア「悪いわね。私とヒロタンの二人だけになれば、。

      女としての魅力で私が勝つって事よ。あなたには無理!」


 と言いながらエミャルを(ゆび)さしたが・・。

 わざとかどうか知らんが、エミャルの胸のあたりを指さすのは反則(レッドカード)じゃないか?

 エミャルは腕で胸を隠すようにしながら、言葉を失ってるぞ!


 一方、ライラも、今更ながら、エストリアの態度で何か気が付いたらしくて・・


ライラ「まさか、エストリア姉さまも、この悪魔に誘惑されているのですか?」

エストリア「悪魔? ヒロタンが? 」

ライラ「エストリア姉さまはご存じ無いかもしれませんが、このヒロタンは何人もの女性をその毒牙(どくが)にかけた、女性の(てき)です。

    ミルレ姉さまも誘惑(ゆうわく)されてしまって・・・。

    他にも沢山の女性が、この男のせいで不幸な目にあっています。」

エストリア「確かにヒロタンの女性関係は問題よね。」


 視線が一瞬、またエミャルに向いたような・・

 エミャルは、相変わらず胸を隠すようにしながら、、。


エミャル「た、確かに問題ですね。色香(セクシー)でヒロタンを誘惑するような女とか。」


 怖いから止めて!


エストリア「いいえ!むしろ、最近のヒロタンの問題は子供(ロリ)よ!

      (すで)変態(ロリコン)だわ!」

エミャル「(ひど)い!胸が無いからって子供(ロリ)っ!?」


 いや、エミャルの事じゃないと思うけど・・


ライラ「そうなんです!

    ヒロタンは悪魔(あくま)で、おまけに見境(みさかい)の無い変態(ロリコン)です!

    さきほどのルルムが良い例です!」

エストリア「子供に好かれるのは悪い事じゃないと思うけど、変態(ロリコン)はダメね。」

エミャル「あっ・・。ミシャとかの事・・かしら。」

エストリア「そうよ。誰の事だと思ったの?」

エミャル「い、いえ、なんでも・・。

     でも、言っておきますが義妹趣味は変態(ロリコン)と違いますよ。」

エストリア「言葉を変えてごまかしてるだけだわ。妹趣味(シスコン)変態(ロリコン)よ。」

エミャル「それは、妹を知らない人の言葉ですね。」


 う~ん。会話に付いていけない。


エストリア「確かに私に妹はいないけど、。」

ライラ「そ、そうなんですか? でしたら、私がエストリアお姉さまの妹に!」

エストリア「何を言ってるの?混乱するから止めて!」


 エストリアが俺の耳元で 「この子たちは港までだから。後は二人よ。」


 やがて馬車は港街(みなとまち)に入り、こんな時間でも明かりをつけている一軒のホテルの前で停まった。


ライラ「着きました!ここです!」


 ホテルから出て来たボーイ風の人たちに、エストリアが荷台から荷物を下ろすように指示する。

 エストリアの荷物は2つあるようだが・・。


俺「俺は何も持って来て無いぞ。」

エストリア「ヒロタンの分も用意してあるわ。大丈夫よ。」


 ライラに先導(せんどう)されてホテルに入る。

 ロビーの奥のカウンターから若い男が


「来ましたね。ライラ!

 部屋は取ってありますが、くれぐれも騒動(そうどう)はごめんですよ。」


 ライラの知り合い?


ライラ「紹介するわ。いとこのタクラルよ。ここの支配人をしてるの。」

タクラル「はじめして。タクラル・エルランです。」


 エルランって事は、以前の商会に関係しているのかな?


俺「ヒロタンです。若いのに支配人とは(すご)いですね。」

ライラ「親が与えたのよ。商会は乗っ取られたけど、ここは、わけあって残ってるわ。」

タクラル「(ばあ)さんから聞いたのだろうが、言い方に気を付けてくれ。

  元の商会との関係をエミャルたちに気づかれたら、ここまで危なくなる。」


 まて! エミャル本人がいる!

