ぎりぎりの治療
神官長「強力な魔法を3回使ったのだ。ミシャ様自身の体を維持する魔力が尽きてしまった。
このままだと確実に死ぬ。」
そう。ミシャは、失われた臓器の機能を自身の魔力で維持していたのだった。
俺「なぜ。」
神官長「おまえを止めるためだ!」
俺はどこで間違ったのだろう・・、。こんな事になるぐらいなら・・
俺「・・・・。
何か、治療法は無いのか?
そうだ! 俺の魔力を供給する的な、、なんかそういう・・」
神官長「供給? まあ、ある意味そうかもしれんが。
試したい事があるからお前を呼んだ。」
俺「あれですか? 俺が、こう、ミシャと手を繋いで・・。」
神官長「はあ? 何を言っとるのだ? どこの世界の迷信だ?
それとも、何の役にも立たないお祈りでもするつもりか?」
いや、あんた、神官長とかいう職種だろ。そういや、この人がお祈りみたいな事をするのを見た事が無いな。
と、。突然、ノックも無しドアが開いて、ロコナが駆け込んできた!
ロコナ「作ってきたわ。両端を尖らせた細見の棒。」
ロコナが白い布で包んで持って来たのは10本ほどの棒。確かに色つや的に魔法用の棒みたいだが、ただし、瑠璃はついていない。そして両側が細くとがっている。
神官長「よし。内視の瑠璃を使って手伝ってくれ。」
神官長がエタノールっぽい液体にロコナが持ってきた棒を漬ける。
俺「何をするのですか?」
神官長「ミシャ様の体を支えているのは、体内に埋め込んだ6つの瑠璃だ。
普段は、それを自らの魔力によって起動する事で、欠けた臓器の機能を補っている。
それが今、停止している状態。」
俺「分かりました。それを動かせば・・、!? え~と手をあてて・・?!」
神官長「バカか!
瑠璃との魔法力供給は、ドルコニアの棒を通してしか出来ない。
だから、この棒をミシャ様の体内の瑠璃まで差し込み魔法力を供給する。
それと、この魔法はコードに触れるので魔王である、おまえにしか出来ない。」
俺「では、その棒を俺が握れば・・。」
でもなんで両端が尖ってるのだ? 片方で良く無いか?
神官長「瑠璃は6つと言ったぞ。おまえの腕は何本だ?」
俺「いや、もちろん2本・・。
じゃぁ、どうするのです? その棒を曲げるとか?」
神官長「曲げると通過する魔力が10分の1以下に落ちる。
幸い、6つの瑠璃は3つづつ2列に並んでおる。
おまえの腕を出せ!」
神官長が俺の腕をエタノールで消毒すると、定規を当て、何かのペンで目印を付けて行く。
採血する・・わけじゃないよな。
左右の腕に3つづつ、合計六か所の目印。
俺「あの~。なんとなく分かった気がしますけど、。怖いので説明してもらえると・・。」
神官長「おまえの腕に棒を突き刺し、反対側をミシャ様の瑠璃まで刺す。」
俺「・・・。6つ印をつけてますが、二つは手に持てば良いのでは・・」
神官長「おまえの魔法回路付近まで突き刺した方が魔法流の抵抗が少ない。戦いの後で、おまえの魔力だって残って無いだろう。
今は、少しも無駄にできない。」
俺「麻酔とか・・」
神官長「意識が無いと供給できんだろが! 少し黙ってろ!」
もしかして、俺は、この人に恨まれてない?
神官長が遠慮なくズブっと棒を突き刺す。痛いなんてものじゃない!
俺「いいい、ガガガ、。」
神官長「暴れるな! じっとしてろ!」
太さ5mmぐらいだろうか。針とは言えない太さだ。血が流れだして止まらない。その出血だけでもヤバイだろう!
いつの間にかミシャの体がベッドに固定され、服がはだけられていた。ロコナがやったのか?
ミシャの体・・は、あまり、見て良い物ではない。胸から腹にかけて、かなり壊れている。ほんとに、生きているのが不思議・・。
ロコナが、そのミシャの体を何かの瑠璃で調べながら、。
ロコナ「位置、確認したわ! いいわよ! 持ってきて。」
そして俺の腕に生えた棒の反対側を、神官長とロコナで慎重にミシャの体に差し込む。ミシャの体からも血が流れだし、俺の腕から流れる血と混ざってベッドのシーツを赤く染めていく。
エミュルが不安そうに見ている。
ロコナも神官長も、出血を気にしていないのか? ミシャは出血でも体力が奪われるぞ!
そして、棒が深く差し込まれて行くと・・。ひとつづつ、ミシャの体の中の瑠璃と接触するのが分かった。感覚的に俺の中に埋め込んだ奴隷の主の瑠璃と似ている。
神官長「よし。魔力を送ってみろ。」
言われるままに魔力を送る。当然のように疲労感が加わわる。
かなりきつい!! ミシャは常時、この状態なのか?
だめだ、既に倒れそう・・。
ロコナ「接続は成功ね。6つとも、一応、動作を確認できるわ。ただ、かなり弱いわね・・」
神官長「ダメなの、、か?!」
ロコナ「出血によるダメージの方が大きいのじゃないかしら。」
神官長「いやでも、。他に手段が無いし、もう少し、このまま続けるぞ。」
俺「で、でも、俺が、。もう、無理・・。」
俺にも魔力なんて残ってない。さっきの戦いで・・
神官長「何を言っとる! 今、始めたばかりじゃないか!」
目がかすんでくる・・
神官長「あ、こら! 意識を保て! 意識を失うと魔力供給が出来なくなる!」
俺「い、、いや、無理・・。」
もう目が開けていられなくなって、意識が・・
と、突然、足に激痛が走った!
俺「ギエッッ!」
見ると俺の足に別の棒が突き立てられている! 神官長、俺を殺しに来てないか? 足からも血が流れ出す。腕は微妙に避けてくれていたようだが、今度は神経を狙って刺してきた! すさまじく痛い!!
まさか、余分に棒があったのはこのため?
神官長「あー。そういえば忘れてたわ。」
俺の口を無理やり開いて回復薬を放り込む。いや、忘れるなよ!
でも、この世界の回復薬はすぐに効くわけじゃない。
ロコナ「魔力が途絶えがちで安定しないわね。心臓の鼓動も弱くなってきたし、失敗じゃないかしら。」
神官長「むむむむ!
おい! ヒロタン! しっかりしろ! ミシャ様がどうなっても良いのか!
もし、このままミシャ様が死んだら、おまえも殺すぞ!」
神官長がもう一本、棒を取り出して、俺につきつける。
ミシャが死んだら、それを俺の心臓にでも突き立てる・・のか?
だが、何を言われても俺は・・、もう。
俺「だ、だめ・・。辛すぎ・・て。もう意識が飛・・」
エミャル「だめっ!?」
突然、エミャルが顔を近づけてきた! いつ見ても綺麗でかわいい。そして唇を・・
俺「んぐっ」
エミャルのキスのドキドキ感で、意識がはっきりした・・・。
いや、違うぞ! 明らかに違う。魔力が回復している。
そんな効果があるのか? 俺はキスで目覚めるお姫様?
ロコナ「ん? どうなってるの?! 魔力が安定してきたわ。」
そして、ロコナは俺とエミャルを見て、
ロコナ「分かったは。これは、あれね!スケベ心よ。
これだから、男は・・。」
ロコナの軽蔑するような視線が俺に刺さる。
違う! 違うのだ! なんだか、こう、魔力的に、、
神官長「ほー。
女のキスで意識を保つか! まあ良いわ。それでミシャ様が助かるなら。」
ロコナ「不潔だわ。
だいたい、こんな子の何処が良いのかしら。」
神官長「こんな子? エミャルが?
あー、そうか。ロコナは帝国出身だったな。アレの影響か・・。」
ロコナ「何よ。ヒロタンは、この子のキスが、そんなに嬉しい?」
ロコナの言葉でエミャルが引いてしまった。俺から離れて、、急に心を閉ざしていく。
やばい。魔力が減る!
俺「いや、違う! 違うんだ!」
エミャル「違うの? 嬉しく無いの?」
うわっ。俺の言葉で魔力がさらにガクンと減る。完全にゼロだ!やばすぎる!
最後の力を振り絞って大きな声で。
俺「間違えた! エミャルのキスは嬉しいよ! とっても嬉しい! エミャルは最高に可愛い!
だから、もっとキスしてくれ! お願いだ!
長く! 沢山!」
ロコナが汚い物を見る目で俺を見ながら・・
ロコナ「こんな時に・・大声で、なんて事を言うの!」
何を言われても、かまわんぞ!
神官長「いやいや、こんな時だからこその種族の維持本能というものじゃよ。
それが生命力になるわけだ。」
まったく、おまえらは、何、勝手な解釈を!