 エミャルが、何か訴えるような目で俺を見ているじゃないか! エストリアのおかげで、ただでさえ精神的に危ない状態なのに。


俺「いや、エミャルさんと言う人も、そんなに悪い人では無いかもしれませんよ。」


 と言ってみる。


タクラル「あなたは(おに)のエミャルを知らないようですね。あの鬼畜(きちく)は・・」


 エミャルが糸の切れた人形のように


タクラル「あれ? どうされました? そちらの綺麗なお嬢さんが倒れそうです。」


 (あわ)てて俺がエミャルを支える。

 宿帳(やどちょう)には、エミャルは別の名前を書いた方が良さそうだな。


タクラル「旅の疲れでしょうか? 私に出来る事があれば何でも言ってください。」


 エミャルに好意さえ抱いているようだが、知らないというのは良い事だ。


ライラ「それで部屋は?」

タクラル「二人部屋を2つ残してあるよ。」


ライラ「二人部屋をふたつ? 他に空いてる部屋は?」

タクラル「今日はお客が多くて、(すで)に一杯だ。たぶん、他のホテルも。こんな時間だし。」

ライラ「ヒロタン一人で一部屋だと、残り3人だから足りないわね。」


エストリア「私とヒロタンは、同じ部屋で良くてよ。」

ライラ「ダメです! その男は危険(きけん)です!」

エストリア「じゃぁ、。エ・・を(そと)に放り出す?」


 一応、エミャルの名前を出さないように気を使っているらしい。

 でも、俺に抱えられて倒れているエミャルを放り出すと言ってるのか?!


俺「エストリアは、やさしいはずだよな。」

エストリア「・・、あーもう。どうしろって言うのよ。」


ライラ「分かりました。これもステブリーの神のお(みちび)きでしょう。

  私がヒロタンと同じ部屋になります。」


 そうなるのか?


タクラル「おい! トラブルは止めてくれと言ったはずだぞ。」


 この男は何を(あせ)っているのだ?


ライラ「私は皆の心の平穏(へいおん)のために使命を()たすだけです。」

タクラル「大丈夫かなぁ・・」


 心配そうにしながら、タクラルは棚から鍵を取り出して、。


タクラル「部屋の鍵は、この2つ。3階の・・」


 ライラはタクラルから鍵を奪い取ると、先頭に立って階段を(のぼ)り始めた。

 何か思い()めているようにも見える。


エストリア「それで、また、私がエミャルと一緒なの!?」

エミャル「私、ヒロタンさんと一緒に・・」

エストリア「ダメよ!私と来なさい!」


 エストリアがエミャルを引きづるように引っ張って階段を登る。


俺「俺は早く寝たい。」


 本心である!


タクラル「お客さんの荷物を運んであげてくれ。」


 二人のボーイが荷物を運んでくれた。


 部屋は質素だが、2つのベッドが綺麗に整えられていて悪く無い。

 そして、俺は、(すで)に死ぬほど疲れている!

 今日の昼間、勇者と死闘をやったのだぞ! それなのに、こんな時刻まで・・。

 着替える・・と言うよりは上着を脱いだだけで、ばったりとベッドに。


 同室のライラは運んでもらった自分の荷物を開いてなにやら探していたが。


ライラ「あらー。寝巻(パジャマ)を持ってくるのを忘れたわ。下着で寝るしかないわねぇ。」


 なんだか言ってるが、既に眠くて良く聞こえない。


ライラ「じゃあ下着姿で寝るわねぇ。下着だけで!」


 うん。勝手にしてくれ。


ライラ「下着だけ・・」


 そのまま、俺は完全に意識を失った。ほぼ瞬間的な寝落ち。



 翌朝、エストリアが(ドア)(たた)く音で()こされた。十分な時間では無かったが、ある程度、寝たので、昨日よりはだいぶマシな気分だ。


エストリア「いつまで寝てるの! 支度(したく)して出発するわよ!」

俺「わ、分かった。今、行くよ。」


 眠い目をこすりながらベッドから起き上がると、、

 (となり)のライラは窓から漏れる朝日の中で、ベッドに横たわりながらも(すで)に大きく目を開いていた。


俺「おはよう。早いね。」

ライラ「早く無いわ。寝てないだけ!」


 よく見ると、確かに充血した目は寝不足(ねぶそく)っぽい。


俺「どうした?(まくら)が合わなかったのか?」


ライラ「なんで、私を(おそ)わないの!」

俺「へ?」


 そう言いながら、ベッドから起き上がったライラの手には細見のナイフが握られている。

 ずっと握りしめていたのか、指が白くなるほどだ。


俺「なんじゃそりゃ? 強盗でも来たのか?」

ライラ「違うわよ! あんたが襲ってくるでしょ。そしたら、これで殺すつもりで!」


 ちょっと(こわ)いのだけど。


俺「殺すって・・。(おだ)やかじゃないな。」

ライラ「私は下着だけなのよ!」


 う~ん。残念ながらエストリアから見たら見劣りする貧相な体だが・・。


ライラ「こんな美少女が隣で寝ていたのよ?」


 エミャルの2割ぐらいかな?


俺「俺は、そんなに悪いヤツなのか?」

ライラ「悪魔のあんたは、死ぬ事で(すく)われるの。だから、これは、あんたのためでもあるのよ。」


 何を言ってるか、さっぱり分からん。とりあえず、怖いから逃げよう!