エミャル「なんだか、少し変!? でも、いいわ。今日はヒロタンのためね。」
俺「あー。俺のために。そして、ミシャのためでもある・・みたいだよ。」
魔力が回復し始めた。
エミャル「なら、いいわ。沢山・・」
そういってキスしてくれた。長く、沢山、。確かにキスはさらに魔力を増やしている。
もちろん、魔力に関係無く、俺も嬉しい。実際、死にそうに辛いと思っていたが、それでも幸せな気がした。これでミシャさえ回復してくれれば・・
結構な時間が流れたかもしれない。
神官長「ミシャ様?! 薄目が開いてますよ?! 意識が戻っているのでは? 」
ミシャ「いいのよ。邪魔しちゃ悪いでしょ。」
エミャル「わっ。邪魔・・なんて。」
俺「 おぉ! 意識が戻ったと言う事は・ 」
神官長「あー。うまく行っているようだ。
ミシャ様。気分はどうです?」
ミシャ「ありがとう。なんだか、どんどん楽になってきてるわ。」
自分の体を見て・
ミシャ「それにしても、、、ずいぶんと、繋がってるのですね。お兄様と・・」
神官長「もう少し回復したら外します。それまで辛抱してください。」
ミシャ「私はかまいませんよ。このままで、。
あ、。でもお邪魔・・、。」
俺「大丈夫だ。」
エミャル「邪魔なんて・・。」
エミャルは離れたが魔力は安定している。なんとなく、理屈が分かってきた。
とにかく、良かった! このまま、もう少し・・
と、。突然、ドアが激しくノックされて・・
ストリュ「俺だ!
トスレイからヒロタン宛の書状が届いた! 今すぐヒロタンと対応を相談したい!」
ええぇぇ!
ストリュの言葉に反応するかのように魔力量も減っていく。
俺「後にしてくれ!重体のミシャを治療中だ!」
ストリュ「 緊急の要件だぞ! 戦時下である事を忘れるな!
開けないならドアを破壊するぞ。」
なんてやつだ!
神官長「あと少しまってくれないか。1刻・・でいい。それで、ヒロタンを解放する!」
いや、ずっと解放しないでいいぞ!
ストリュ「分かった。神官長さんがそう言うなら、もう少し待とう。
終わったらすぐに作戦司令部へ!」
ストリュは引き上げてくれた。
俺「1刻、、で大丈夫なのですか?」
神官長「意識が無い事で悪循環になっていたからな。
それに、どちらにしろ、これを続けたらミシャ様の出血量が問題になってくる。」
やっぱり問題だよな。ところで、俺の出血は?
ミシャ「そうですか。では、あと少しなのですね。
でしたら、それまでは、、。」
ミシャが俺に向かって抱き着くように手を伸ばしてきた。体は固定されているが手は動かせる。
エミャルが笑って少し下がった。ゆずるという事?
俺はどちらにしろ動けない。
手がこの状態では・・
ミシャ「下を見ないでください!」
エミャルが何かうなずいて、シーツのような物を持ってきてミシャの体、そして俺の手にかけてくれた。血で赤く染まる。
改めてミシャの手が、俺を抱えるように。
そして、とてもかわいい大きな黒い目が俺を見つめる。
魔力が増えている感じがある。横を見るとエミャルが笑顔で俺たちを見つめていて・・
ロコナ「その子が離れても安定してるわね。もしかして、そのミシャ様も?」
ロコナがミシャと俺を見て・・
ロコナ「見境ないスケベだわ。まだ、子供でしょ? しかも、その体と顔・・。」
ミシャは見た目よりは上の年齢なんだが・・。そして、体はともかく顔は、これ以上無いぐらいの美少女だぞ。
ミシャ「何のお話しでしょう?」
ロコナ「その男は、あんたに欲情する事で意識を保ってるのよ。」
いや、エミャルにはミシャに対する嫉妬心が無いという、それだけだと思うが・・。
ミシャ「私に? そうなの?」
微妙に嬉しそうだ。
ロコナの魔力に対する解釈は誤ってると思うけど。
では、俺のミシャに対する感情については間違いと言えるのだろうか?
神官長「そうなのか? けしからんな! はやめに外すか。」
ミシャ「え? いや、まだ、・・。」
神官長「ミシャ様。ご気分は如何です?」
ミシャ「今は・・。あ、いえ、だめです! まだ、だめです!」
神官長「何処が?」
ミシャ「え~と・・。心臓! そう心臓が!」
ロコナ「この子、何、わがまま言ってるの?
今は正常でしょ。」
神官長「まあ、良い。心臓以外から外していくぞ!」
結局、全て外されてしまった。
ミシャと俺の傷が手当され、俺はさっさと放り出される。血が止まって無いし、いろいろと痛いぞ。
司令部になっているテントに着くと、。
ストリュ「早かったな。」
昨日からの戦いに参加したメンバーと、良く分からないが戦闘に関係無さそうなミルレもいる。
相変わらず、この前線に大統領はいない。
俺「それで書状というのは?」
ストリュ「これだ。ミルレの解放について、ヒロタンと交渉したい・・そうだ。
なかなか攻めてこないと思ったが、これのせいかもしれない。」