 どうせ、こいつとは、この港までだ!


俺「俺は行くぞ。ライラも早く降りて来いよ。」


 洗面台みたいな紐を引くと水が出るところがあって。歯磨きやせっけんもある。

 なかなか良いホテルだ。


 顔を洗って下に降りていくと、食堂(レストラン)で皆が朝食中だった。美味しそうな匂いがする。


エストリア「やっと起きて来たわね。おはよう。」

俺「おはよう。」

ミシャ「おはようございます。」

俺「あー、おはようっ!?」


 何気に挨拶(あいさつ)してしまったが、。何故、ミシャがここに?


俺「なぜ、ミシャが?」

エストリア「まさか、同じホテルに泊まってるとは思わなかったわ。

   夜遅かったし、私たちが着いた時には皆、寝ていたのね。」


神官長「偶然じゃな。」


俺「エ、、あの・・、エ・・」

エストリア「エミャルなら、(さき)()きて港のエミャル商会の事務所に行ったわ。」

俺「いいのか?エミャルの名前を出して?」

エストリア「もう、ばれてるみたいよ。」


 入口で、食事の手配をしている支配人に向かって。


エストリア「ですよね?」

タクラル「(おどろ)きました。あの方がエミャルさんだったのですね。

  父から聞いていたのと、あまりに違っていて、。なんだかもう正反対というか。」

エストリア「この国でのエミャルの見た目の評価は理解できないのだけど・・。」

タクラル「エミャルさんは、たいへん、(うつく)しい方ですね。悪魔というよりは天使でしょう。」


 この、おぼっちゃんは何を考えているやら。


エストリア「いいの? 油断していると、このホテルも(うば)われるわよ。」

タクラル「うっ・・。」


 神官長の隣の空いてる席に(すわ)ると、ホテルのスタッフらしい女性(メイド)が俺の分の朝食を運んできてくれた。

 なかなか、美味(おいし)そう!


俺「そういえば、ここ数日、トラクさんを見ませんね。」

神官長「気づいて無かったのか? ヤツとその部下はロリャリムの本拠地に残ってるぞ。

  わしの部下も残っている。」

俺「そりゃまた、なぜです?」

神官長「あそこを魔王国の衛星国(えいせいこく)みたいな感じに出来ないかと思ってな。」

俺「なるほど・・。」


 抜け目ないなぁ。村としては、どのぐらいの規模だったのだろう?


 俺が食べているとライラが、少しふらつきながら降りて来た。


エストリア「どうしたの? 寝不足みたいだけど、枕が合わなかった?」

ライラ「い、いえ。ちょっと、。宗教上(しゅうきょうじょう)の問題で。」


エストリア「良いけど、飛行艇(ひこうてい)のところまでは、ちゃんと案内してくださいね。」

ライラ「分かっています。」


 なんだって? 飛行艇?

 そりゃ、早そうだが・・。そんな技術があるのか?


ミシャ「飛行艇(ひこうてい)ですか? それって、空を飛ぶのでしょうか?」

エストリア「ミシャ様には関係無い、お話しね。私とヒロタンが乗るだけですよ。」

ミシャ「・・。(はや)そうですね。」

エストリア「そうかも、、しれませんわね。」


 おいおい。そういう悪役っぽいセリフはフラグになるから止めた方が良いと思うぞ。


 食事を終えるとすぐに馬車を呼んだ。荷物は既にまとめられていて、フロントに置かれている。

 やがて、やって来た馬車に荷物を積み、すぐに出発する。ミシャたちに挨拶する事も出来なかった。


 そして、ライラに案内されて港の桟橋(さんばし)へ。


 港は、最初に来た時に比べて、はるかに(にぎ)わっていた。沢山の船が並び、クレーンのような物で次々と荷物を積み込んでいる。この港からだと西の島へ行く船が多いはずだが・・。貿易が盛んになったのかな?

 そして、俺たちが向かった先には、。


ライラ「準備出来てるみたいですね。」


 細見の帆船(はんせん)の甲板に銀色の・・飛行機? 飛行艇(ひこうてい)?がのっている。

 驚いたな。確かにそう見える。(はね)(たた)んであるみたいだが。下は着水できるように船型になっていて、それっぽい。

 でも、プロペラは無いし、そもそもエンジン、、と言うか動力(どうりょく)があるようには見えない。

 船の向きと逆向きに乗っていて、滑走路はもちろん、打出装置(カタパルト)も何も無い。

 いったい、どうやって飛ばすのだ???

 ライラに質問しようと思ったが、いつの間にかいなくなっていた。そして、すぐに出航するとかで、エストリアと二人、とにかく船に乗せられ・・。

 これ、大丈夫なのか? いろいろと不安だわ。

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